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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga5トーマとナカジマ家とデバイスと・・・~Meet~

†††Sideトーマ†††

俺は月に1度、普段過ごしてる養護施設からスバルさん――スゥちゃんの家族が住むナカジマ家に遊びに行って、元気な姿を見せに行くようにしてる。それがナカジマ家のみんなとの約束だからだ。俺としてもモニター越しでみんなと話すだけじゃなくて、直接逢いたいって気持ちもあるから嬉しいけど、ちょっと遠いんだよな。

「ふぅ。到着っと」

レールウェイの車両からホームに降り立って、「スゥちゃんに連絡しとかないと」携帯端末をポケットから取り出してメール画面を開く。そして「ステーションのホームに到着、っと」メッセージを書いて送信。するとすぐに受信メロディが鳴った。

――わかったー! ロータリーで待ってて。もう少しで着くから――

返信内容はそんな感じ。端末をポケットに戻して、リュックを背負ってからロータリーに向かう。一般車が次々と流れていくのを見送っていると、パッパッ!と軽いクラクションが鳴った。そっちに向けば、ある1台のワゴンタイプの車が俺の前にゆっくりと停車した。

「お待たせ、トーマ!」

「ほら、乗って乗って!」

「行くっスよ!」

助手席の窓と後部のスライドドアが開いて、助手席に座る「ギン姉!」と、2列目座席に座る「スゥちゃん!」と、3列目座席から顔を覗かせてる「ウェンディ姉!」が声を掛けてくれた。俺は「あ、うん!」頷いて、スゥちゃんとチンク姉が座る2列目座席に乗車する。

「はーい、それじゃあ出発しまーす!」

運転席に座るのはナカジマ家のお母さんであるクイントさん。助手席のギン姉が車の周りの安全を確認して、ゆっくりと車を走らせ始めた。その間にみんなと「久しぶり!」って挨拶を交わすんだけど・・・。

「あれ? クイントさん、どこに向かってます?」

ナカジマ邸は東部にあるから、今通り過ぎた道を右折してハイウェイに乗らないとダメなんだけど・・・。そんな疑問を口にしたら、「そういや言ってなかったか?」って首を傾げる俺の頭をわしわし撫でたのは、3列目座席に座るノーヴェ姉だ。

「今日はちょっと特別」

「そうっスよ! 少し遠出するっスよ♪」

背もたれからぴょこっと顔を出して微笑むのはディエチ姉、満面の笑顔なのはウェンディ姉。俺が後ろに振り向いて、「え? そうなの? どこに?」って新しく生まれた疑問を口にした。

「それは着いてからのお楽しみだ、トーマ」

「あ、秘密にしておくの? えっと、じゃあ秘密で♪」

スゥちゃんを挟んだところに座るチンク姉がそう言うと、助手席のギン姉が2列目座席に振り向いてそう言った。遠出することは俺としても問題ないけど、「ゲンヤさんは・・・?」って、ナカジマ家のお父さんのゲンヤさんはどうするのか聞いてみた。

「地上本部から直接向かうことになってるから、ゲンヤさんとは現地集合ね♪」

「だから安心して、トーマ。ちゃんとみんな揃うから」

「あ、うん、判った」

普通の家族のように接してくれるスゥちゃん達ナカジマ家のみんなには本当に感謝してる。以前、ナカジマ家の養子にならないか?って提案されて、返答はまだ待ってもらってるんだけど、でもすごく嬉しかった。そんなわけで、まだ正式な家族ってわけじゃないけど、家族のように一緒に過ごせることを大切に思ってる俺は、一緒に過ごすときに誰かが欠けてるとヘコむ。

「トーマ、トーマ! 次げ――えふん、目的地に着くまでお腹空くっスからね! お菓子をいっぱい買ってきたんスよ!」

「どれ食べる? あたしのおすすめは――」

ウェンディ姉とディエチ姉にいろいろとお菓子を勧められて、みんなで美味しく食べながら談笑。でもさすがに、あーん、は恥ずかしいからやめてほしかったなぁスゥちゃん。ウェンディ姉も真似しだすからさ。

