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レーヴァティン

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第百六十話 伊勢の神託その七

「このおうどんも」
「いい味だな」
「あたし起きた世界も生まれはね」
「確か東京だな」
「そっちでね」
 それでというのだ。
「麺は基本お蕎麦なんだよ」
「江戸からの伝統だな」
「そうさ、そのおつゆはね」
「黒いな」
「そうそう墨汁みたいにね」
 桜子は笑ってこうも言った。
「真っ黒でね」
「味もな」
「かなり辛いよ」
「上方のものと比べるとな」
「そうさ、それでこのおうどんもね」
 伊勢うどんのそれもというのだ。
「おつゆは黒いけれどね」
「味は違うな」
「江戸のそばつゆとはね」
「造り方が違うからな」
「そうそう、あっちはね」
 江戸のそばつゆはとだ、桜子は話した。
「おろし大根のお汁にね」
「醤油を入れたものだな」
「少なくともざるやつゆだとね」
「そちらだな」
「それで汁そばのはね」
 温かいそれの場合はというと。
「昆布を入れていなくてね」
「やはり醤油が辛いな」
「それでかなり辛いけれど」
「こちらのものはな」
「昆布を使っていて」
「椎茸も入れている」
「その黒さが大きいね」
 桜子はその太いつゆで黒く染まっている麺を食べつつ話した。
「やっぱり」
「そうだ、そして醤油の辛さもな」
「江戸のやつ程じゃないね」
「だからこの黒さでもな」
「思ったより辛くないね」
「そして美味い」
「そうだね」
 そのうどんを食べつつ英雄に笑って応えた。
「本当に」
「これが伊勢うどんの味だ」
「いいものだね、それじゃあね」
「まずはだな」
「これ食って」
 そしてとだ、桜子はさらに言った。
「すき焼きも海老もね」
「食っていく」
「いいね、まさに酒池肉林だよ」
「美酒美食でだな」
「本当にね」
 桜子は今度は酒を飲んで言った。
「楽しいよ」
「今からだな」
「実にね」
 そうだというのだ。
「本当にね」
「そうだな、では俺もだ」
「飲んでいくね」
「こうしてな」 
 英雄は自分も一口飲んで応えた。
「飲む、存分にな」
「美味しいお酒とね」
「美味いものをな」
「まさに酒池肉林だね」
「俺は女も入る酒池肉林も好きだが」
 俗に言われる酒池肉林もというのだ。
「しかしだ」
「今はだね」
「神々の場所でそれはな」
 流石にというのだ。 
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