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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga9-A語り継がれざる狂気~King of plant~

†††Sideイリス†††

3日間の長旅も無事に終わって、わたしたち特騎隊は第25管理外世界ヴォルキスに降り立った。護衛対象となる魔力結晶は、街の中や近くじゃなくて遠く離れた遺跡に安置してあるとのこと。戦闘になるから距離があってくれるのは本当に助かる。ま、結界は念のために張るけどさ。

「文明レベルの低いヴォルキスは宗教最優先の世界だ。件の遺跡も宗教に関するものらしく、信者でも出入りは少ない。が、生体による防衛機構があるそうだ。そっちの方が問題だな」

「かなり大きなカモシカ(アンティロープ)だね。神の使いって言われるほどで、人とコミュニケーション取れるくらいの知能は持ってるってさ」

「話を聞いてくれたらいいんだけど」

「さすがに神様って崇められてる奴と争うのはアウトよね」

「そのアンティロープ、名前なんだっけ?」

「オバラトル」

局は新しい世界を発見したらその世界に一度は訪れていろいろと調査する。その際、局は魔力結晶の守り神みたいなアンティロープを発見。んで、信者の会話から名前が判明。結局オバラトル氏とは接触しなかったけど、この世界の住人と意思疎通しているのは確認した、って調査報告にあった。

「あ、そうそう。呼ぶときはちゃんと氏って敬称を付けるようにね」

わたし達はこれから魔力結晶の護衛を買って出るという旨をオバラトル氏に伝え、了承を得ないといけない。勝手に近付いて敵判定を食らって戦闘なんて、そんな間抜けは犯せないからね。今回の任務できっちり汚名返上しないと。

『こちらシャーリーン。ナイト1。本部より、第22管理外世界ミルマーナで魔力保有生物が襲撃されたとの報告が入りました』

遺跡を目指して深い森の中を走っていたところで入った報告は、“T.C.”がすぐにでもこの世界に訪れるかもしれない、そう考えさせられるような内容だった。わたしは背後に続くルシル達に「各騎、最大警戒!」って指示を出しておく。“T.C.”は転移系スキルか魔法で移動してるから、オバラトル氏と交渉する暇もなく出現する可能性が高い。

「シャーリーン。遺跡周囲を最大警戒。何か妙な事があったら即報告で!」

『了解です! お気を付けて!』

“シャーリーン”との通信を切り、森を抜けて、眼前に広がる何十本っていう10m級の石柱群と、直径200mはあろうっていう石畳のステージを視界に入れる。で、その中心にソレはあった。4本の石柱に護られてるかのように鎮座している、虹色に輝く8面体の巨大宝石。伏せていながらも石柱より大きなアンティロープ――オバラトル氏が、4本の石柱に寄り添ってた。

「でっか・・・」

「こわ・・・」

アイリとクララ先輩がそんなオバラトル氏を見てポツリと漏らした。いや確かにその巨体さに気後れしちゃうけど、きっと優しい人?だよ。だって神様だって敬われているんだし。

「ルシル」

「ああ」

まずはわたしとルシルの2人で森から出て、遅れてアイリ、ルミナ、クラリス、セレス、セラティナとクララ先輩と続く。ステージを囲うように並んで立つ何十本の石柱を境界としてるみたいで、わたし達が森から出てきてもオバラトル氏は伏せたまま。

「結界のようなものは感じられない。が、妙な気配はある」

「ルシル。ユニゾンしておく?」

「いや。戦闘行為と受け取られたら厄介だ」

緊張しながらも石柱の間を通過する。オバラトル氏は伏せていた顔を上げてこちらを真っすぐ見てきた。武器を持っていないことを示すために両腕を挙げて、そのまま歩み寄っていく。そしてステージにあと1歩踏み出せば乗れるっていう距離に近付いたころ。

『ようこそ、異国の者たち』

頭の中に聞こえてきたのは、こちらを見据えたままのオバラトル氏からの思念通話。わたし達はその場で立ち止まって、同じように思念通話で『お初にお目にかかります』と挨拶から入る。

