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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第91話

~エリンの里・ロゼのアトリエ~





「ほう?ガイウスは何故そう思ったんだ?」

ガイウスの質問を聞いたギュランドロスは興味ありげな表情で問い返した。

「ギュランドロスさんも知っているように、クロスベルのようにエレボニアとカルバードに挟まれているノルドもまた、”外の大きな流れ”に巻き込まれる事で平穏を壊されかけた事は去年の内戦や特別実習も含めて何度かあった。だからギュランドロスさん達クロスベルはノルドとは比べ物にならないくらい何度も平穏を壊された上、”外の大きな流れに巻き込まれた犠牲者”もいるクロスベルを守る為に、二大国を滅ぼそうとしているのではないかと思っているのだが……」

「ガイウス………」

ガイウスの推測を聞いたユーシスは真剣な表情でガイウスを見つめた。



「ガイウスの読み通り確かにそれも二大国に戦争を仕掛けた”理由の一つ”ではあるが……それはオレ様――――――いや、オレ様達が建国したクロスベルにとっての”通過点”でしかねぇよ。」

「に、”二大国を滅ぼすことが通過点”ってどういう事なんですか!?」

不敵な笑みを浮かべたギュランドロスの答えにアリサ達と共に血相を変えたマキアスは困惑の表情で訊ねた。

「クク、決まっているだろ………オレ様達クロスベルがゼムリア大陸の国家間の力関係を変えて、時代を変える為だよ!先に言っておくがオレ様が言っているのは”西ゼムリア大陸だけ”みてぇな、小せぇ事じゃねぇぜ?」

「に、”西ゼムリア大陸だけじゃないゼムリア大陸の国家間の力関係を変える”って事はまさか……!?」

「”東ゼムリア大陸を含めたゼムリア大陸全土の国家間の力関係を変える”―――つまり、”ゼムリア大陸全土の支配をする”という事なの!?」

ギュランドロスの答えを聞いてある事に気づいたトワは表情を青褪めさせ、サラは厳しい表情でギュランドロスに確認した。



「おうよっ!オレ様の”覇道”とはオレ様達の手で世界の全てを支配し、時代をより良い時代に変える事!それがオレ様の”覇道”だ!!」

「何という凄まじい野心と覇気………これがクロスベルのもう一人の王―――いや、”覇王”たる”紅き暴君”か………」

「”世界を自分の思うがままに変えようとしている”とは、まさにその異名通り”暴君”じゃの……」

「ったく、世界を”終焉”に導こうとするギリアスの野心が小さく見えるくらいスケールがデカすぎだろ………」

「つーか今の時代で”世界征服”とか、時代遅れじゃねぇか?」

「……でも、メンフィルと共に二大国を滅ぼした今のクロスベルだと、冗談になっていないかも。」

「そうだね……ましてや既に東ゼムリア大陸と接しているカルバードが連合によって滅ぼされた以上、連合は東ゼムリア大陸への本格的な侵略も可能になっているだろうね。」

無意識に全身に覇気を纏って宣言したギュランドロスの話に仲間達と共に血相を変えたラウラとローゼリアは厳しい表情でギュランドロスを見つめ、クロウとアッシュは呆れた表情で呟き、フィーとアンゼリカは真剣な表情で推測した。



「ちょ、ちょっと待って……!リウイ陛下、まさかメンフィルも今回の戦争を終えてもクロスベルと共に他国への侵略を続けるおつもりなんですか……!?」

その時シェラザードが声を上げて真剣な表情でリウイに問いかけ

「――――――”今の所、クロスベルと連合を組んで他国への侵略をするのは今回の戦争まで”という話になっている。」

「い、”今の所”はって事は……」

「場合や条件によっては、クロスベルと共に更なる戦争を始めるって事じゃねぇか……」

リウイの答えを聞いてある事を察したアネラスは不安そうな表情をし、アガットは目を細めてリウイを睨んだ。



「クスクス、ちなみにリベールはクロスベルの侵略対象には含まれていないそうだからリベール組は安心していいわよ♪そうよね、ギュランドロスおじさん♪」

「おうよっ!オレ様達クロスベルにとっての”友”のメンフィルは当然として、オレ様達が来るまでに”クロスベル問題”を緩和したリベールを侵略すると言ったエレボニアのように恩を仇で返すような真似はしねぇよ。オレ様は”バカ王”だがユーゲント三世と違って”愚王”ではないからな。だぁっはっはっはっ!」

