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戦国異伝供書

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第九十四話 負け戦を見据えその十

「必ずな、だがな」
「だが?」
「だがというと」
「何かありますか」
「大内家はそれでよいが」
 それでもというのだ。
「問題はな」
「尼子家ですな」
「あの家ですな」
「もう一方の」
「左様、この戦の後にな」
 安芸に帰った後でというのだ。
「二つ程仕掛けるか」
「尼子家に対して」
「謀を仕掛ける」
「そうされますか」
「うむ、あのままではな」
 尼子家はというのだ。
「手がつけられなくなる恐れがある」
「だからこそですか」
「仕掛けられて」
「そして力を弱められますか」
「そうされますか」
「そして大内家も尼子家も強いが」
 それでもというのだ。
「ある程度でな」
「いてもらう」
「そうしてもらいますか」
「うむ、そうなれば戦の後我等はな」
 毛利家はというのだ。
「動きやすい、それで戦が終わればな」
「尼子家に仕掛けれる」
「その用意にも入られる」
「そうされますか」
「是非な」
 まさにというのだ。
「そうする、その為にもな」
「今は生きる」
「そうされますな」
「負け戦になろうとも」
「潔く死ぬのも武士というが」
 武士のこの考えも述べた、だが元就はそれを先に置きそうして語るのだった。そこが本題であるからだ。
「しかしな」
「生きるのも武士ですな」
「それもまた」
「だからですな」
「この度は」
「生きるべき時と死ぬべき時がある」
 その双方がというのだ。
「そして今はな」
「生きる時ですな」
「負け戦になろうとも」
「それでもですな」
「そうじゃ、皆生きるべき時じゃ」 
 まさにその時だというのだ。
「わしは毛利家を山陽と山陰の覇者にするつもりじゃ」
「それで、ですな」
「だからこそですな」
「ここは、ですな」
「生きるべきですな」
「そうじゃ、それ故にじゃ」
 まさにというのだ。
「わしもお主達もな」
「この戦では死なずに」
「生きてですな」
「毛利家を大きくする」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だから生きる、ではよいな」
「はい、必ずです」
「我等も死にませぬ」
「そして兵達もです」
「死なせぬ様にします」
「一人でも多く死なせぬ様にして」
 そしてとだ、元就はさらに話した。 
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