『へえ。私と同じ、頭の中で会話が出来るのかい。私を神と敬う者たちにも出来ないことだよ。気に入ったよ。もっと私に近寄ってくれないかな、よく顔を見て話がしたいんだ』

オバラトル氏がその大きな頭をもたげた。彼から150mほど離れてるけど、うん、遠近感がおかしくなるほどデカい。でもお招きしてもらったのは嬉しい。ゆっくりと腕を下ろして、わたし達は彼の元へと歩いていく。

『魔力結晶を囲う4本の石柱、アレ・・・結界、と言いうより防御魔法だよね』

『というか、魔術だな。ステージに上がってからハッキリと判るようになった』

『マジで? ・・・そんな古くから在る結界ってわけね』

ユーノに頼んで、無限書庫の蔵書の中から第25管理外世界ヴォルキスのことを調べてもらってある。ヴォルキスはおよそ1000年前に文明崩壊したって話だ。それと同時に魔法文化も失ったことも。それ以前の情報は残ってないって話だったけど、魔術が存在してた時代から続く世界なのね。
とりあえずオバラトル氏の側まで近寄り、『イリス・ド・シャルロッテ・フライハイトと申します』と自己紹介して、ルシル達も続いて自己紹介。

『それで、君らはここへは何をしに来たんだい? 異国の者と言ったが纏う空気――妙な力を感じる。君ら、異国ではなく異界から来たのかい? あぁ、隠さなくていいよ。じいちゃんから聞いたことがあるんだ。昔の人間は、星と星の間を行き来できる技術を持ってたって。この星は一度文明が滅んでいるからね。もうその技術も、そんなことが出来たっていう記録も残っちゃいない』

『そこまでご存じであれば、こちらも正直にお話しします』

オバラトル氏に伝えるのは、わたし達が他の世界から来たこと、管理局という組織の人間であること。そして悪い奴らが魔力結晶、オバラトル氏が言うに“アポローの輝石”を狙っていること、わたし達がそれを阻止しに来たことなど。

『なるほど。・・・そういうことなら護衛を任せようか。私は人に神と崇められているけど、戦なんてやったことがないから強くはないと思う。ただの話せる大きいだけの動物だからね。だから君たちがこの場に留まることを許可するよ。信者たちにも伝えて――ひょっとして、アレが悪者かい?』

オバラトル氏の視線の先を追えば、ステージを囲う石柱群のところに人が立ってるのが判った。ただ、“T.C.”メンバーの特徴である「トラウマの人物・・・に見えない」から、“T.C.”だって断言できない。でも「侵入者を視認。各騎、交戦用意!」って指示を出す。オバラトル氏は、あの人物を信者と即判断しなかったことから、初めて会う人物と考えられるからね。

(シャーリーンから連絡が来なかったなぁ)

『おお! どこからともなく武器を出した! すごいね、異界の者たち!』

『わたし達が戦闘を担当しますので、あなたはここで待っていてください。セラティナ、この付近一帯に念のために結界を。ルミナとクララ先輩は、アポローの輝石を防衛!』

『了解!』

――多層封獄結界(パーガトリー・アークケイジ)――

セラティナは即座に五重の強装結界を展開。魔術じゃなくて普通の魔法による結界だけど、層を重ねるごとに魔術でも1発で破壊できない強度を保つことはすでに実験で確認済だ。それでもダメなら、クラリスに結界を任せよう。

『・・・了解』

『近付く奴は全員、私のスキルでどこかに飛ばす!』

戦力外として少し落ち込むルミナ、それにクララ先輩とセラティナを残し、わたし達はさらに侵入者に近付いていく。その最中、侵入者が右手に持つ杖の石突でステージをコツンと打った。

――モレスタル――

それを合図としたかのようにステージ外周の至る所から巨木が次々と生えてきた。それに驚く間もなく「魔力結晶をお借りしたく参上しました!」って侵入者が叫ぶと、ステージからミシミシ、バキバキって音が鳴り始めた。さらに盛り上がってきたと思えば、極太の「根っこ!?」が何百本とステージを割って持ち上がった。

「管理局員の皆さん! 僕に戦闘の意思はありません! ただ、そこに在る魔力結晶を借りに来たんです! 安心してください! T.C.は、借りたものはあとでちゃんと返す組織ですから!」

