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カワッパ

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第三章

 懐からあるものを出して娘に見せた、それは何かというと。
 胡瓜だった、藩士はそれを見て目を瞠った、まさかここでその様なものを出してくるとは思わなかったからだ。
 そして娘はというと。
 目を大きく見開いてだった、そしてだった。
 どろんと白い煙が出たがそれに包まれ。
 後には河童がいた、渡辺は河童になった娘を見て笑って話した。
「やはりな」
「胡瓜、胡瓜をくれるか」
「やる、しかしな」
 胡瓜をせがむ河童に話した。
「お主言っておくが」
「何だ?」
「正体を出してな」
 河童のそれをというのだ。
「口調も変わってるぞ」
「し、しまった」
「その姿の話を聞いてわかった」
 まさにそれでというのだ。
「お主が何者かな」
「河童だと」
「カワッパであるな」
 その名前はというのだ。
「お主は」
「うむ、河童は河童だが」
 カワッパと呼ばれた彼もそうだと認めた。
「しかしな」
「その呼び名であるな」
「まあ河童と言ってもいい」 
 それでもというのだ。
「しかしな」
「正しい名はであるな」
「カワッパという、しかし煙草をせがんでもか」
「口が尖ってな」
 そしてというのだ。
「その髪型に緑の服で曲がった背中でガニ股でな」
「全部わかったか」
「左様、すぐにな」
「ううむ、鋭いのう」
「鋭いも何も丸わかりではないか」 
 渡辺はカワッパに笑って返した。
「河童の名残が残り過ぎだ」
「だからか」
「そうじゃ、それで胡瓜はやるが」
「それでもか」
「お主何故娘に化ける」
 渡辺は彼にそのことを聞いた。
「一体」
「そのことか」
「左様、それは何故じゃ」
「娘に化けてると煙草をせがんでもな」
「吸わせてもらえるからか」
「だからじゃ」
 それでというのだ。
「化けておったが」
「それだけの理由か」
「駄目か」
「それは姑息であろう」
 どうにもとだ、渡辺はカワッパに答えた。
「やはり吸いたいならな」
「堂々と正体を出してか」
「頼むのが筋じゃ」
「そうなのか」
「左様、だからな」
 渡辺はさらに話した。
「お主はこれからはな」
「この姿のままでか」
「頼むのじゃ、よいな」
「そうすべきか」
「左様、それが筋じゃ」
「左様か、しかし娘の姿でないとな」 
 どうしてもというのだ。 
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