「い、意味がわかりませんわ……No.Ⅰとは別の意味で、関われば間違いなく色々と振り回されそうな人物ですわね……」

「いや、そもそも比較対象であの”劫焔”を出すのは色々と間違っているような気もするんだが……」

小悪魔な笑みを浮かべたレンの確認に答えた後豪快に笑っているギュランドロスをその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせて見守っている中疲れた表情で呟いたデュバリィにリィンは困った表情で指摘した。

「勘違いをしているようだが、何も俺は自分だけの野望の為にこのゼムリアの時代を動かそうって訳じゃねぇぜ?」

「え……そ、そうなんですか?」

ギュランドロスの意外な答えを聞いたトワは困惑の表情で確認した。

「当然だ。そもそもそんなこと、”楽しくないからな。”自分だけの享楽を求めて自慰行為に耽るのは。そんなもんは本当の楽しさを知らない、ただのクソッタレがやる事だ。オレ様はゼムリア大陸の連中全員を楽しませるような世界にすることを考えているのさ。」

「ギュランドロスさん………」

「へえ?」

「ほう……………」

「フフ、なるほど。ギュランドロス陛下自身が口にした”バカ王”に込められる意味の一つは国民達の為に自らが”道化を演じる事”を示す異名だったのですね。」

「………確かにメサイアから話を聞いた通り、よほど親しい人物でない限りギュランドロス陛下の事を完全に理解するのは難しいようだな。」

ギュランドロスが口にした意味深な答えにその場にいる全員が驚いている中ガイウスは目を丸くし、レンは意味ありげな笑みを浮かべ、リウイは感心した様子でギュランドロスを見つめ、ミュゼは静かな笑みを浮かべ、ラウラは真剣な表情でギュランドロスを見つめた。



「……ギュランドロス陛下。今までの貴方に関する話で、貴方とヴァイスハイト陛下はとても親しいという話は聞いてはいるが、かつてヴァイスハイト陛下がメルキア帝国に所属していた時代に一体何があって、貴方達は今のような関係を結んでいるのでしょうか?」

「確かにそれは気になっていたね……貴方とヴァイスは性格等は全く違うようだし、先日Ⅶ組の諸君がメサイア君から聞いた話だと貴方がかつて治めていた国はヴァイスの祖国である”メルキア帝国”に何度も戦争を仕掛けていたとの事だが。」

その時ミュラーとオリヴァルト皇子が真剣な表情でギュランドロスに質問した。

「クク、随分と懐かしい話だな……てめぇらも知っての通り俺のユン・ガソルとメルキアはかつて何度も戦争をしていた。そしてその戦争でエルミナがセンタクス領の首都を占領する快挙をしたんだが………そこにヴァイスが副官と僅かな兵達と共にセンタクスを占領していたエルミナの部隊を撃破して、エルミナを退却に追いやったんだよ。……後でヴァイス達から聞いた話だと、”影の国”って所からの帰還直後の出来事だったそうだぜ?」

「ええっ!?そ、それじゃあヴァイスさんとリセルさんは”影の国”から帰還した後、すぐに自国の領土を取り戻す為の戦争に参加していたんですか……!?」

「そういえばあの二人は戦争の最中に”影の国”に巻き込まれたという話だったわね……」

ギュランドロスの話を聞いたアネラスは驚き、シェラザードは真剣な表情で考え込んでいた。



「で、俺はその話を聞いた時に直感で感じたのさ……ヴァイスハイト……奴も俺と同じ”力”を持っている事にな。」

「ヴァイスとあんたの”力”が同じだと……?あいつは優れた軍人や政治家のようだが、異種族の血が入っていなければ、あの不良神父のような何らかの特別な”力”も持っている訳でもないただの人間のはずだぜ?」

ギュランドロスの話が気になったアガットは目を細めて指摘した。

「そんな”小せぇ話”じゃねぇよ。俺が言っている”力”とは真の王者たる者だけが持つ、幸運を招き寄せる絶対的な力たる”天賦の才”だよ!」

「……………」

「フフ、なるほど………ヴァイスハイト陛下とギュランドロス陛下……お二人は当時の”時代が望んだ真の王者”だったのですね。」

「ええっ!?ミルディーヌは今の話を理解できたの……?」

ギュランドロスの答えにその場にいる多くの者達が困惑の表情を浮かべている中リウイは真剣な表情で黙ってギュランドロスを見つめ、静かな笑みを浮かべて呟いたミュゼの話を聞いたアルフィンは戸惑いの表情で訊ねた。