「まぁ返すんだろうけど、魔力を奪ってからでしょ? それじゃあ意味がないんだよ?」

「T.C.メンバーであると自供したのを確認! 特騎隊、交戦開始!」

魔術師化できるわたし達は魔力に神秘を乗せて、「待ってください! 本当に僕は戦うつもりできたわけじゃ・・・!」って慌てて“T.C.”に接近。徐々にその姿をハッキリと視認できるようになった。

(トラウマの姿じゃないけど、素顔が判らないように目出し帽を被ってるんだよね・・・)

今はもう壊滅した最後の大隊と同じだ。ただ、仮面は無いし学ランでもない。銀色のモーニングコートとスラックス、アスコットタイ、革靴って格好だ。ダークブルーの瞳や、若干帽子の隙間から飛び出てる緑色の髪が、あの男の特徴ね。

「アイリ!」

「ヤヴォール!」

「「ユニゾン・イン!」

「もう! 局員って、どうしてこう攻撃的なんですか!?」

――アタケ・デ・ライス――

頭を抱えるアイツがまた杖でステージを打つと、持ち上がってた何十本っていう根っこが侵入者とわたし達を隔てる壁となった。先日のフッケバイン一家のカレンとかっていう女が使ってた茨の壁みたい。

「T.C.がこれまでにしてきたことを思えば、先手必勝を選ぶのは必至だろう!」

――女神の陽光(コード・ソール)――

アイリとのユニゾンを済ませ、両腕に蒼炎を纏わせたルシルが根の壁に両掌底を打つと同時に火炎砲を発射。その2発の火炎砲で根に大穴が開く。穴の縁から全体へと燃焼して灰になって崩れてく中、「まぁ、そう言われたら・・・」って腕を組んで唸ってる侵入者の姿を再視認。

「攻撃をやめてほしいなら答えなさい! T.C.は何のために魔力を集めてるのか! メンバー構成に、何で魔術が使えるのか、そしてボスの名前、あとは・・・そのほか全部!」

“キルシュブリューテ”の剣先をアイツに向けて問い詰める。クラリスとセレスとミヤビも、わたしの意思を酌んで構えを解かないままだけど待機してくれた。問題のアイツは「ははは、いやだなぁ。言うわけないじゃん!」って笑った。

――フィエスタ・デ・バイレ――

さらに杖を打ったら、侵入者の背後に生えていた木々がバキバキと音を立てて割れ初めて、その破片が2m近いマネキン人形、100体くらいになった。昔、アリサの家で遊んだ格ゲーに登場した木人を思い出す。またあの格ゲーでチーム海鳴トーナメントをしたいな~。

「大人しく渡してくれたら良かったのに・・・」

――オハ・ベネノーサ――

そう言って侵入者は、後ろにズラリと並ぶ木人に向かって小さな何かをバラ撒いた。そしてまた杖を打つと、バラ撒かれた物のところから毒々しい色をしたDNA状の木蔓がニョキニョキと勢いよく育ってく。最後に木蔓のてっぺんに、アロエの葉のようなものが8枚、ピンっと真っすぐ生えた。

「やはり・・・そうなのか・・・!」

――邪神の狂炎(コード・ロキ)――

目を大きく見開いてたルシルが呻いて、両腕に再び蒼炎を纏わせた。両腕の炎は全身を覆って、2mの籠手と脚甲、そして胸甲と4対の細い炎翼へと変化させた。

「何故だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「ちょっ、ルシル!?」

そう叫んで侵入者に突撃するルシルにわたし達は驚いたけど、すぐに「交戦!」って指示を出して、わたしは“キルシュブリューテ”の刀身に炎を纏わせ、ミヤビは炎熱の鬼形態・炎鬼モード。セレスは“シュリュッセル”に冷気を、クラリスは“シュトルムシュタール”の槍と棍の両方に魔力を付加。

「おおおおおお!!」

炎の両腕で振るって侵入者を攻撃しようとしたルシルだったけど、木人が地面から引き千切った木蔓を槍のように構えて、ルシルに殺到し始めた。その間に侵入者は後退を始めて、「あなた達が悪いんだよ?」って嘆息した。

