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おっちょこちょいのかよちゃん

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64 藤木茂の好きな人

 
前書き
《前回》
 三河口のが通う高校の文化祭に杉山と大野を招待した事に成功したかよ子。ついでに、まる子、たまえ、とし子、冬田も連れて行く事になる。また、長山も文化祭に行く事になっていたのだった!! 

 作者の別作品「とある3年4組の卑怯者」で主人公として活躍させた藤木をここでもメインで出してみようと思いました。ただ、あちらの作品とは設定を変え、ここでは基本は笹山さん一途で行く予定です。 

 
 さりはゆりのいる神戸から名古屋へ帰る途中だった。
(ゆり姉もあり姉も『あの事』に関わる事になってるのか・・・)
 さりは母から貰った護符を持つ。これがあるからこそ「敵」には負けたくない。そうさりは思っていた。

 奏子は家に帰るのが7時過ぎとなってしまっていた。その向かいから一人の小学生の女の子が近づいてくるのが見えた。隣の家に住んでいる小学3年生の女子である。
「あら、かず子ちゃん、今日はピアノ?」
「うん、遅くなっちゃって。お姉さんは?」
「私はね、学校の文化祭の準備があって遅くなったの」
「文化祭かあ・・・」
「かず子ちゃんも行く?」
「うん、行きたい!」
「それじゃ、一緒に楽しもう。おやすみ」
 奏子とそのかず子と呼ばれた女の子はそれぞれの家へ帰った。

 翌日、かよ子は学校にてまる子、たまえ、とし子と文化祭の話で持ちきっていた。
「それでかよちゃん、そのお兄ちゃんはどんなお店やるのお〜?」
「焼き鳥と唐揚げだよ」
「うわあ~、美味しそうだねえ~」
「他にもお兄ちゃんのおばさんの話だとわたあめやたこ焼きにパンケーキとかやるお店もあるし、ダーツとか釣りとか色んなゲームもあるし、吹奏楽や合唱とかの演奏もあるよ」
「うわあ、楽しそうだね!」
「ねえ、ねえ、もしかして高校の文化祭の話してるの?」
 クラスメイトの笹山かず子が話に入って来た。
「うん、そうだよ。笹山さんも知ってるの?」
「うん、私の家の隣のお姉さんがその高校に通ってるの」
「そうなんだ、会えるといいね」
「うん」

 なお、その遠くから一人の男子が羨ましそうに見ていた。クラスメイトから事あるごとに「卑怯」呼ばわりされている藤木茂である。
(笹山さん、高校の文化祭行くんだ・・・。いいなあ、僕も一緒に行きたいな・・・)
 藤木は笹山が好きだった。だが、なかなか好きだと言えない。それにこんな卑怯な自分なんかの気持ちなど伝えても振られるのが怖かったのだ。
(ああ、笹山さん・・・)
 その時だった。
「あれ、藤木がさっきから見てるけど・・・」
「え、あわわ、あわ!!」
 藤木は気づかれて慌ててしまった。
「藤木君、さっきからどうして私達を見てるの?」
 笹山も藤木によった。
「藤木〜、アンタもしかして自分もその高校の文化祭に行きたいんじゃないのお〜?」
「そ、そんな事思ってないよ!!」
 藤木は慌てて誤魔化した。
「じゃあ、何で見てたの?」
 かよ子も藤木に近寄った。
「あ、いや、なんでだろうね〜?」
 藤木は何とか言い訳を考えようとする。しかし、思いつかない。
「いいじゃない、とぼけなくたって〜」
「よかったら藤木君も一緒に行かない?」
「え、いいのかい?」
「ええ、楽しくなるわ。近所のお姉さんも頼んでみるわ」
「ありがとう!」
 藤木は嬉しくて舞い上がった。
(ああ〜、笹山さ〜ん!)
(藤木君、さっきは誤魔化してたのに、誘われるとあんなに嬉しくなって、何なんだろう・・・?)
 かよ子は藤木が怪しく思った。

 休み時間、かよ子はまる子、たまえと話していた。
「ねえ、ねえ、藤木君ってどうして私達の話を聞いてて、それで誘われて嬉しくなってたの?」
「ああ~、かよちゃん、実はね、藤木は笹山さんが好きなんだよ~」
「ええ~、そうなんだ!!」
「でも卑怯を直さなきゃ、藤木の恋は一方通行だろうね~」
「う、うん・・・」
(でも、私もおっちょこちょいだし、私の杉山君への恋って一方通行かもしれないし・・・)
 かよ子は自分も藤木の事が言えないと思った。
「でも、笹山さんは優しいし、藤木が好きになるのも分かるんだけどね・・・」
「まあ、そうだよね」