「見えてきたぞ、トーマ」

「最初の目的地はあそこね」

チンク姉とギン姉に促されるままに窓から指が差されてる方を見てみれば、「次元港!?」だった。遠出だから他地区に行くのかな?って軽い気持ちだったけど、まさかの世界跨ぎに心底驚いた。

「行く先は搭乗手続きの時まで秘密ってことで」

そうして車は次元港の立体駐車場内へ。長期停車する用の有料ロックのあるスペースで停めた後、スゥちゃん達は車最後部のラゲッジスペースからスポーツバッグやショルダーバッグやリュックサックなどを持ち出した。

「トーマ、お前のリュックだ」

「ありがとう、ノーヴェ姉」

ノーヴェ姉から俺のリュックを受け取って背負って、「はーい。搭乗時間まで余裕はあるけど、ささっと受付に向かうよ~!」そう言って歩き出すクイントさんに俺やスゥちゃん達は「はーい!」って返事して続く。

「お! 来たな、待ってたぜ」

ターミナルの搭乗受付カウンターのところに到着すると、ゲンヤさんが小さく手を挙げて出迎えてくれた。クイントさんが真っ先にゲンヤさんの元に向かって、「お待たせ、ゲンヤさん」笑顔で応えた。続いてスゥちゃん達も挨拶。

「トーマもよく来てくれたな」

「はいっ、お久しぶりです!」

わしゃわしゃと頭を撫でてくれるゲンヤさんに、もう朧げになり始めた父さんの面影を重ねる。それがなんか気恥ずかしいけど、胸が温かくなる。そんなゲンヤさんと一緒に受付カウンターへ。クイントさんが代表して搭乗手続きをしてくれてるんだけど・・・。

「え? 本局行き!?」

クイントさんと受付さんの会話を、スゥちゃん達と話しながら聞いていたんだけど、まさかの行き先が本局。驚いてる俺の様子にみんながニヤニヤ。確かに驚いたよ、本局なんてまず行く理由もないから。

「そうなんだよぉ、トーマ。というわけで、今日から3日間は本局で遊びます!」

「本局は管理局の本部だが、局とは関係ない一般人の住む住居区画があるし、生活に必要な商業区画はもちろんのこと、遊園地・動物園・博物館と言った娯楽施設も完備しているから、普通に楽しめる場所でもある」

スゥちゃんとチンク姉が胸を張ってそう言った。チンク姉は元は本局で働いていたって話だし、とても詳しそうだ。俺も一度は本局に行ってみたいって思ってたし、その夢が叶うってことでちょっと・・・というか、かなり興奮してる。

「その前に、ちょっと本局の技術部に寄り道することになるけど」

「半日だけ時間をもらうことになるっス。その間、トーマはパパりんとどっかで時間を潰しておいてくださいっス」

「そういうわけだ、坊主。こんなおっさんと2人で悪いが付き合ってくれ」

「や、そんな! 全然! 了解っす!」

搭乗手続きを終えて、俺たちは無事に本局往きの船に搭乗することが出来た。局員とその家族っていうことで料金はかなり割安になって、俺が払ったわけじゃないけどすげぇ得だな~って思った。

「それじゃあまずは私たちの用事を済ませてからね。トーマはナカジマ家の一員として扱うようにしてもらってるから、安心して付いて来てね」

「はいっ」

本局に着いてすぐ、クイントさん達に付いてバスを使って訪れたのは大きなビル。エントランスからは局員の青制服を着た人たちが出入りしてる。ということはまさか「ここが本部!」ってことになるんだ。

「そ。さ、入ろう。早く用事を済ますことが出来れば、それだけ早く遊びに行けるし」

俺はみんなの後に付いてビルに入って、クイントさん達がカウンターに座る局員さんに軽い挨拶をするのを見て、俺もなんかしないとって思ってお辞儀した。すると受付さんもお辞儀してくれて、なんか嬉しくなった。
それからエレベーターに乗って、長い廊下を突き進んで突き当りに到着。ドアの側にはZeroth Engineering Department――第零技術部って彫られた、翼を広げた鳥型のプレートがある。

