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ドリトル先生の野球

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第六幕その六

「戦前は。それで潰れなかったし」
「大丈夫だと思っていたんだ」
「けれどね」
「昭和十年代の人は違って」
「権藤さんも稲尾さんも杉浦さんも現役生活は短くなったんだ」
「大正時代の人程連投には耐えられなかったんだ」
「そして昭和四十年代になると」
 この頃の野球ではといいますと。
「徐々にストッパーみたいな人が出てね」
「完投がなくなって」
「連投もね」
 こちらもというのです。
「なくなってね」
「今みたいになったんだね」
「選手が戦後生まれになってね」
「ああ、医学がさらに進歩して」
「それで乳幼児の死亡率は減って」
「身体の強さも」
「それもね」
 こちらもというのです。
「変わってね」
「これはどの国もだね」
「そう、とんでもなく強い人だけが生きるんじゃなくて」
「普通の人も生きられる様になって」
 身体の強さがとです、王子も言いました。
「人口は増えたけれど」
「身体の強さはね」
 どうしてもというのです。
「弱くなったよ」
「それは事実だね、人間自体が」
「身体が弱くなっているんだ」
「というか昔の医学や文明だと」
「今よりずっと身体が強くないとだね」
「生きられなかったんだ」
 そうした時代だったというのです。
「本当にね」
「子供はすぐに亡くなって」
「そしていつも身体を動かさないとね」
「何も出来なくて」
「しかも病気になっても」
 その時もというのです。
「多くの病気で治療方法が見付かっていなくてね」
「すぐに死んだね」
「ペストもそうだったね」
 先生は欧州で最も恐れられていた病気の名前も出しました。
「あの病気もそうだし色々な伝染病もね」
「治療方法も対策もだね」
「見付かっていなくてね」
 それでというのです。
「感染するとね」
「すぐに死んだね」
「盲腸でも命を落としたし」
「今じゃ何でもないけれどね」
「癌になったら」
「もう死ぬしかなかったね」
「そんな風だったからね」
 だからだというのです。
「今よりもね」
「ずっと人が死にやすい状況だったんだ」
「そんな時代だったから」
「人の身体も頑丈で」
「それでね」
「野球選手もだね」
「今から考えられない位に身体が頑丈で」
 先生は昭和三十年代までの野球選手のことを思いつつお話します。
「先発で完投でね」
「連投もだね」
「出来たんだ」
「そうなんだね」
「稲尾さんは鉄腕と言われたけれど」 
 それでもというのです。
「今の人が駄目なんじゃなくてね」
「当時は当時だね」
「そうだよ、文明自体が違うから」
 当時と今はです。
「今が駄目とか昔は凄かったとか言ってもね」
「意味ないんだね」
「そうだよ、今は今の野球があるからね」
「エースが連投で完投しなくてもいいんだね」
「戦前や昭和三十年代みたいにね」
「そうした野球じゃないんだね」
「そうだよ、ただ稲尾さんや杉浦さんは」
 先生はあらためてこの人達についてお話しました。 
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