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困った家族と賢い犬

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第二章

 注意されたが聞かない、それでだった。
 明日も葬式なのでとりあえずお通夜の後で食べていた親戚一同からも除け者にされていた、母親の兄弟や従兄妹それに両親もいたが。
 彼女と息子には注意ばかりしていた、だが母親も息子も悪びれない。それは葬式の時もその後の食事の時でも同じで。
 二人共すぐにその場で騒いだり煙草を吸ったりしてまた追い出されたし食事の時も騒いだりしていた、祐樹は二人をずっと見て両親に言った。
「世の中色々な人いるけれどな」
「あの二人はかなり酷いな」
「そうよね」
「子供あのままだとやばいだろ」
 その謙二のことを言うのだった。
「あの母親と一緒だったらな」
「そうだな」
「今なら間に合うけれどね」
「あのままずっとだとな」
「もっと酷くなるわね」
「ああ、タロが唸ってこれはって思ったけれどな」
 おかしな相手だとだ。
「予想以上だな」
「全くだな」
「あの二人は早く帰ってもらった方がいいわね」
「そしてこうした場には二度と呼ばない方がいいな」
「来るって言っても断るべきね」
「それが絶対にいいよな」
 祐樹も頷いた、そしてだった。
 葬式も初七日も終わって二人が去るのを見届けた、だがタロは二人が去る時も唸った。祐樹はその二人の背中を見送って二度と来るなと思った。
 後日彼は両親からあの二人のことを聞いた、その話はというと。
「あの母親は酒と煙草で身体を壊してな」
「それでギャンブル依存症でね」
「禁治産者になってな」
「どうしようもなくなってるわ」
「それで息子の方はな」
「お父さんがまともな人でその人に引き取られて」
 そうしてというのだ。
「今は普通の人達に囲まれてな」
「少しずつでもよくなってきているらしいわ」
「そうなんだな、タロが警戒したのも道理だよな」
 祐樹は両親の話を聞いてあらためて言った。
「そんなのだとな」
「タロは人がわかるからな」
「そうした賢い子だからね」
「見極めて吠えてな」
「私達も気をつけてよかったわね」
「ああ、今回は本当に勉強になったよ」
 お通夜にお葬式はとだ、祐樹は二人にあらためて話した。
「ああした人達が見られたからな」
「ああした人達を見るのも勉強だぞ」
「世の中色々な人がいるからね」
「そしてタロが唸って教えてくれた」
「そのことにも感謝しないとね」
「本当にそうだよな、じゃあ今からな」
 祐樹はここで部屋の壁にある時計を見た、大学から帰って話をしていたが丁度タロの散歩の時間だった。それで両親に話した。
「そのタロの散歩連れて行くな」
「ああ、頼むな」
「それじゃあね」
 両親は息子に笑顔で言った、祖母も彼を笑顔で送り出した。
 祐樹はタロを連れて散歩に出た、タロは彼には笑顔を向けて散歩の間終始尻尾を横にぱたぱたと振っていた。


困った家族と賢い犬   完


                  2020・7・22 
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