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レーヴァティン

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第百六十四話 幕臣その十

「他者を攻撃するとな」
「恐ろしいことになりますね」
「実にな」
「それが一番恐ろしいことですね」
「耶蘇教はこの世界でも互いの宗派の仲が悪い」
 お静にもこのことを話した。
「しかし起きた世界では殺し合うまでだった」
「同じ教えでもですか」
「宗派が違うとな」
「殺し合いまでしたのですか」
「自分の教えを絶対としてだ」
 そのうえでというのだ。
「どちらかが死に絶えるまで行った」
「それではお互いに多くの血が流れますね」
「実際にそうなった、違う教えの相手にもそうした」 
 十字軍のことも思い出しつつ話した。
「それで相手が死に絶えるまでな」
「戦っていましたか」
「そして殺し合っていたが」
「そうしたことは、ですね」
「俺はこの浮島では絶対にさせない」
 例え何があろうともというのだ。
「幸いこの世界ではそこまで至っている教えはないが」
「万が一ですね」
「そこまで至ることは許さない」
 やはり断じてという口調だった、そのことはまさに何があろうとも許さないという断固たる決意があった。 
 それでだ、英雄はお静にさらに言った。
「そのことは常に頭の中にある」
「そうしたことまでお考えとは」
「それがどれだけ恐ろしいかわかっているつもりだからな」
 それ故にというのだ。
「俺はさせない」
「では」
「そうだ、ただ耶蘇教はこの浮島にあっても」
 英雄はこうも言った。
「広まる気配はあまりないな」
「そうなのですか」
「あまりだ」
「そうですか」
「これといってな」
 どうにもというのだ。
「広まる気配がないな」
「それはどうしてでしょうか」
「この浮島に教えが合わないか」
「耶蘇教のそれが」
「そうも思う」
「教えの合う合わないもありますか」
「そうかも知れない」
 それぞれの地域によってというのだ。
「どうもな」
「教えが普遍では」
「いや、砂漠で生まれた宗教ならだ」
「砂漠の教えですか」
「砂漠で広まる」
 そうなるというのだ。
「街なら街、農地なら農地だ」
「そうですか」
「この浮島にも天理教があるが」
「大和にある」
「あの宗教は農家からはじまっている」
 この世界でもそうである。
「だから百姓の信者が多い」
「そういうことですね」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「天理教の教典や歌でも農家にまつわるものが多いしな」
「農家の宗教ですね」
「それと大工だな」
 こちらもあるというのだ。
「棟梁という言葉も出て来るしな」
「それで、ですか」
「大工の教えも多い、そうした宗教でだ」
「農家に合っていますか」
「そして大工で街にもな」
「そうなのですね」
「この浮島の宗教だ」
 広く言えばそうなるというのだ。 
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