「ええ。お二人はある意味、”リウイ陛下やリィン少将閣下と同じ存在”と言っても過言ではないかと。」

「いや、それで俺やリウイ陛下が出るとか、余計にわからなくなるんだが……」

「……その口ぶりだとヴィータはアンタに、”時代が生む怪物”についての話もしていたようね……」

ミュゼに微笑まれたリィンが疲れた表情で答えている中、セリーヌは目を細めてミュゼを見つめた。

「話の意味はほとんどわからねぇが……結局は”運”が滅茶苦茶いいってだけの話なんじゃねぇのか?」

「う、うん……その、幸運が何故その”真の王者たる者だけが持つ力”という話に繋がるんでしょうか……?」

疲れた表情で溜息を吐いたクロウの言葉に頷いたトワは不安そうな表情でギュランドロスに訊ねた。



「クク、そんな事もわからないのかよ?――――――”どんな絶望的な状況からも必ず勝利を引き寄せる。”――――――それこそが真の王者たる者だけが持つ”天賦の才”さぁっ!」

「よ、余計に意味不明だ………」

「フン……そもそも”王”とは国民達を導く唯一の”尊き存在”であって、その”王”を補佐するのが政治家や貴族、そして軍人といった者達だ。それを戦争による勝利が”王の力”等言語道断だ。」

ギュランドロスの答えにマキアスがジト目になっている中、ユーシスは呆れた表情で呟いた。

「クク、”貴族の義務”すらも果たしていないどころか、その真逆の事を仕出かした父親や兄を持った上、父親や兄の代わりに治めていた領土を鉄血達の策略に使われて焼かれたお前がそれを言うのかよ―――アルバレアの次男よぉ?」

「……ッ!!」

「ユーシスの事を何も知らずにそんな事を言うなんて……!」

「ギュランドロスさん………オレの”友”を傷つける言葉を口にするのは止めてもらえないだろうか?オレやノルドの民達にとっても親しい”友人”である貴方が同じ”友人”であり、”恩人”でもあるユーシスを傷つける所は見たくないんだ。」

「ガイウス……」

不敵な笑みを浮かべたギュランドロスに指摘されたユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締め、それを見たアリサは怒りの表情でギュランドロスを睨み、ガイウスは真剣な表情でギュランドロスに指摘し、それを見ていたエリオットは目を丸くした。



「俺に先に喧嘩を売ってきたのはそいつだが……まあ今はそんなどうでもいい話をしている時じゃねぇな。―――――話を戻すが、ヴァイスハイトと会って問答し、奴が俺と同じ”天賦の才”を持っている事を確信した後奴を見極める為に今度はルイーネと共に会談に望んで、見極めようとしたのさ―――三枚の硬貨を連続で投げてそれぞれ、裏か表かを当てるかどうかでな。」

「ハア~ッ!?コイントスの為にわざわざ敵の所に会談にするとか下らなさ過ぎだろ………」

ギュランドロスの話を聞いたアッシュは思わず声を上げた後呆れた表情で呟いた。

「お、その言葉、生まれ変わってもなおヴァイスの傍にいる事を望んでヴァイスの前に現れたヴァイスお気に入りの黒髪の女副官も同じような事を言っていたねぇ。」

「黒髪の女副官………リセル君の事か……」

「……それでどのような結果になったのでしょうか?」

アッシュの言葉を聞いて懐かしそうな表情を浮かべたギュランドロスの言葉を聞いたオリヴァルト皇子はリセルを思い浮かべ、オリエは話の続きを促した。



「一枚目と二枚目は俺の予想通りだったが……”三枚目は机と床の隙間に挟まった事で縦になっていた”―――つまり、”引き分け”だよ。」

「机と床の隙間に挟まった事で縦になる”って、そんな事普通に考えてありえないんだけど。」

「まあ、”ゼロ”とは言わないけどコイントスしたコインがそんなことになるとか、確率で言えば相当低いだろうね。」

「……だが、結果で言えば他の2枚はギュランドロス陛下の予想通りだったのだからコイントスの勝負はギュランドロス陛下の勝利と思われるが………」

ギュランドロスの話を聞いたフィーはジト目で指摘し、アンゼリカは静かな表情で答え、ラウラは困惑の表情で指摘した。

「俺はな。昔から賭け事には負けた事がない。特にコイントスは一度も負けたことがねぇんだよ。――――何だったら、試してみるか?もし、一度でも負けたらこの戦争で鉄血達が死んでエレボニアが敗戦しても、クロスベルの領土になる予定だった領土を全部エレボニアに返してやってもいいぜ?勿論俺が勝った時の条件は何もなしだ。」