「クイントです。ナカジマ家一同、来ました」

クイントさんがドア横の操作キーのようなパネルに手を振れてって告げると、『はーい、お待ちしてましたー!』って元気な女性の声でそんな返答が。遅れてスライドドアが両側に開いて、ドアの向こうで出迎えてくれていた女性が「いらっしゃい♪」って、すごく綺麗な笑顔を向けてくれた。

「お待たせ、すずかちゃん。今日もよろしくお願いします!」

そう言ってクイントさんが小さく頭を下げると、スゥちゃん達も「お願いします!」って頭を下げた。するとゲンヤさんも「よろしく頼むぜ、月村嬢ちゃん」って頭を下げたから、俺は「えーっと・・・」若干おろおろ。

「はい、お任せを。君はトーマ君だよね? 本局第零技術部主任、月村すずかです」

「あ、トーマ・アヴェニールです!」

「うん。みんなからトーマ君のことは聞いてるよ。みんなからは月村技術官とか主任とかって呼ばれてるけど、親しい人だったり仲良くしたいな~って思う人には、すずか、すずかさん、って呼んでもらってるの。よかったらトーマ君もそう呼んでね。えっと、それで少しの間、クイントさん達を預かるから、ナカジマ三佐と一緒に待っていてくれるかな?」

「あ、はい、えっと・・・すずかさん」

「うん♪」

すずかさんのことはスゥちゃん達から何度か話を聞いてる。すごい技術者さんで、あのルシルさんのデバイスを造ったって話だ。そんなすずかさんは「それじゃあクイントさん達はこちらへ。三佐とトーマ君はここで待っていてください」って部屋の奥に向かって行って、クイントさん達も「いってきます!」って俺とゲンヤさんに言ってから続いた。

「悪いな、トーマ。クイント達は定期的に検診を受けなきゃならなくてな」

「あ、いえ。・・・あれですよね、スゥちゃん達は・・・その・・・」

「ああ。アイツらはみんなサイボーグでな。機械の体なんだよ。だからって普通の人とは何ら変わらねぇ」

スゥちゃん達は何年か前にミッドチルダを襲った大事件の首謀者によって生み出されたって、スゥちゃんたち本人から聞いた。それにクイントさんも、その事件でサイボーグに改造されたって。俺も俺で奇妙な人生を歩んでるけど、スゥちゃん達も大概だ。

「失礼します」

そんな声と一緒に置くのスライドドアが開くと、1人の女性がキャスター付きのワゴンを押して入ってきた。ゲンヤさんはその人に「おう。セッテ、邪魔してるぜ」って軽く手を挙げて挨拶した。

「お久しぶりです、ナカジマ三佐。待ち時間の間、私が接待することになりました。大したことは出来ませんが、寛いでいってください」

セッテさんって人がワゴンからガラスのコップを2つ、俺とゲンヤさんの前に置いた。さらに俺のコップには色と匂いでオレンジジュース、ゲンヤさんのコップは麦茶っぽいのが注がれた。

「ありがとな」

「ありがとうございます」

「いえ。ケーキもすずかが用意してくれていますので、どうぞ召し上がってください」

続いて出されたのはショートケーキ。配膳を終えたセッテさんに俺とゲンヤさんは「いただきます」そう挨拶してからフォークを手に取っていただくんだけど・・・。

(み、見られてる・・・)

ワゴンの側で無言で佇んでるセッテさんの視線をひしひしと感じて、美味しいはずのケーキの味があんまりしない。何か喋った方が良いのかな?って考えた俺は、「俺、トーマ・アヴェニールっていいます」

「はい。・・・あ、自己紹介はまだでしたか。すみません、チンク姉様やウェンディから写真を見せてもらっていたので、自己紹介をした気になっていました。では改めて。第零技術部所属、セッテ・スカリエッティ一等空尉です」

