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戦国異伝供書

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第九十六話 尼子家の騒動その五

「今はなにもせずともよい」
「尼子家で争いが起きました」 
 その中でとだ、志道が言って来た。
「だからですな」
「主殿と三男殿の間でな」 
 経久と興久の間でというのだ。
「争いがはじまったな」
「だからですな」
「あの戦家が真っ二つになっておる」 
 尼子家の中がというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「ここは何もせずな」
「様子を見ますか」
「そうする、お家騒動が起こるとは思っておった」
 尼子家の中でというのだ。
「ならばな」
「これで、ですな」
「こちらが何もせずな」
「尼子家は弱まりますな」
「左様、他の家の不幸を喜ぶのは人の道に反するが」
 それでもというのだ。
「当家によってよいことじゃ」
「何もせずに敵が弱まる故に」
「だからな、ここは様子を見よう」
「そうしますな」
「そしてな」
「このお家騒動の後で、ですな」
「我等はな」
 元就は志道に話した。
「衰えた尼子家をな」
「さらにですな」
「弱めてな」
 そうしてというのだ。
「迂闊に攻められぬ様にする」
「そうしますな」
「左様、ではな」
「尼子家が争っている間に」
「安芸の政を行いな」
 そしてというのだ。
「豊かになると」
「それでは」
「今はそれに専念しよう」
「わかり申した」
「では兄上」
 今度は元網が言ってきた。
「今は」
「うむ、城にしてもな」
 そこもというのだ。
「整えておく、それは島の方も同じじゃ」
「厳島等の方もですか」
「そうじゃ」
 元網にはっきりと答えた。
「そちらもな」
「そうしますか」
「そしていざという時はな」
「そうした城も使って戦う」
「そうする、それでよいな」
「さすれば」
 元網も応えてだった、毛利家は今は田畑に街を整え堤や橋もよくしていき城の築城も進めていった。そしてだった。
 内の政を万全にしていった、その中で尼子家のお家騒動は激しくなってきて。
 遂に干戈を交えるまでになった、桂はその状況について元就に話した。
「まさに骨肉の争いで」
「多くの血が流れておるな」
「家臣も兵もです」
「多く死んでか」
「尼子家の力は落ちております」
 そうなっているというのだ。
「それもかなり」
「左様じゃな」
「まさに」
「思った通りじゃ、このお家騒動でじゃ」
 どうなるかとだ、元就は話した。
「尼子家は弱まる」
「一人勝ちではなくなりますな」
「そうなる、そうなってはたまったものではなかった」
「まさにこのお家騒動は」
「我等にとっては救いである」
 それを喜ぶことはあってはならぬことでもというのだ。 
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