「ええっ!?ほ、本当にコイントスだけで、そんなクロスベルとエレボニア、双方にとって重要な事を決めて大丈夫なんですか!?」

不敵な笑みを浮かべた後に答えたギュランドロスの突然の驚愕の提案に仲間達と共に血相を変えたエマは信じられない表情で訊ねた。



「おう!ここにはお前達だけじゃなく、メンフィルの皇族のリウイ達もいるからわざわざ証文を書くような手間もいらねぇだろ?」

「うふふ、確かにレン達―――”メンフィル皇族という証人”は十分”証文”の役割を果たしているものね♪」

「………戦後のエレボニア帝国の領土のクロスベルの領有権について口出しするつもりは毛頭ないが………お前は本当にそれでいいのか?」

ギュランドロスはリウイに視線を向け、ギュランドロスの話を聞いたレンが意味ありげな笑みを浮かべている中ギュランドロスに視線を向けられたリウイは真剣な表情でギュランドロスに確認した。

「ああ。そもそもオレ様がコイントスでお前やヴァイス以外に負ける事もそうだが、引き分ける事も”絶対にありえないからな。”」

「一体その自信はどこから湧いてくるのよ………ちなみに今までの話から察するに、コイントスの回数は3回かしら?」

ギュランドロスの答えに呆れたセリーヌは真剣な表情で確認した。



「俺はそれでいいがお前達は確か”Ⅶ組”だったな……だったら、今回は特別に7回勝負でいいぜ?」

「わ、私達が”Ⅶ組だから7回勝負でいい”って……」

「……だけど、勝負できる回数が倍以上に増えた事はあたし達にとって有利な話よ。」

「問題はそれぞれの勝負に誰が挑むかだが……」

「そもそもコイントスは完全に”運”の勝負だから、誰が挑んでも勝負の結果はあまり関係ないんじゃないか?」

「へっ、何にしてもコイントスをするんだったらここは俺の出番だな。」

「先に言っておくがイカサマはするなよ、クロウ。」

ギュランドロスの更なる提案に仲間達と共に冷や汗をかいて表情を引き攣らせたアリサはジト目で呟き、サラは真剣な表情で呟き、真剣な表情で考え込んでいるラウラにマキアスは戸惑いの表情で指摘し、クロウがコイントスをする役割を申し出る様子を見たリィンはジト目で指摘した。



「ぐっ……お前、本当にエレボニアを救う為にそっちについているんだったら、余計な事を言うなよな!?」

「クロウ君……その様子だとやっぱりズルをするつもりだったんだね……」

「まあ、クロウだから、むしろイカサマをしない方が私なら怪しむね。」

「そもそも、経緯はどうあれ正々堂々の勝負に不正を働くような行為、この私が見逃しませんし、許しませんわよ!」

(賭け事の一種であるコイントスを”正々堂々の勝負”というのはちょっと間違っているような気もしますが……)

リィンの指摘に対して唸り声を上げてリィンを睨んだクロウを見たトワは呆れ、アンゼリカはやれやれと言った様子で肩をすくめて答え、デュバリィは真剣な表情でクロウを睨んで指摘し、デュバリィの指摘を聞いたプリネは苦笑していた。



その後アリサ達はギュランドロスに対する7回のコイントス―――更には表から裏かを決める権利を全てアリサ達側に譲るというギュランドロスのハンデをもらってギュランドロスとコイントスの勝負をしたが、勝負の結果は全てギュランドロスの勝利という驚愕の結果となった。



「嘘だろ、オイ………」

「コイントスで、それも表か裏かを決める権利を全て相手側に譲って、7回連続で勝つってありえるんですか、シェラ先輩……!?」

「普通ならありえないわよ……コイントスをする人物と予め打ち合わせをするイカサマでもしない限り、7回連続で勝つとか”絶対に不可能よ。”」

「……………」

「こ、こんな事が本当にありえるなんて……」

「まさに”怪物”と言っても過言ではありませんね。」

「フフッ、”盤面を見る力”がある私でもさすがにこの結果は”読めません”でしたし、それ以前に先程のコイントスでエレボニア占領後の領有権を決めるというギュランドロス陛下の決断すらも”読めません”でしたわ。」

「ミルディーヌでも読めなかったなんて……」

勝負の結果を見守っていたアガットは信じられない表情をし、困惑の表情をしているアネラスの問いかけにシェラザードは驚きの表情で答えてギュランドロスを見つめ、デュバリィは驚きのあまり口をパクパクさせ、クルトは信じられない表情でギュランドロスを見つめ、オリエは静かな表情で呟き、苦笑しているミュゼの言葉を聞いたアルフィンは驚きの表情を浮かべた。



「馬鹿な………」

「ま、まさか本当に全てギュランドロス陛下の勝利になるなんて……」

「しかも選ぶ権利は全てあたし達というハンデ付きで、何であたし達が全敗するのよ……!?」

「こうして結果を目の前で叩きだされると、ギュランドロス陛下は単なる”強運”では片づけられない”何か”を持っているとかしか思えないねぇ。」

「ないとは思うけど、クロウはイカサマしてないよね?」

「当たり前だっつーの!さすがの俺でもこんな大勢の前でイカサマする技術は身に着いてねぇし、そもそも俺にとって黒の工房の時で初対面のギュランドロス皇帝を勝たす理由がねぇだろうが!?」

