| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

この手で掴む“いつか”(マリア・カデンツァヴナ・イヴ誕生祭2020)

 
前書き
マリアさん、お誕生日おめでとうございます!
ねえ知ってる?マリアさんの誕生日(2022年8月7日)まで、あと二年なんだよ?

本格的なツェルマリセレを書くの、確か初めてなんだよな……。
上手く書けるよう、頑張りました。

それではお楽しみください! 

 
『マリィ、セレナ、もしもここを出られたら何処に行きたい?』

昔、そんな会話をした事を思い出したのは、テレビで遊園地のCMをやっているのを見たからだろうか?

あの頃の俺達は、施設の外に出る事なんて出来なくて、外の空気を吸う機会なんて訓練中のわずかな時間だけ。
白い孤児院で育った俺達にとって、壁に囲まれて見上げる青だけが唯一の空だった。

フロンティア事変を経て、自由を手に入れた俺たち。
マムとの別れは悲しかったが、代わりにセレナが目を覚まし、今の俺たちは日本に身を置いている。最近じゃ、ちょっとした日本食も作れるようになったんだぜ?

そして月日は巡り、空の色が青だけじゃない事を思い出せた頃に、その日が近付いていた。



「ツェルト、何処に向かってるの?」
「マリィとセレナが行きたがってた場所だ」
「わたしとマリア姉さんが、ですか?」

ツェルトが運転するレンタカーが、国道沿いに進んでいく。
目的地を知らされないまま乗ったマリア、セレナの二人は首を傾げながらも、流れていく窓からの景色を眺めていた。

早朝、ツェルトに起こされた二人は、寝ぼけ眼で着替えて車に乗せられた。
途中、コンビニでおにぎりと飲み物を購入すると、車の中で朝食を済ませて目を覚ます。

こんな時間からどこへ向かうのだろう?
姉妹の疑問が解けたのは、目的地が近付いてきてからだった。

「さあ、もうすぐ着くぞ」
「ツェルト……あれって……ッ!?」
「遊園地……ですよね?」

そう。ツェルトが向かっていたのは、子供なら誰もが憧れる夢の場所……遊園地であった。

「この前、テレビ見てたら昔を思い出してさ……。孤児院を出たら行きたいって、二人とも言ってただろ?」
「まさか……覚えてたのッ!?」

驚くマリアに、ツェルトはニッと歯を見せて笑った。

「黙っててごめんな。サプライズしたくてさ、ちゃんと予定も組んであるんだ」
「ツェルト義兄さん……わたし達の為に……?」
「当たり前だろ? 司令にも、今日はマリィに仕事が入らないよう頼んだし、セレナにも任務が入らないようにしてもらった。有給だと思って、今日は一日中楽しもう」
「ツェルト……」

車を停めた瞬間、後部座席からツェルトの首元にセレナの手が伸びた。

「ツェルト義兄さん、大好きですッ!」
「そんな昔の約束の為にって……あなたのそういう律儀なところ、変わらないわね」
「大切な二人との約束なんだ。なら、俺は必ず果たすよ」
「もう……」

マリアが頬を赤らめ、二人はクスっと笑った。

「さあ、わざわざ朝早くから来たんだ。アトラクション、回れるだけ回っていくぞ!」
「はいッ!」
「ええ、とことん遊びつくしましょうッ!」

ff

それから三人は、一日中遊園地を満喫した。

メリーゴーランドに乗って写真を撮り、コーヒーカップで目を回し、ジェットコースターで絶叫した。
ゴーカートではマリアがぶっちぎりで一番だったし、ミラーハウスではセレナの起点で何とか迷わずに抜け出す事が出来た。
シューティングではツェルトが標的を残らず撃ち落とし、お化け屋敷ではマリアもセレナもツェルトにベッタリだった。

レストランでは、セレナの口角に付いていたクリームをツェルトが指で拭うのを、マリアが羨ましそうな顔で見ていた。
なお、当のマリアもツェルトにあーんしてもらっていたので、お互い様である。

そして夕方……いよいよ三人は、観覧車に乗っていた。
夕陽色の空に照らされ、三人の顔もオレンジに染まる。

「楽しい一日もあっという間ね……もう夕方だなんて」
「こんなに遊んだのは、いつ以来でしょうか?」
「随分久しぶりな気がするわね……。ありがとう、ツェルト」

夕陽を眺めて笑い合う姉妹の横顔を見つめ、ツェルトは微笑む。

「その笑顔だけで、手を回した甲斐があるってもんさ。次にどこか行くなら、どこがいい?」
「わたし、次は海に行きたいです! 南の島の海で、お魚さんをたくさん見たいですッ!」
「南の島、ね……。難しいんじゃないかしら?」
「いや、セレナが行きたいっていうなら、海を跨ぐくらい……」
「それから、山にも上りたいですし、動物園にもいきたいですッ! ペンギンさんも見たいですし、あと温泉にも入ってみたいですし、あと、イチゴ狩りもやってみたいなぁって。それから──」
「いや多いなッ!?」
「セレナ? それはいくら何でも多すぎないかしらッ!?」