「じゃあ俺も改めて。トーマ・アヴェニールです」

それからジュースのお代わりを貰いながら待つこと30分くらい。奥のスライドドアが開いて「お待たせー!」元気な声でスゥちゃんと、「父さん、トーマ。ただいま」落ち着いた声でギン姉が戻ってきた。

「ただいま戻りました」

「ただいまです」

「ただいまー」

「ただいまっス~!」

「お待たせ~。母子ともに健康体で異常なし♪」

続けてチンク姉、ディエチ姉、ノーヴェ姉、ウェンディ姉、クイントさんも戻ってきた。検査で異常なしって聞いたゲンヤさんは「そうかい。そいつは良い知らせだ」って安堵して、俺も「良かったです!」って声を掛けた。俺とゲンヤさんはソファの隅っこに寄って、空いたところにみんなが座った。

「クイント二尉、ギンガ姉様、チンク姉様、スバル、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディ。あなた達はどうしますか?」」

セッテさんにそう聞かれたみんなはケーキ食べるしジュース飲むしと返事をして、それを聞いたセッテさんは「判りました。少し待っていてください」ワゴンを押して奥のドアの中に戻っていった。

「トーマ。セッテとは何か話した?」

「それが特に何も・・・。あ、自己紹介はしました。それ以降はまったく」

「許してやってくれ、トーマ。セッテは我われ姉妹の中で一番物静かだからな。こうして接待するだけでも大きな成長だ」

チンク姉がそこまで言ったところで、「みんな、お疲れさまでしたー!」すずかさんがやって来た。側には紫色のロングヘアの女の人と、ちょっと暗い金色のロングヘアの女の人が居る。俺の視線に気付いたのか、その2人は俺の方を見た。

「はじめまして、トーマさん。シスターズ長女、ウーノです」

「私は二女のドゥーエ。ウーノ姉様と一緒に、主任の補佐をしているわ」

「あ、はい、はじめまして! トーマ・アヴェニールです!」

ソファから立ち上がって一礼すると、ドゥーエさんが「ふーん。良い子じゃない。ルシル君には無い男の子特有のヤンチャっぽさを感じるわ」って小さく笑った。

「いつも妹たち、特にウェンディが迷惑をかけると思うけど、この子はこの子で根は良い子だから、これからも仲良くしてあげてね」

「あ、いえ。いつも遊んでくれて、俺としては楽しい姉さんって感じで・・・」

ウェンディ姉の底なしの元気にはいつも助けられてる。なんかもう姉というか仲のいい親友みたいな感じかも。俺がそう言うとセッテさんは「そうですか。今後とも妹たちをよろしくお願いします」って微笑んだ。

「ケーキとジュース、持ってきました」

「ありがとう、セッテさん。ウーノさん、ドゥーエさん、配膳を手伝ってくれる?」

「はい」「ええ」

「トーマ。ジュースのお代わりはどうですか?」

「あ、いただきます。ありがとうございます、セッテさん」

セッテさんにジュースを注いでもらって、さっそくケーキを美味しそうに食べるスゥちゃん達を眺める。養子縁組を受け入れて本当の家族になったら、きっとすごく楽しいんだろうな。俺も、もうあんまし意地張ることなく受け入れてもいいかも、とは思ってるんだけど・・・。朧げになり始めてるヴァイゼンの鉱山の街の暮らし、家族や友達の記憶がフッと脳裏に浮かんだ。

(以前、ルシルさんにも相談したけど、幸せを受け入れて過去を忘れるのは正しいのか、今でも迷ってる・・・)

やっぱ何かしらのキッカケが欲しいかも。あの街を襲ったのはおそらくフッケバイン一家って呼ばれる組織だって、ギン姉伝手で聞いたルシルさんからの情報だ。いろんな世界を渡り歩いて人殺しや強盗、たくさんの犯罪を起こしてるっていう。あの街を襲った理由とか、問い質したいことは山ほどあって。でもそのあとは? そいつらが捕まった後、裁かれた後、俺はそれでも過去を忘れるのが怖いって思うのかな・・・。