一方自分達の全敗にユーシスは信じられない表情をし、エマは不安そうな表情で呟き、サラは信じられない表情で声を上げ、アンゼリカは疲れた表情で呟き、フィーの確認に対してクロウは疲れた表情で反論した。

「だから言っただろう?”天賦の才”がある俺相手に”賭け”で挑んだ所で、俺と同じ”天賦の才”がない限り、”絶対に勝てない”ってな。」

「おい、まさかとは思うが運の操作をするオカルトとか使ってイカサマをしているんじゃねぇだろうな?」

「あのね……確かにそういった類の術―――”運勢操作”といった魔術や儀式は聞いた事はあるけど、”運勢操作”なんて間違いなく因果律も関わってくるから相当高度な術の上存在しているかどうかすらも怪しい類の術だし、そもそも”英雄王”と違って霊力(マナ)があんた達”普通の人間”と同レベルのギュランドロス皇帝がそんな高度な術を扱える訳がないし、そんな高度な術を使えば、間違いなく魔女の眷属(アタシ達)が凄まじい霊力(マナ)の動きを感知するわよ。」

自分の全勝に信じられない表情や驚いているアリサ達に対してギュランドロスは不敵な笑みを浮かべて答え、ギュランドロスの全勝に何らかのカラクリがある事を怪しんだアッシュの指摘にセリーヌが呆れた表情で指摘した。



「なるほどの………ヌシもまたシュミットとかいう小僧やリアンヌと同じ、突然変異的な”天才”なのじゃろうな。」

ローゼリアは真剣な表情でギュランドロスを見つめ

「こら、魔女の長!マスターを”天才”という言葉だけで片付けるんじゃねぇですわ!マスターは”天才を遥かに超えた至高たる存在”ですわよ!」

ローゼリアの言葉を聞いてローゼリアを睨んで声を上げたデュバリィの指摘にその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。



「ハハ………”通商会議”の時から貴方は”只者”でない事はわかってはいたが、まさかこんな凄まじい人物とはね………それで話を戻すがヴァイスが1枚だけ”引き分け”に持ち込んだ事でヴァイスに対する興味を更に抱いた貴方はどうしたんだい?」

苦笑しながらギュランドロスを見つめたオリヴァルト皇子は話の続きを促した。

「クク、それは…………―――俺自身が正体を隠してヴァイスの軍に入隊したのさ!」

「ええっ!?」

「こ、国王が正体を隠して敵国の軍に入隊するって………」

「あまりにも非常識過ぎる……」

「というかギュランドロスおじさんみたいな一度会えば絶対に覚えてるようなとても印象深い人が一体どうやって正体を隠したのか気になるわよねぇ♪」

「た、確かに………」

「ああ。ギュランドロスさん程印象深い人はそうはいないと思う。」

オリヴァルト皇子の問いかけに対して堂々と答えたギュランドロスの答えにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セドリックは思わず驚きの声を上げ、エリオットは信じられない表情で、マキアスは疲れた表情でそれぞれ呟き、小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたリィンは苦笑し、ガイウスも静かな表情でレンの言葉に同意した。



「ん?正体を隠した当時の俺の姿を見てみたいなら、見せてやるよ。それは――――――この姿だ!」

レンとリィンの会話を聞いたギュランドロスは懐から仮面を取り出して自身の顔につけ、それを見たその場にいる全員は石化したかのように固まった。

「………おい。まさかとは思うがその姿が”当時正体を隠してヴァイスの軍に入隊した時の姿”なのか?」

我に返ったリウイはその場にいる全員を代表するかのように突然感じた頭痛を抑えるかのように片手で頭を抱えて疲れた表情でギュランドロスに訊ねた。

「おうよ!その名は”仮面の紳士”ランドロス・サーキュリー………それが正体を隠したもう一人のオレ様だ!」

そして堂々と答えたギュランドロスの答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「い、いやいやいや……っ!?しょ、正体を隠すも何も……」

「完全にバレバレの姿じゃねぇか!?」

「しかも名前すら”偽名すらにならない”モロバレな名前だよねぇ。」

「というかその姿のどこが”紳士”なのよ。」

「よくヴァイスさん達はその姿での入隊を認めましたよね……」

「うふふ、ギュランドロスおじさんの性格を考えると多分ギュランドロスおじさんが押しかけて居座ったから、ヴァイスお兄さん達もギュランドロスおじさんの意図を探る為に認めざるをえなかったのじゃないかしら♪」

