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自分と同じ

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第二章

「だから名前はジュリーにしないか」
「ジュリー?」
「鳴き声が何か勝手にしやがれって聞こえるだろ」
「そういえばそうね」
「だからな」
 そうした鳴き声だからだというのだ。
「この子の名前はな」
「ジュリーね」
「その名前にしないか?」
「いいわね。私昔ジュリーのファンだったし」
 妻は夫の提案に微笑んで答えた。
「だったらね」
「ジュリーでいいな」
「その名前にしましょう」
「それじゃあな」
 夫は妻が自分の提案に頷いてくれたので彼も笑顔になった、そうしてだった。
 二人でジュリーの世話をして共に暮らした、ジュリーは猫らしく尊大な態度で二人にいつもあれしろこれしろと鳴いたり前足で突いたりして催促して自分は何もしないが。
 そのジュリーの世話をしつつだ、夫は妻に話した。
「私にもな」
「全く遠慮しないわね」
「ああ、本当にな」
「あなたが助けて拾ったのにね」
「それで今も大事にしているのに」
 それでもとだ、夫は笑って話した。
「ジュリーは本当にな」
「何の遠慮もしないわね」
「困った子だよ、けれどな」
「それでもよね」
「やっぱりいいな」
 そのジュリー、自分の傍で寝ている彼を見て言った。寝ているがそれは姿勢で目は開いている。
「一緒にいたら」
「そうよね」
「定年して今はシルバーで働いているけれど」
 それでもというのだ。
「頑張ってな」
「そうしてよね」
「働いていくか」
 こう言うのだった。
「この子の為にも」
「そうね、私もね」
 妻も夫の言葉を受けて言った。
「頑張らないとね」
「お互いな」
「ジュリーの為に」
「ああ、ずっと自分の猫なんていなかったけれど」
 これまでの人生でとだ、夫は優しい顔で話した。
「一緒にいるとな」
「凄くいいわね」
「ああ、はじめて持てたけれど」
「こんないいものはないのね」
「心から思うよ」
 妻にジュリーを撫でつつ話した、ジュリーは撫でられるとごろんと腹を見せた、彼はその腹を撫でてまた笑顔になった。


自分と同じ   完


                    2020・7・21 
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