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楽しく働けど

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第一章

                楽しく働けど
 小柳優子は濃い茶色の髪の毛をおかっぱにしている、背は高くきりっとした目にしっかりした口元をしている。背は一六五程だ。髪の毛と目元は父親似である。
 優子には五歳下の妹がいて名前を麻衣という、大きなぱっちりとした目で薄茶色の長く奇麗な髪の毛とあどけないピンクの口元である。背は一五七位で口元は父親のものだ。二人はあまり似ていないが胸の大きさは同じで二人ともかなり形がよくてしかも大きな胸だ。これは母親似である。
 父の大吾は眼鏡をかけていて母の久美子は茶色の髪の毛をポニーテールにしている、父の仕事は自
動車の修理工場の整備員で母は実家のラーメン屋のパートである。
 麻衣は顔立ちだけでなく雰囲気も華やかで小学生の時に大手芸能事務所にスカウトされてジュニアアイドルとして活動していた、だが。
 中三の時に両親にあっさりした口調でこう言った。
「受験だしアイドル引退するね」
「えっ、結構売れてたのにか」
「それでもなの」
「だって私より奇麗で可愛い娘一杯いるし」
 麻衣は驚く両親にあっさりと返した。
「芸能界って色々噂あるでしょ」
「不倫とか麻薬とかか」
「ヤクザ屋さんのお話とかね」
「そういうお話多いから。まだその目では見てないけれど」
 それでもというのだ。
「そういうお話来る前に引退してね」
「普通の生活送るか」
「そうするのね」
「うん、高校生からはね」
 こう言ってだった。
 実際にだ、麻衣は芸能界を後にした。当時大学生だった優子は妹に対してこんなことを言った。
「少し勿体なくない?」
「だって不倫とか麻薬とか」
 妹は姉にもこう言った。
「嫌だし」
「だからなのね」
「それに本当にね」
「あんたよりっていうのね」
「奇麗な人、可愛い子がね」
「沢山いるからなの」
「歌もダンスもお芝居も私よりずっと上の子一杯いるし」
 そうした世界だからだというのだ。
「だからね」
「もう芸能界辞めてなの」
「普通の女の子でね」
「生きていくのね」
「未練とかないから」
 姉にもあっさりと言ってだった。
 麻衣は芸能界を未練なく後にして受験に専念した、そしてそこそこの高校に合格して学生生活を送ったが。
 入学して暫くしてまだ芸能界引退は勿体ないと思っている両親にこれまたあっさりとした口調で言った。
「今日街でスカウトされたの」
「芸能界にか?」
「そうなの?」
「たい焼き屋さんにね」
 まさかと言う両親にこう返した。
「スカウトされたの」
「たい焼き!?」
「たい焼き屋さんになの」
「そうなの、お店の前通ったら」
 その時にというのだ。
「可愛いからどうかって言われて」
「お店の客寄せにか」
「それでなの」
「お話聞いたら時給いいしお店奇麗だしね」
「受けるのか」
「そうするの」
「うちの高校アルバイトいいし私今部活してないし」
 そうした条件もあってというのだ。
「明日先生に許可貰ってお父さんとお母さんにもね」
「話したのか」
「そうなのね」
「いいよね」
 芸能事務所の話でないのでがっくりとなっている両親にあっけらかんとした顔のまま言っていく麻衣だった。 
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