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ドリトル先生の競馬

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第九幕その四

「武士はね」
「物凄く恰好いいですよね」
「鎧兜、具足もね」
「あれもいいですよね」
「源平の戦いでも戦国時代でもね」
「どちらの鎧兜も」
「恰好いいね」
「そうですね、けれどあれを着て馬に乗って」
 ホフマン君はこうも言いました。
「弓矢を使ってたんですよね」
「武士はね」
「凄いものですね、僕なんか」
「無理かな」
「はい、重い鎧兜を着て馬に乗るだけでも」
 これだけでもというのです。
「大変ですから」
「弓を動かすこともね」
「どちらかだけでも大変です、それをです」
「両方となるとだね」
「もうどれだけのことか」
 それこそという口調での言葉でした。
「想像を絶します」
「それを昔の武士はだよ」
「やっていましたね」
「那須与一さんにしてもね」
「平家物語のあの人ですね」
「そうだよ、矢で扇を撃ち落としていたね」
「あれは名場面ですよね」
 ホフマン君から見てもです。
「あの作品の中でも」
「あの時那須与一さんは鎧兜を着けてね」
 そうしてというのです。
「弓矢を操って」
「遠くの、舟の上の的をですね」
「波の上にあったから動いていたけれど」
 それをというのです。
「見事射抜いたんだ」
「だから余計に凄いですね」
「それだけに敵味方両方から喝采を浴びたんだ」 
 源氏と平家のそれぞれの軍勢からというのです。
「あまりにも素晴らしい弓の技だったから」
「僕にはとても」
「あそこまでの腕はだね」
「ないです」
 実際にと言うのでした。
「本当に」
「そう言うんだね」
「もうあれか神業です」
 ここまでのものだというのです。
「だからこそです」
「那須与一さんは凄いんだね」
「はい、駆けながらでないですが」
 それでもというのです。
「素晴らしい技です」
「乗馬と弓矢をしていてこそだね」 
「両方していますと」
「実感出来ることだね」
「本当に、ただ」
「ただというと」
「僕は流鏑馬はです」
 これはというのです。
「絶対にです」
「成功させるんだね」
「そうします」
 先生にその決意を述べてまた練習に戻るのでした、先生は皆と一緒にその彼にお別れの言葉を継げてです。
 挨拶の後で別れました、そしてです。
 先生は研究室に戻ってまた論文を書きはじめました、そうしつつ皆に対してこんなことを言いました。
「いや、ホフマン君には絶対にね」
「流鏑馬を成功させて欲しい」
「その様にだね」
「思ってるんだね」
「先生も」
「心から願っているよ」
 その様にというのです。 
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