我に返ったリィンとクロウは疲れた表情で、アンゼリカは苦笑しながら、セリーヌはジト目でそれぞれギュランドロスに突っ込み、苦笑しているプリネの疑問にレンがからかいの表情を浮かべて推測を答えた。



「フム、仮面か……”漂泊の仮面の天才音楽家”……フッ、仮面で正体を隠すという方法、機会があれば私も使わせてもらおうじゃないか!」

「あ、兄上……」

「お兄様……幾ら何でも”おふざけ”が過ぎると思いますわよ。」

「このスチャラカ皇子は……」

「ハア……それを知った”怪盗紳士”とコイツが頭が痛くなるような事を繰り広げる光景が目に浮かぶわ……」

一方真剣な表情で考え込んだ後静かな笑みを浮かべたオリヴァルト皇子の発言にその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セドリックとアルフィンは呆れ、アガットは真剣な表情でオリヴァルト皇子を睨み、シェラザードは呆れた表情で溜息を吐き

「ほう。ならばその時は”正体を暴く時に、顔を隠している仮面を殴って仮面を壊すと共に気絶させる方法”が一番効率的だろうな。」

「あ、兄上……幾ら何でも殿下の顔を殴るのはさすがに問題があると思われるのですが……」

「ゴメンなさい、さすがに顔を殴るのは勘弁してください。」

顔に青筋を立てて呟いたミュラーの提案を聞いたクルトは冷や汗をかき、疲れた表情でミュラーに謝罪するオリヴァルト皇子の様子を見たその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「ハア………そもそも、家臣達はお前のその非常識な行動を認めた挙句、”王”がいない状態でよく国内が混乱しなかった――――――いや、ルイーネ王妃を始めとした”三銃士”がお前からヴァイスの軍に入隊する話を予めされて、それを承諾したからこそ、お前はヴァイスの軍に入隊できたの。」

呆れた表情で溜息を吐いて疑問を口にしかけたリウイだったがすぐに答えに気づいて真剣な表情でギュランドロスを見つめ

「クク、さすがリウイだな!三銃士―――特にルイーネがいてくれるから、俺がいなくても国は成り立てる。王妃らしく影の支配者という奴だ。」

「ルイーネさんが………」

(……メサイアから聞いた通り、ルイーネ皇妃は政治に関する手腕は相当長けているようだな。)

(ああ……王の不在の状況でありながら、国を成り立たせる等並大抵の事ではないからな。)

ギュランドロスの話を聞いたガイウスが驚いている中ラウラとユーシスは小声でルイーネについて話し合っていた。



「フフ、それで前代未聞な出来事を実行したギュランドロス陛下の真意は気にはなりますが、恐らくそれを知っていいのはギュランドロス陛下にそこまでさせたヴァイスハイト陛下とギュランドロス陛下の真意を理解して陰ながら支えていたルイーネ皇妃陛下ですから、それについてはそれ以上私達に語る必要はありませんし、そもそもギュランドロス陛下自身それ以上語るつもりもないでしょう?」

「ほう、わかっているじゃねぇか。そういう訳でヴァイスの軍から離れる”時期”が来た俺はヴァイスの軍から離れ……そしてヴァイスと後腐れのない戦いをして俺達は負けた。敗戦後俺はこの世で初めてできた最強にして最高の好敵手たるヴァイスにユン・ガソルを委ねた後は、メルキアを愛する奴がメルキア皇帝に即位するまで手を貸し………即位後は俺は”世界にはばたく為”――――――ラウルバーシュ大陸全土を舞台にした世界の先駆者となる為にヴァイスの許可をもらってルイーネ達”三銃士”を連れて旅に出た。その旅の最中にどこに繋がっているかわからない転位門を偶然見つけて、ノルドに転位したって訳だ。」

「それがギュランドロスさん達がノルドに来る前の出来事だったのか……」

「な、何だかおとぎ話みたいな話だったよね……」

「ああ……だけど、その目的が何故ゼムリア大陸の時代を変える事になったのでしょうか?」

苦笑しているミュゼの言葉を聞いたギュランドロスはニヤリと笑った後その後について語り、それを聞いたガイウスは呆けた表情で呟き、戸惑いの表情で呟いたトワの感想に頷いたアンゼリカは真剣な表情でギュランドロスに訊ねた。



