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曇天に哭く修羅

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第四部
  それぞれの想い 2

 
前書き
_〆(。。) 

 
旧東京・現【聖域】で

永遠(とわ)レイア》

《白鋼水明/しろがねすいめい》

《立華紫闇/たちばなしあん》

の3名が修業を開始した直後。


「ん?」

「どうしたの?」


同じく聖域の何処か。

レイアの弟《エンド・プロヴィデンス》

龍帝の副会長《春日桜花(かすがおうか)

彼等は修業しに来たわけではなく、修業をする者に対しての補助とコーチ。


「どうやらお兄ちゃんが珍しい水明(やつ)と紫闇を連れて来てるみたいですね」

「レイア君が自ら動くとは……。一気に【プラン】を進めるつもりなのかな?」


立華紫闇の覚醒と完全制御のプランに関わる桜花のようなメンバーには有り難い。

二人はレイア達が居る方に視線を向けているが、どうにも気配が薄い気がする。

恐らく結界を張って周囲に影響が及ばないようにしているのだろう。


「立華君が内なる上位存在に負けて人格消滅したら殺さなきゃならないからなぁ」


桜花がそう言い終わった時、何か重い物が倒れて大きな地響きが起こる。


「はあ……。はあ……」


倒れたのは一頭のドラゴン。


【火焔龍・アマノホデリ】


「お、倒したか」

「これで何体目だっけ?」


エンド、桜花と共に来た剣士。

彼は剣を地面に突き刺して杖の代わりにし、片手と片膝を地に着いていた。


「解らない……。数えて、ハアッ……ないからな……。今は肉体の、最終……調整、を、している最中……なん、だから、な……っ」


長い黒髪を後ろで束ね、ポニーテールにした眼鏡の男子は龍帝学園の一年生。

橘花 翔(たちばなしょう)》や紫闇、《クリス・ネバーエンド》が戦いを望む相手。


《江神春斗/こうがみはると》


「これが片付いたら精神集中してから魂を研ぎ澄ますだけか。公式戦が楽しみだ」


入学する前から修業に付き合っていたエンドは彼の初陣を待っていた。


「転がってる精霊はどうするのさ。放置しても大丈夫なのは知ってるけど」


桜花が見る先には【精霊】や【聖獣】とも呼ばれている聖域の住人。

3人の周りは春斗が倒した巨大なドラゴン型の精霊が何体も倒れ伏している。


【烈水龍・テュルフィング】

【巨樹龍・イルミンスール】

【迅雷龍・エクソスフィア】

【夢邪龍・カシマール】


全て死体だ。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「この聖域を治める精霊の最上位連中からは好きにして構わないと言われてる。このドラゴン達も死ぬことは承知で来てるしな」


エンドの言った通り。

精霊は生命体であり、個体に差は有れど、エネルギーの塊かつ、世界の一部。

死のうが世界と同化して循環し、再び精霊としてこの世に生まれ(いず)るのだ。

精霊の転生体は基本的に前世の記憶は無いが、個体によっては残っているし、前世の力を引き継いでいる場合も有るので精霊にとっては決して死ぬことが悪いことであるわけではない。

なので精霊は人間に比べて自分の生命に対しての執着が希薄な傾向に有る。


「そもそも精霊って妖精と違って人間から物理的に干渉できる存在じゃないから違う【位相】に居れば会えないんだよね」


桜花が()べた通り、本来の精霊は【精霊界】で過ごし、人間界に関わる時も同じ世界のズレた位相で全く干渉されないようにする。

人間と同じ世界、同じ位相で居ても、あらゆるものをすり抜けてしまうほど存在を薄くして妖精のように実体化しない。

そんな精霊が人間界の一部を切り取って擬似的な精霊界を作った挙げ句、一部の人間に対してだけ協力する理由は上位存在だ。

精霊は地球が生まれるよりもずっと昔、約80億年前から上位存在と争っている。

特に【旧支配者/オールドワン】との関係は険悪で、【古代旧神/エルダーワン】とは限定条件での不干渉を貫く。

【魔獣領域】と【魔獣】に関しては一定以上の力を持つ精霊の餌場と餌として利用。


「俺には想像も出来んが、旧支配者が精霊と戦っていなければ地球は無くなりはしなかったものの、生態系が変わっていたらしいな」


恐らく魔獣だらけだったはず。

春斗はエンドに回復してもらいながら目を瞑って物想いに(ふけ)っている。

旧支配者が地球に差し向けた軍勢は全体から見て、ほんの一部に過ぎない数。

思いのほか地球人が頑張ったので、旧支配者でも最強クラスに位置する《ナイアー=ラトテップ》のような最精鋭が送り込まれてきただけ。

最初から必要な分だけ軍勢を使えば一時間もかからず勝利できていた。


「まあ今は【冬季龍帝祭】に集中しなくちゃいけないからな。桜花さん、俺はお兄ちゃんの方に行ってきます。何か有るかもしれないんで」


エンドは二頭のドラゴンを呼ぶ。

もちろん精霊だ。

仲間にした精霊である。

名を《インドラ》と《ヴリトラ》

下級の上位存在をも喰らう。


「じゃあお願いします桜花さん」

「任せて。江神君を立華君に負けない位の強さに仕上げてあげるよ」


エンドはヴリトラに乗ると、インドラを引き連れ紫闇の下へ飛んでいった。


「さて江神君。この修業で最後の対戦相手は僕が務めさせてもらう。今まで倒した精霊よりも強いから覚悟してもらうよ?」

「願ってもない。貴方に勝てれば成長した立華紫闇にも勝てるでしょう」

 
 

 
後書き
インドラとヴリトラが食べる下級の上位存在より弱い最下級の上位存在であっても石化した後の復活を防いで完全滅殺できるのはオリキャラだけです。

原作設定だと史上最強の《神代蘇芳(かみしろすおう)》でも倒して石化封印は出来ても討伐による滅殺は出来なさそうでした。

ドラゴン達はパズドラから。
_〆(。。) 
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