どんどん出てくるセレナの行きたい場所に、思わず止めに入るマリア。
すると、セレナは二人を見つめ、静かに笑った。

「本当は、三人一緒なら何処だっていいんです……。三人で一緒に遊べるなら、何だって絶対に楽しいですからッ!」
「セレナ……」
「……三人一緒なら、か……」

その言葉に、ツェルトは思わずセレナの頭を撫でる。

「俺もだよ、セレナ。俺も、三人一緒なら何処へだって行ける。いや、連れて行ってみせる。いつだって、俺達は一つだよ」
「ええ……だって、私たちは家族だもの」

マリアの腕が、二人を抱き寄せる。

「二人の手は、もう二度と離さないわ」
「俺もだよ、マリィ」
「わたしもです。ずっと、一緒ですからね?」

ツェルトの腕がセレナの背中に回される。
それ後三人は、観覧車が下に降りるまでの間、抱き合っていた。

ff

「セレナを置いて、一体何処へ?」

遊園地から帰った後、ツェルトはセレナを先に自宅へ降ろし、マリアと二人だけでドライブに出ていた。

「そろそろだ……着いたぞ」

マリアが車を降りると、そこには……海面を照らす月があった。
この瞬間の為に、ツェルトが絶好のロケーションで月を見上げられる場所として探し当てた場所だ。

「綺麗……」

思わずマリアは感嘆の溜息を漏らす。

彼女の肩に腕を回し、ツェルトは呟いた。

「知ってるか? 日本では、女性を口説くときにこう言うらしいぞ。『月が綺麗だな』ってさ」
「ッ!?」
「女性の美しさを、月に準えた比喩表現らしい。でも、俺からしちゃあ……月に照らされたマリィの方が、何倍も綺麗だよ」
「それって……!?」

慌ててツェルトの方を見るマリア。
彼の瞳は、真っ直ぐにマリアの顔を見つめていた。

「そんな君の美しさを際立たせるプレゼントだ。誕生日おめでとう、マリィ」

マリアに手渡されたのは、とあるアクセサリー店の紙袋。
中身はラピスラズリとペリドットのブレスレット。どちらもマリアの誕生石だ。邪気を払う聖なる瑠璃石と、夫婦の幸福を意味する橄欖石。
アクセントとして、間にクォーツを挟むことで運気を更に向上させている。

「ッ! もしかして、今日一日休みにしたのって……」
「そういう事。マリィの誕生日を祝うためのサプライズだ」
「ようやく引っかかってたものが取れたわ……。そういう事だったのね」
「不満だったか?」

途端にわざとらしく、ツェルトの眉が下がる。

「いいえ……最高の一日だったわよ。本当にありがとう」

そう言ってマリアは、ツェルトの唇にそっと口付けた。

「ま、マリィッ!?」
「お返しよ。ここで普通に答えたら、あなたの思うつぼでしょう?」
「はは……マリィらしいな」

クスリと笑うマリアに、ツェルトは照れ臭そうに後頭部を掻いた。

「マリィ……それ、嵌めてみてくれるか?」
「いいわよ。……これでいいかしら?」
「ああ……思った通り、よく似合っている」
「そう? なら、今度からオシャレする時に使ってみるわね」
「お守りとしての効能もあるから、毎日嵌めてていいんだぞ?」
「そうなの? 花言葉には自信あるけど、宝石言葉にはまだまだ疎くて……」
「そ、そうか……。なら、帰りの車の中で教えよう。皆、待ってるからな」

幸せそうに微笑みを交わし、二人は帰路に就いた。

(あの宝石言葉は、今は伏せておこう。いつか、その時が来たら──)

マリアとセレナ、そして自分。
いつか三人で掴む未来に思いを馳せながら、ツェルトはハンドルを握るのだった。

この後、帰って来たマリアに調と切歌、そしてセレナからのサプライズがあったのだが……その話はまた、別の機会に。 
 

 
後書き
ちなみに、ラピスラズリの宝石言葉は「健康」「愛和」、そして「永遠の誓い」です。
ペリドットの意味と重ねると……おっと、言ってしまうのは野暮ですね。

それと、ツェルマリが帰宅してからのF.I.S.組がどうしたのかは、シンフォギアXD公式のアンリミブログをご覧ください!(宣伝)

改めましてマリアさん、ハッピーバースデー!



それから、G編完結記念に熊さんから貰っていたツェルマリです。届いた時、余りの尊さに吐血しました←

七夕回には、クラさんから頂いたツェルマリセレ絵も載せてますので、そちらもよろしくお願いします! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