「ふふふふふ……っ。よくぞ聞いてくれた。かつてヴァイスから聞いた事がある俺達にとって異世界であるゼムリア大陸――――――それも”影の国”とやらでヴァイス達と共に肩を並べて戦った者達のほとんどがいる時代に転位した事を知った俺は奴の異世界の”戦友”達の世界はどのような世界を知る為に旅をしていたのだが……その最中に偶然転生を果たしたヴァイスとヴァイスにとってはリセルとも並ぶ大切な存在のアルと出会った時に、俺は新たなる”運命”を感じたのさ。かつては叶う事はないと思っていた夢――――――ヴァイスと俺が共に行けば、未来は自由に作れるという夢をな。」

「……”誰よりも皇族としての自覚が強い”ヴァイスには祖国を離れるという選択肢は決して選ばないだろうな。」

アンゼリカの質問に不敵な笑みを浮かべて答えたギュランドロスの話を聞いたリウイは静かな表情で指摘した。

「ああ……だが、俺とヴァイスは新たなる世界で再び出会った――――――新たなる生を受けた事で”メルキア皇族という枷”が外れたヴァイスとな。――――――だからこそ、俺は感じたのさ。このゼムリア大陸でヴァイスと三銃士、そして俺が揃えば、どんな”壁”でもぶち破ることができるまさに最強、最高、無敵の組み合わせが揃った事はゼムリア大陸が俺達に”時代を動かせ”という証拠!そして俺は俺達とヴァイスを再び出会わせたゼムリア大陸に感謝し、その感謝の”礼”としてお望み通りラウルバーシュ大陸ではなくこのゼムリア大陸全土を舞台にした”世界の先駆者”になる事を決めたって事よっ!!」

リウイの指摘に対して頷いたギュランドロスは全身に凄まじい覇気を纏って不敵な笑みを浮かべて宣言し

「という事はその話が”六銃士”誕生の秘話という事ね………」

「今までいろんな奴と出会ってきたが、ここまで無茶苦茶で非常識な野郎は初めてだぜ……」

「う、うーん……言っている事は結局は”世界征服”なのに、不思議とヴァイスさんやギュランドロス皇帝達に対して”嫌悪”や”警戒”と言った”負”の感情が芽生えませんよね……」

ギュランドロスの宣言に対してその場にいる多くの者達が驚いたり口をパクパクさせている中、シェラザードは静かな表情で呟き、アガットは疲れた表情を浮かべ、アネラスは困惑していた。



「ま、そういう訳で俺達はクロスベルで新たな”国”を建国し、”俺達にとって新たな祖国”となったクロスベルを世界にはばたかせる為の”足掛かり”としてカルバードを食い破り、そしてエレボニアを食い破ろうって事よ。」

「ハハ………この戦争、まさかクロスベルにとっては”世界にはばたく為の単なる足掛かり”――――――つまりは、”カルバードとエレボニアを踏み台とする戦争”だったなんて、冗談抜きで貴方達と比べるとあの宰相殿が小さく見えてくるよ……」

「……………」

(セドリック………)

ギュランドロスの答えを聞いたオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、複雑そうな表情で黙り込んでいるセドリックをアルフィンは辛そうな表情で見つめていた。

「――――――”紅き翼”だったか?”学生如き”のお前達がこの戦争に横からしゃしゃり出て何を成し遂げるかには興味はあるが……これだけは覚えておきな。――――――テメェら”如き”が俺達”六銃士”をどうにかできると思って挑んだ時は”身の程”を知らせてやるよ。」

「ひ……っ!?」

「ぅ………ぁ……っ!?」

「今までに感じた事のない凄まじい”猛りの風”………!まさか、ギュランドロスさんがこれ程の凄まじい”風”を纏っていたなんて……!?」

「――――――気をしっかり持ちなさい!でなければ、”落ちる”わよ!?」

「この凄まじい闘気……”本気”を出した団長すらも比べ物にならないくらい圧倒的過ぎる………!」

そして獰猛な笑みを浮かべたギュランドロスに視線を向けられたアリサ達がそれぞれ巨大な獣に喰い殺されるかのような幻覚を見た事で身体が本能的に”勝てない”と判断して無意識に身体を震わせている中エリオットは悲鳴を上げ、アリサは呻き声を上げ、ガイウスは苦しそうな表情を浮かべてギュランドロスを見つめ、サラは厳しい表情でアリサ達を叱咤し、アリサ達同様ギュランドロスがさらけ出す凄まじいプレッシャーに圧されたフィーは表情を歪めてギュランドロスを見つめ

