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レーヴァティン

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第百六十三話 治の仕組みその五

「出来る筈がない」
「左様ですね」
「無論重税を課すにはな」
 今否定しているこのことについてもというだ、英雄は話した。
「理由がある」
「わし高知生まれじゃが」
 当季はここではこのことから話した。
「戦国時代実はじゃ」
「高知、土佐はだな」
「年貢が高かったぜよ」
「そうだったそうだな」
「長曾我部さんの時代じゃが」 
 この時はというのだ、土佐一国を掌握した後で四国も統一した戦国大名だ。勿論高知では英雄の一人である。
「一領具足でじゃ」
「それで軍勢を整えてだな」
「戦を行う為にはやっぱり米も銭も必要ぜよ」
 その二つがというのだ。
「だからぜよ」
「年貢は高かったな」
「七割以上あったぜよ」
「そうしなければならなかったな」
「そうだったぜよ」 
 長曾我部元親の頃の土佐はというのだ。
「そうした場合もあるぜよ」
「そうだな、その場合はだ」
「仕方がないぜよ」
「勝つ為にはな」
「そしてぜよ」
 当季は英雄にさらに話した。
「さっき話した薩摩藩もぜよ」
「年貢は高くないとならなかったな」
「そして奄美大島とかで砂糖を作らせていてじゃ」
「儲けていたな」
「民を思いきり苦しめて」
 当季はこのことは苦い顔で述べた、その頃の奄美大島の人達のことを思ってそれでその思いが顔に出たのだ。
「それでぜよ」
「藩の財政を支えていたな」
「あと密貿易もしてじゃ」
 清やオランダと行っていたというのだ。
「それでぜよ」
「何とかやりくりしていたか」
「それでも足らんと借金していたぜよ」
「それが五百万両だったな」
「それで首が回らなくなってたぜよ」
「それを踏み倒したな」
「そうぜよ」
 このことも歴史にある。
「二万両ずつ二百五十年で払うとじゃ」
「あの、今も支払っていませんか」
 紅葉は当季のその言葉に問うた。
「それでは」
「だからだ、江戸幕府が倒れてだ」
「踏み倒しましたか」
「そうなった」
 英雄がこのことを話した。
「それでだ」
「貸した方はですね」
「大損をした」
「酷い話ですね」
「そして薩摩藩がこれまでしたことはな」
 奄美大島での民の酷使も密貿易もというのだ。
「事実だ」
「かなりのことをしていましたね」
「奄美はそれを見た西郷さんが怒り狂った」
 このことも歴史にある。
「そして許せないと立ち上がった」
「西郷さんらしいですね」
「そうだな、年貢が高いだけでなくてな」
 このことに加えてというのだ。
「そこまでしてだ」
「藩を運営していましたか」
「それだけ財政が苦しかったのだ」
「土地は痩せていてしかも武士が多くて」
「その為にだ」
「実質三十八万石で武士が五万ですね」
「だからそこまでした、しかも参勤交代でだ」
 江戸幕府が定めた制度だ、領地と江戸を一年ごとに行き来するものであり供の武士達もその石高に合わせて数が定められていた。 
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