「ルシル、突っ込みすぎ!」

――氷奏閃(イエロ・コラソン)――

「ルシル副隊長、一度下がってください!」

――紅蓮拳殴――

「らしくない」

――フェアシュテルケン・ガンツ――

「ていうか! 何をそんなに感情爆発させてんの!?」

――炎牙月閃刃――

セレスとミヤビとクラリスに続いてわたしも木人軍団を攻撃するんだけど、「ただの人形が割と強い!」ことにビックリだ。木で出来た体だからか人間じゃ出来ない動きをしてくるし、表情や目線なんてものがないから攻撃の先読みが難しいのなんの。しかも魔術によって作り出されてるから神秘も強いのか、攻撃を当てても一撃で仕留めきれない。だから時間がかかってしょうがない。

『ルシルから注意! 人形が持ってる槍は毒を持ってるから、穂先の葉には触れないようにって!』

アイリからの思念通話にわたし達は『了解!』って応える。正直、見ただけで8枚の葉を穂とする槍のヤバさは判ってた。なんか葉から紫色の液体が滴り落ちてるし。アレにも触れないようにしないと。

「さてと、今のうちに結晶を借りに行こう」

わたし達が木人軍団に苦戦していると、いつの間にか侵入者から“輝石”まで一直線と道が生まれてた。知らずに誘導されちゃってたみたい。焦りが生まれる中でルシルから『各騎、一時人形たちより離脱!』って思念通話。広域攻撃が得意なルシルのことだ、纏めて焼却するのかもしれない。そう考えたわたしとセレスとクラリスとミヤビは、最後に1発だけ近くの木人に攻撃を入れてから、その場からダッシュで離脱。

「おい、T.C.。貴様が何故その魔術を扱えるのか教えてもらうぞ!」

――輝き燃えろ汝の威容 (コード・ケルビエル)――

炎の円陣がいくつもステージや地面に描かれて、木人たちをその範囲内に捉えた。直後、円陣内が炎に包まれた。円陣の外に漏れた木人は残り・・・9体。そいつらへの追撃もルシルがやってくれるみたい。

――無慈悲たれ汝の聖火(コード・プシエル)――

ルシルの両籠手から炎龍が10頭と出現すると、9頭は木人9体へ向かって、残り1頭は侵入者へ突撃。わたし達も続いて侵入者へと駆け出す。木人たちが炎龍にパクっと食べられている様を横目に、「おっかしいな~」ってぼやきながら回避行動を取る侵入者と、炎の籠手を振るって炎弾を量産して攻撃するルシルの姿を見る。

「貴様は何者だ!!」

「僕の正体なんて、どうでもいいじゃないですか」

――モレスタル――

杖を地面に打ち付けた侵入者は、自分とわたし達を隔てるように新たな木々を生やした。炎弾が次々と着弾して木々に穴を空けていく。ルシルは怒りに任せたかのように木々に攻撃を加えて、徐々に侵入者に近付いてく。

「イリス。下手に接近したら巻き込まれそう」

「だからと言って援護をしようとすると、ルシルに誤射しそう」

「どうしましょうか、シャル隊長」

ルシルらしくない連携を考えない独り善がりな力押し戦術に、わたし達は棒立ちになるしかなかった。とりあえず、『アイリ。ルシル、どうしたの?』を聞く。ユニオン中でもアイリ個人への思念通話は通せるから、ルシルの集中を邪魔しないようには出来る。

『え? あ、えっとぉ・・・。今、T.C.メンバーの使ってる魔術は、オリジナルの生きてた時代、敵性勢力に属してた悪い王様のものらしいんだよね。オリジナルの記憶も持ってるルシルだからさ、かつての敵の魔術師が使ってた魔術を見て、感情がそっちに引っ張られちゃってるみたい』

ルシルのオリジナルが生きてた時代というと、シャルロッテ様や、クラリスの前世の騎士グレーテル、アンジェの前世の騎士チェルシーも生きてた時代だ。そしてシャルロッテ様たちと同じ勢力の魔術師だった。でもなんだろう。かつての味方が使う魔術だっていうのに、胸の内に渦巻くのは怒りや憎しみと言った負の感情だ。

『アイリ。敵の、そいつの名前は?』

『・・・葬柩王フォード・テルスター・スリュムヘイム』

その名前を聞いた時、ゾワッと背筋が震えた。これはあれだ、わたしじゃなくてシャルロッテ様の感情だ。

(シャルロッテ様、ルシルとのデートの時に代わったきり応えてくれなくなったんだよね・・・)