「これがクロスベル双皇帝の片翼の”覇王の風格”ですか………」

「ギュランドロス陛下が好敵手と認定しているヴァイスハイト陛下も間違いなくギュランドロス陛下と同じ”器”の持ち主なのでしょうね……」

「し、信じられませんわ……まさか”人”の身でありながらマスターに届くかもしれない”気”をさらけ出すなんて……」

「ふふっ、ヴァイスラント決起軍とメンフィル・クロスベル連合との協力関係を結ぶ事を含めた様々な交渉の時の相手は”覇王の風格”を抑えたヴァイスハイト陛下とルイーネ皇妃陛下で本当に助かりましたわ。あれ程の凄まじい覇気を直接向けられれば、オーレリア将軍はともかく私ではその場で意識を保つ事すら厳しかったでしょうね。」

その様子を見守っていたオリエは重々しい口調で呟き、クルトは複雑そうな表情で推測し、デュバリィは信じられない表情でギュランドロスを見つめ、ミュゼは苦笑していた。



「うふふ、”六銃士”によって建国されたクロスベルと組んだ事はメンフィルにとって”あらゆる意味”でよかったと証明されたわね。」

「そうね………少なくても二人が存命中の間、クロスベルはかつて小国から帝国へと膨れ上がったメンフィルのように繁栄し、ゼムリア大陸史上最大の国家へと成長するでしょうね……」

「………まあ、問題は二人の跡を継ぐ者達がどのような存在になるかだろうな。」

意味ありげな笑みを浮かべたレンの推測にプリネは複雑そうな表情で同意し、リウイは静かな表情で呟いた。



「―――――そこまでじゃ!ギュランドロス王よ、この者達はまだ成人もしていない上この場には病み上がりの者もおる。そのような者達に対して”覇王の風格”をぶつける等、幾ら何でも”真なる王者”を名乗る者として相応しくないのではないか?」

その時ローゼリアが制止の声を上げて真剣な表情でギュランドロスを見つめて指摘し

「おっと、俺としたことが懐かしい話を出されてつい”それなりに力が入っちまったぜ。”ビビらせちまって悪かったな、ガキ共。だぁっはっはっはっ!!」

「い、今ので”それなりに”って……」

「さっきの化物じみた闘気ですら、”本気”じゃなかったのかよ……」

「よくヴァイスさんはあんな化物相手に勝てた―――いえ、今のヴァイスさん自身も”影の国”の時とは比べ物にならないくらいの”化物”に成長しているのでしょうね……」

ローゼリアの指摘を受けて覇気を収めた後アリサ達に軽く謝罪して豪快に笑ったギュランドロスの言葉を聞いたアネラスは不安そうな表情をし、アガットは目を細めてギュランドロスを睨み、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた後表情を引き締めた。



「ま、今までの俺の話を聞けばもうわかると思うが、”鉄血”達は俺達が作る”ゼムリア大陸の新たなる時代”には邪魔な連中だから全員纏めてぶった斬る事は”決定事項”なのさ。」

「……………」

獰猛な笑みを浮かべたギュランドロスに対して何を言えばいいかわからないアリサ達は黙り込み

「そんじゃ、俺は先にレヴォリューションに帰っているぜ。ちなみにもし、今後俺達の前に現れて俺達のしようとする事を邪魔しても”身の程は知らせてやる”が五体満足で帰してやるから安心して全力で挑んできな。何せお前達はまだ”ガキ”なんだからな。”悪戯”をするのは”ガキの特権”で、その”悪戯をしたガキ”の”躾”をするのが俺達”大人の役割”だからな!だぁっはっはっはっ!!」

ギュランドロスはアリサ達を見回して自身の意思を伝えた後豪快に笑いながらその場から去って行った――――――

 
 

 
後書き
という訳で、Ⅶ組が以前のクレアのようにバカ王に呑まれかけましたwwなお、今回のBGMは魔導攻殻のOPのフルVerだと思ってください♪ちなみに後2話か3話でエリンの里での話は終わり、いよいよリィン達灰獅子隊の活躍の話に移ります。ただリィン達の活躍となる第三部はほぼ完全オリジナルになる為、もしかしたら執筆スピードは今よりも更に遅れるかもしれませんが、それはご了承ください(汗)



それとコンキスタですが、アペンド入れていたら1週目から毎度おなじみのアペンドキャラであるリリィが仲間になるのは驚きましたが、その分性能はぶっちゃけ微妙ですね……相変わらずの全ての装備可能並びに序盤では貴重な魅了要員である事なのが強みとはいえ、肝心の攻撃力が低けりゃ意味がないですし……しかも防御も紙だから油断したらすぐに戦闘不能になるし……正直、同じ魅了要員ならユニークユニットの睡魔族の方が役に立つと思っているのは私の気のせいなんでしょうかねぇ?

それとそのリリィですが、今までの作品でもほとんど初期である子供の姿ばかりで、最後の姿である大人の姿のリリィはVERITA以外で見かけないのは何故なんでしょうかね?もしかして人気がないのだろうか…… 
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