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イマモ

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第二章

「お風呂から出たらな」
「晩ご飯やな」
「天草名物がよおさん出るで」
「あの鶏もやな」
「出るらしいから」
「アルバイト頑張ってお金貯めてここまで来た介があったか」
「そや、ずっと難波のカラオケ屋で頑張ってきたやろ」
 それでというのだ。
「その介をな」
「これから全力で楽しむか」
「そうしよな」
 こう話してだった。
 二人で実際に夕食を楽しみまた風呂に入って旅館での楽しみを満喫した、その次の日は二人共ズボンにシャツそれに帽子というラフな服装で外に出た。 
 そのうえで天草での旅を満喫していた、その中で。
 ある峠に来た時にだ、優子は由紀に笑って話した。
「昨日の話覚えてる?」
「ああ、お風呂の中で話した」
「そう、あれね」 
 何でもないという口調で言った。
「ここに妖怪が出るっていう」
「血だらけの手首とか首とかね」
「そんなの出るってね」
「そんな話したわね」
「出る筈ないわよね」
 優子は由紀に明るく笑って話した。
「そんなの」
「絶対にないわよ」
 由紀も明るく笑って話した。
「そんなのね」
「絶対にね」
「今時ね」
「ここも観光地でね」
 またこのことから話した、今峠に人がいるのは自分達だけだが結構な数の人と行き交っていたので人は多いと思っていた。
 それでだ、こう言うのだった。
「人も多いのに」
「人がいるところに妖怪出るってね」
「ないしね」
 それはというのだ。
「だからね」
「出ないわよね」
「廃墟とか山奥とか村でないと」
「流石にね」
 こうしたことを話していた、だが。
 ここでだ、不意に。
「イマモ!」
「!?」 
 大声が場に響いた、二人がその声に何かと思っていると。
 峠の上から血だらけの手首と首が転がってきた、二人は丁度峠を登っているところだったがそこでだった。
 上から転がってきたのを見て二人共だった。
 血相を変えて踵を返して逃げにかかった、優子は全速で駆け下りつつ自分の隣にいる由紀に対して言った。
「何あれ」
「妖怪でしょ」
「っていうか何で出るのよ」 
 出て来てそれから言うのだった。
「そもそも」
「そう言われても」
 由紀も駆けつつ返答に窮した。
「実際に出て来てるし」
「何も言えん?」
「言えんわ、っていうか言うてる暇かいな」
 由紀は必死に駆けつつ優子に言い返した。
「今は」
「ちゃうな」
「そんなん言うてる暇あったら」
 それこそというのだ。
「逃げる時やろ」
「そやな、どうして逃げる」
「手首も首も転がって来て」
 由紀は後ろを振り向いてその妖怪達の動きを見て言った。
「上がって来る様にはな」
「見えへんな」
「それでや」
 だからだというのだ。
「ここは思い切ってな」
「かわすか」
「そや、そうしてな」
 それでというのだ。 
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