 一方、藤木の方は嬉しすぎて興奮が収まりきれていなかった。
(ああ、笹山さん・・・)
「藤木君」
 友人の永沢君男(ながさわきみお)に不意に呼ばれた。
「君、もしかして笹山と高校の文化祭に行ける事がそんなに嬉しいのかい?」
「い、いや、そ、そんな事ないさ!!」
「じゃあ、何でそんなにウキウキしてるんだい?」
「そ、それは、その・・・」
 藤木は適切な言い訳が思い浮かばなかった。
「ま、まあ、まあ、永沢君も一緒に行かないかい?」
「僕はお断りだね。それより君、本当に笹山と文化祭を楽しめると思ってるのかい?」
「ど、どういう事だい?」
「君、運がないだろ。ヒヤシンスも腐っちゃったくらいだからね。もしかしたらその肝心の文化祭の当日に笹山が来れなくなっちゃうなんて事があるかもしれないね」
「え、ええ~!?」
 藤木は不安に駆られた。

 まき子は奈美子の家にいた。
「そうなの。さりちゃんが神戸のゆりちゃんの所に」
「それで、ゆりも異世界の人間と関わってたんだって。そのゆりの隣の家に住んでる健ちゃんと同じくらいの年の子も異世界の道具を貰って戦ってた事があったんだって」
「そうなの。全国的に闘いが激しくなってるのね」
「うん、大きな闘いになりそうね・・・」
「あ、もうこんな時間、そろそろかよ子が帰ってくる頃だわ。じゃあ、失礼します」
「うん、じゃあね」
 まき子は自分の家に戻り、娘を待った。その10分後、かよ子が帰って来た。
「只今」
「お帰り」
 かよ子は早速宿題を済ませ、おやつの煎餅とどら焼きを食べる。
「かよ子、隣のおばさんの子で名古屋にいるさりちゃんなんだけど」
「さりちゃん、あのお姉ちゃんかあ・・・」
 かよ子はさりと七夕豪雨の時に日本赤軍の一員と戦争を司る世界からの刺客に対して共闘した事を思い出した。
「さりお姉ちゃんがどうしたの?」
「神戸に住んでるさりちゃんのお姉さんのゆりちゃんの家に行ってきたんだって」
「それで、どうしたの?」
「ゆりちゃんも異世界の人間と関わってたんだって。そのゆりちゃんの隣に住んでる女の子も異世界の道具を貰って戦った事があったのよ」
「そ、そうだったんだ・・・。そのゆりお姉ちゃんの隣に住んでる女の子ってどんな子なの?」
「高校生よ。隣の健君と同じ年頃よ」
 異世界の敵や日本赤軍の闘いが激化しつつあるとかよ子は感じ取るのであった。
「かよ子、大丈夫よ。その杖があればきっと元の日常が戻るわ」
「うん、そうだよね!」

 笹山は夜、近所の高校生の女子に電話していた。その女子高生は文化祭の準備で日々帰りが遅くなっており、さらにこの時間に外に出ると親に心配されるために躊躇った。
「あの、お姉さん」
『あら、かず子ちゃん、どうしたの?』
「実は文化祭の事なんだけど、私の学校のクラスの子を誘ったんだけど、いいかな?」
『あら、もちろん、いいわよ』
「うん、ありがとう」
『でさ、その子って女子?』
「ううん、男子」
『へえ、かず子ちゃんが男子を誘うなんてね』
「え?でもまあ、誘ったっていうか、私が友達とその話してたら向こうが行きたそうな顔してたから・・・」
『まあ、まあ、二人で楽しみなよ。その子、きっとかず子ちゃんが・・・』
「え?」
『ううん、なんでもない。じゃあね』
「うん、お休みなさい」
 お互い電話を切った。

 一人の大学生が別居中の弟の事を考えながら静岡県の清水市に行く事を画策していた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「文化祭前夜の心配事」
 文化祭も近づき、三河口達は準備に明け暮れる。そしてかよ子は楽しみになり、まる子やたまえ、杉山や大野、長山らとの会話を弾ませる。そして藤木は笹山が風邪を引いてしまった事で、一緒に行けなくなるのではないかと不安になる・・・。
 
  
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