「あ、そうだ、スバル。例のアレ、もう完成してるけどどうする?」

「本当ですか!? あーどうしよう!」

すずかさんにそう聞かれたスゥちゃんが文字通り頭を抱えて悩みだした。事情を知らない俺は「どうしたの、スゥちゃん?」って聞いてみた。するとノーヴェ姉が「いいじゃねぇか。トーマだってもうガキじゃねぇんだし」って、まさかの俺関係を示すことを言った。

「そうだな。別に戦闘用というわけじゃないんだ」

「せっかくすずかっちが作ってくれたんスから、埋もれさせておくのはもったいないっスよ」

「いつまでも携帯端末っていうのもね。別に悪いってわけじゃないけど」

「私も、もうこの場で渡しちゃってもいいと思うわよ、スバル」

「うーん、ギン姉たちがそう言うなら・・・。すずかさん、お願い出来ますか?」

「うんっ。すぐに持ってくるから!」

スゥちゃんにお願いされたすずかさんが奥へと引っ込んでいった。戻ってくるまでの間、俺は「あの、なんか俺にくれるの?」って、話の流れからしてそうなんじゃないかって思ったからストレートに聞いてみた。

「えっと、うん。ちょっとね」

歯切れが悪いスゥちゃん。なら俺は変に追撃せずに、すずかさんが戻ってくるのを待った。すずかさんは2分としないで戻ってきて、両手でしっかりと持つリボンが掛けられた小さな箱をスゥちゃんに「はい、スバル」って渡した。

「ありがとうございます。それじゃあ・・・こほん。トーマに、あたし達からプレゼント」

スゥちゃんは“あたし達”って言ってギン姉たちを見たから、俺は「ありがとう!」ギン姉たちを順繰りに見回しながらお礼を言ったから、「開けてもいい?」と聞く。スゥちゃん達が「どうぞ!」って言ってくれたから、そっとテーブルに置いて、リボンを解いてから蓋を開ける。

「コレってもしかして、デバイス・・・?」

ネックレスタイプのようなソレを手に取ってみようとしたら、「うわっ!?」いきなりソレがふわっと浮かび上がって、首を掛ける紐にあたるところを俺に向かって伸ばしてきた。

≪はじめまして。私は、あなたのデバイスとして生み出されました≫

「トーマ。その子に名前を付けてあげて」

「えっ、名前? 名前かぁ~~・・・うーん・・・」

俺だけのデバイスだってことだし、個人的な考えの名前でもいいわけだ。と言ってもすぐには思い浮かんでこないけど。

「トーマ。悩んでいるならそうね・・・、たとえば好きな本の登場キャラクターとかにしてみれば?」

「本のキャラクター・・・」

クイントさんから貰ったヒントで、すぐに思い浮かんだのは「スティード・・・」だった。養護施設でよく読んだり、他の小さな子に読み聞かせたりしたある物語。悪いことばかりする動物たちを、主人公と相棒犬スティードで懲らしめて改心させるっていうやつだ。

「スティードでお願いします、すずかさん」

「スティードね、すごくいい名前だと思う。それじゃあ設定を始めようか」

すずかさんから名前とかの設定の仕方を聞いた俺は、「マスター認証」と告げた。

「トーマ・アヴェニール。デバイスに固有名称を登録。・・・お前の名前は、スティード、だ」

≪マスター登録、トーマ・アヴェニール・・・完了。デバイス名称登録、スティード・・・完了。こんにちは、トーマ。私はスティード。トーマ、あなたのデバイスです≫

「おう! これからよろしくな、スティード!」

≪はい。よろしくお願いします≫

本局へ来られただけでもすごいことなのに、まさか俺だけのデバイスまで貰えるなんて思わなかった。俺は胸の内に広がる最大限の「ありがとう!」をみんなに伝えた。 
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