旅館での1泊した時に、一度だけシャルロッテ様と話がしたいってルシルにお願いされて、時間にして1時間ちょっとくらいシャルロッテ様にこの体を貸したんだけど。わたしの体の支配権が戻った後に、ルシルとナニしたのか、ナニ話したのか聞いてみたら・・・

――あなたの承諾なしに勝手にナニとかするわけないでしょうが! って、そうじゃなくて・・・えっとぉ、ほら、ルシルってオリジナルの記憶も持ってるでしょ? つまり私の知ってる奴でもあるの。だからその・・・あれだ、世間話を少々・・・ね――

はぐらされたのは判るけど、シャルロッテ様がルシルのオリジナルと知己だってことは事実だから、わたしもそれ以上の追求はやめた。その翌日からシャルロッテ様がわたしとのコミュニケーションを一方的に一切取らない不干渉期に入ったことで、わたしの体を貸していた間の出来事は知らないまま。ルシルに聞いても教えてくれないしさ。

『(不干渉期でも感情がわたしにまで伝わるくらいに、シャルロッテ様はフォードとかって奴が嫌いなんだな~)あのさ、アイリ。ルシルを冷静に出来ない?』

『無理。鎮めるにはT.C.を倒すしかない』

『だよね~』

ルシルの様子からして無茶なお願いだっていうのは解かってた。今も侵入者を焼き払おうと頬の籠手を振り回して、炎弾や火炎砲をこれでもかってくらいに放ち続けてる。対する侵入者も、新しい木々を生やしては盾にして防御。

「さすがにしつこいな。知ってるかもしれないけど、王から僕のような実行部隊にはある決まり事があるんだ。現場で逃げられない、捕まってしまうような場合は・・・攻性術式で反撃してもいいって。もちろん、誤って殺さないように手加減はするけどね」

――アタケ・デ・ライス――

「先ほどの樹木人形と毒槍の時点で殺す気満々だっただろうが!」

――害神の投焔(コード・ボルヴェルク)――

木々の根っこが地面から飛び出すと、ルシルを打とうと鞭のように襲い掛かった。対するルシルは四肢に装着してる炎の籠手と脚甲を一纏めにして、4mくらいある長大な炎の突撃槍に変化させた。

「あつ! ちょっ、熱波で近付けないんだけど!」

炎というか、太陽の光みたいに真っ白な槍を振り回して木々や根っこを焼き払ってくルシルだけど、その所為でまた援護が出来なくなってる。だから「セレスとクラリスは輝石の護衛に回って。わたしとミヤビはこのまま待機」って指示を出す。

「侵入者がわたし達を引き付けて、本命が奪いに来るってことも考えられるし。実際、ルミナ達がその手で奪われちゃってるからね」

経験者のセレスとクラリスは苦い表情を浮かべて「了解」この場から離脱した。残るわたしとミヤビは、ルシルのフォローにいつでも移れるように注意するんだけど、熱波から少しでも逃れたくて2人から距離を取った。

「さっさと答えろ! 貴様は何者で、何故その魔術を扱える!?」

「・・・はぁ。うっせえ、うっせえ、うっせえなぁ! 下手に出てりゃぎゃあぎゃあと!」

――エル・ディアブロ・デ・ラ・プランタ――

「俺様に言われた通り、大人しく魔力結晶を差し出しゃいいんだよぉぉぉーーーー!!」

「その口調! フォードォォォォォォーーーーー!!」

言葉遣いががらりと変わった侵入者の背後に、草木などで組まれた巨人の上半身が出現した。内臓の見えない筋肉の人体模型のような感じで、上半身だけなのに30mくらいある。侵入者は巨人が差し出した左手の平に乗って、「鬱陶しいんだよぉ!」って杖を横に払った。それを合図としたように草木の巨人は空いてる右手を握り拳にして、ルシルへと振るった。

「炎熱系に植物など! 通用するものか!!」

感情を剥き出しにするルシルが炎槍の柄を両手で握り締め、迫る拳に向かって突きを繰り出したそうとしたんだけど・・・

――レプロチェ――

「っ!?」「「あ・・・!」」

ルシルの足元から伸びてきた蔓が体を拘束した。そして、巨人の拳はルシルに直撃して、ルシルは何百mと殴り飛ばされた。 
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