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神機楼戦記オクトメディウム

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【あとがき】

『神機楼戦記 オクトメディウム』。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 最初は神無月の巫女のリメイク小説などというぶっ飛んだ事をして完成など出来るかという不安もありましたが、これにて無事完結する事が出来ました。

 この小説が書かれるに至ったのは、やはり原作がイズミの低俗さと、それでいながら名目上であれど主人公の来栖川姫子から『称賛』までされて一切報いは受けないという理不尽な展開であった事に尽きます。
 実は、以前に私はツクールアドバンスでこのイズミをモデルにしたキャラをラスボスにして最後にボコボコにするという展開を作って見たのですが……それで気が晴れなかったのがまず今回の計画に至った一因です。
 そして、漫画版遊戯王ARC-Vのユーリの描写も大きく影響しました。
 このキャラクターは原作アニメでゲスな悪役に過ぎないキャラが、別の作品で心強い味方となる、そんなケースは今まで例がないと称されていたのを聞き、それがこの神機楼戦記の八雲泉美を生む動力源となりました。

 最初はイズミだけを調整→彼女をオロチ八の首にする→その後仲間になるという展開以外はほぼ神無月の巫女と同じ流れにしようと思っていました。
 しかし、やはりあのアニメは恐らくワザとロボット部分をおざなりに作ったきらいが垣間見え、現にオロチ衆は重要な役割ではないので名字は与えられていないと公式からも言及されていたので、このアニメの展開を根本からひっくり返そうと思い、この『神機楼戦記 オクトメディウム』を作るに至ったという事です。

 このような試みをする発想が生まれたのは、グループホームでの夕食(宅配弁当)がそれまでの老人食を担当していた会社が倒産し(後に復活したようですが)、それを気にセブンミールに変更されてボリュームのあって活力の出る食事になった事が動力源となったという流れがあります。それ以前はイズミに対してはただずっと晴れない憎悪を抱いていたに過ぎませんから。
 つまり、食事というのはとても大切という事ですね。こういう創作物を作るモチベーションにもなるという事ですから。

 そして、どうせやるなら原作の展開改変程度では物足りないと考え、一部の設定や名称を参考にしつつもほぼ全ての構成を別物にした半オリジナル作品にしてしまえという事でこのような『原作クラッシャー』といった形になったという訳です。その試みがどう受けるかは読者様次第という事なのですけどね。

 後、ロボットモノというのはどうしてもアニメ向けになるジャンルですね。こういうのはガンダムのように造形とアニメーションが肝であり命となってきますから。
 しかし、小説ではそれを伝えるには限界がありました。なので、格好いいロボットを出すというやり方では通用しなかったので、攻撃方法や演出等に特異性を出す事でそれをカバーしました。
 故に、この神機楼戦記はロボットモノとしては異質なものとなるに至りました。そして、ロボットバトルには限界があるので、それだけに執着しないで、登場人物に変わった戦い方をさせた訳です。
 これは『ガン×ソード』が参考になりましたね。このアニメもロボット(ヨロイ)以外にも様々な人間同士の戦いが繰り広げられましたから。

 ラスボスに関してですが、原作で巫女二人が揃って完全モードとなったアメノムラクモに『戦闘する事なく』体内から突き破られてコアだけになって宇宙に逃げるという憂き目を見た彼だったので、神機楼戦記ではしっかりと戦う予定……でしたが、結果は『ラスボス(笑)』という位置に落ち着きました。
 と言うのも、私がこのラスボス登場を書いている時は私にとって、力とは『支配と抑圧の権利』以外の『何物』でもなかったのです。故に、そのような存在には見せ場など与えてたまるかっ!!(勇者ダイ風)と言った憤慨の元こうなったという訳です。
 大邪衆の面々には様々なドラマがあり、丁寧に描くに至っていましたが、破壊の化身たるラスボスにはそのようなものがなかった事も影響したと思います。
 勿論、東方projectの綿月依姫のように力を建設的に使う人ならば心強いものとなる事は分かっていますが、要はこの時の私にとっては前述の通りの低俗かつ傲慢な概念でしか無かったというのが重要なのです。
 そのように、ラスボスが小者化した事により、当初ラスボスの分身として登場させていた神奈木幸人の扱いも大幅に変わる事となりました。敵のスパイだったという苦い展開が解消されたのは、もしかしたら怪我の功名だったかも知れません。
 そして、絵のある作品ではどうかは分かりませんが、小説だと自分の思い入れのないキャラクターは冷遇するとスカッとするものだというのも参考にして下さい(感じ方には個人差があります)。

 続いてこの作品は群像劇という形で、姫宮千影、稲田姫子、大神士郎、八雲泉美の四人全員が主人公という扱いになりました。
 こうなったのもまず、原作が千歌音と姫子の巫女二人だけを中心にされたとの事で、そして実際は姫子は千歌音の徹底した『引き立て役』として流用されていました。つまり、あのアニメは千歌音のカリスマ性だけで物語全てを動かそうとした野心的な作品だと私は思います。そういう思い切った作りは時に凄まじい成功作品となりうるものですが(以下略)。
 その事があって、この神機楼戦記ではより多くのキャラクターにスポットが当たるように務め、結果群像劇仕立てになるに至ったとう訳ですね。これは巨大ロボットを町中で運用するに辺り、精々出撃出来るのが味方に二人位だろうと思ったのも理由です。
 加えて、東方儚月抄の存在もあります。この問題作は私にとって色々考えさせられる事となった貴重な作品ですが、それでも群像劇としては恐らくワザとおざなりに作っただろうと思われる事です。東方キャラ自体はこれでもかという程濃く仕上がっていますが、肝心の『儚月抄での描写』は薄くなっていましたから。
 それで、自分ならば濃厚な群像劇を書こうと思った訳なのですが、それは恐らくZUN氏の思惑通りなのでしょうね。
 最後はビーストサーガの存在です。このアニメは群像劇を非常に丁寧に描写しており、かつ各味方登場人物全員に強力な信念を持たされていて、非常に見応えがありました。
 しかし、このアニメはTV放送が打ち切られるという憂き事態になった経緯があります(ネット配信で完結はしていますが)。その事がショックとなった事が遠因で私は小説を書くスキルがいつの間にか目覚めていたのと同時に、いつかビーストサーガのような濃厚な群像劇作品を書かなければ打ち切りにより生まれた心の隙間は埋められないだろという意気込みが生まれていました。
 それが、この神機楼戦記を完成させる事である程度解消されたように思えます。感無量ですね。

 最後に群像劇を書き終えた者としてのアドバイスです。あくまで参考までに。
 群像劇に必要なのは、各場面で主役を張る人物達の人物描写や信念などを色濃く用意しておく事ですね。孫悟空のような明確で強力な一個体の主人公を用意しない訳ですから、それぞれの場面で動くキャラ全ての基盤がしっかりしていなければなりません。
 後、個人的には複数の勢力の動向を逐一映り変えて描写するというのタイプは好きではありません。これをやられると、一勢力での気になる展開が途中で中断されてモヤッとした気分になったのを何度も経験しています。
 なので、勢力Aを書き終えたら、その後時間を遡ったりして勢力Bはその時どうしていたかという表現が私は好きです。丸山くがね氏の快作である『オーバーロード』が代表例ですね。
 このように、群像劇は使いこなすと不要なインターバルを挟まずにめまぐるしい展開を次々に打ち出せるのが魅力ですね。果たして私はそれを活かし切れていたかは読者様の判断に委ねます。 
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