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ギャルの林檎

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第五章

「ちょっと休まない?」
「休憩かよ」
「そう、今はね」
「休憩って言ってもすぐに舞台畳まないといけないだろ」
「休む位の時間あるでしょ」
「だからか」
「そう、ちょっと休もう」
 こう彼に言うのだった。
「今はね、それでね」
「それで?」
「これ食べよう」
 笑顔で言ってだった、朋美が魔女の黒く長い袖のある服から出したものは。
 二つの林檎だった、朋美はその林檎を差し出して或人に言った。
「一個ずつね」
「この林檎ってあれだよな」
「そう、あれよ」 
 朋美は或人に笑顔のまま返した。
「あの時に買った林檎よ」
「そうだよな」
「文化祭終わったら食べるって言ってたでしょ」
「文化祭明日もあるだろ」
「気持ちが変わったのよ」
「舞台が終わったからか」
「そう、食べることにしたの」
 つまり今にというのだ。
「お腹も空いたし。というか何よりもね」
「今度は何だよ」
「岩木っちと食べたいからね」
 だからだというのだ。
「それでなのよ」
「持って来たのかよ」
「そう、それでね」
 そのうえでというのだ。
「今からね」
「二人でか」
「食べましょう」
 朋美は或人に自分のペースで話していった。
「休憩の間にね」
「今からか」
「嫌?」
「嫌じゃないけれどな」
 それでもとだ、或人は朋美に返した。
「何かありそうだな」
「何かあるって言ったら?」
 朋美はその或人に笑ってこうも言った。
「どうするの?」
「やっぱりあるんだな」
「あんた今彼女いないでしょ」
 朋美はこうも言った。
「そうでしょ」
「それでか」
「あたしもいないしね」
「それで俺のことがかよ」
「前からそんなに悪くないと思ってて」
 それでというのだ。
「今回あんた結構真面目にしてたでしょ」
「人間仕事はちゃんとしないとな」
「中川っちなんてね」 
 中川大輔、クラスメイトである太っていて細い目をしていて強い者には媚びり弱い者には横柄で図々しい彼はというのだ。こんな人間だから外見はともかく人間としてかなり嫌われている人物である。
「もう他人に押し付けてばかりで」
「あいつはそういう奴だろ」
 或人も彼は嫌いなのでこう言う。
「相手にするなよ」
「けれど岩木っち頑張ってるの見たし」
「それでかよ」
「いいと思ったからね」
 それでというのだ。 
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