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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第33節「喪失までのカウントダウン」

 
前書き
書いてたらいつもの時間を軽くオーバーしてた件。
まあ、講義始まって先月より作業時間減ってる上に、XDのイベントも重なってるので大目に見てください(苦笑)

TLに流した我儘なお願いを聞いて下さったフォロワーの皆様、本当にありがとうございます。
自作を宣伝してもらえるって作家的に最上級レベルの幸せなので……。叶えてくれた皆様、そして現在進行形で布教してくださってる皆様には感謝が尽きません。これからも励みます。

さて、今回はいよいよ夫婦喧嘩回。
伴装者的には……何ていえば良いんだろうか?
ともかく遂に翔ひびへの感情に、未来さんが決着を着けるターニングポイントです。

推奨BGMは『Rainbow flower』、『Next Destination』です。
それではどうぞ、お楽しみください! 

 
「あのエネルギー波を利用して未来くんのギアを解除する……だと?」

響の突拍子もない提案に、弦十郎は度肝を抜かれた。

「私がやりますッ! やってみせますッ!」
「だが、君の体は──」
「翼さんもクリスちゃんも純くんも戦ってる今、動けるのはわたしと翔くんだけですッ! 死んでも未来を連れて帰りますッ!」
「死ぬのは許さんッ!!」
「じゃあ、死んでも生きて、帰って来ますッ! それは──絶対に絶対ですッ!」
「叔父さん、俺からも頼むッ! この方法なら、俺と響の体内に侵食した聖遺物の欠片も取り除けるかもしれないッ! だから行かせてくれッ!」

言っていることは無茶苦茶だが、確信はあると言い張る響。
更には翔にまで頭を下げられ、弦十郎は一瞬悩んだ。

だが……。

「過去のデータと、現在の融合深度から計測すると、響ちゃんと翔くんの活動限界は2分40秒になります!」
「たとえ微力でも、私たちが二人を支えることが出来れば、きっと──」
「本当なら私から提案するつもりだったんだけど……響ちゃんと翔くんがこう言ってるんだもの。あとは弦十郎くんの判断次第よ?」

既に作戦開始へ向け、藤尭は活動限界時間を割り出し、友里はオペレーションの準備を始めていた。
了子までもが提案するつもりでいたとあれば、もはや四の五の言っていられない。

弦十郎は子供達の命を預かる者として腹を括る覚悟を決めた。

「オーバーヒートまでの時間は、ごく限られている。勝算はあるのかッ!?」
「「思いつきを数字で語れるものかよッ!!」」
「ぬ……ッ!」
「へへ……」
「ふ……ッ」

響と翔の返しに、了子は思わず笑った。

「弟子は師匠に似るって言うけど、本当に弦十郎くんそっくりね」
「やれやれ……。弟子のふり見て、と言うべきか……」

弦十郎は苦笑いしつつも、これから親友の奪還に文字通り命をかける弟子達を見て、表情を引き締めた。

ff

呼んでいる……このギアが、わたしにやるべき事を訴えかけている。

行かなきゃ……水平線の彼方に。照らさなきゃ……新しい世界を。

わたしが響を守らなきゃ……響と翔くんが戦わなくてもいい、平和な世界を実現しなくちゃ……。

──ギアの示す方向へと移動していたわたしは、足を止める。

そうだよね……やっぱり二人は、わたしを追いかけてくる……。

二課の潜水艦が、わたしの進路を塞ぐように移動してくる。
そして艦橋の上には、響と、翔くんが並んで立っていた。

「一緒に帰ろう、未来ッ!」
「そうだ小日向ッ! みんな、心配してるぞッ!」
「帰れないよ……だって、わたしにはやらなきゃならないことがあるもの……」

バイザーを開いて、二人の顔を見る。
二人の目は、わたしを真っ直ぐに見つめていた。

「やらなきゃならないこと……?」
「このギアが放つ輝きはね、新しい世界を照らし出すんだって……。そこには争いもなく、誰もが穏やかに笑って暮らせる世界なんだよ」
「争いのない、世界──」
「わたしは響にも、翔くんにも戦って欲しくない。だから、二人が戦わなくていい世界を作るの」

すると響は周りを見回しながらこう言った。

「だけど未来……こんなやり方で作った世界は、あったかいのかな?」
「……」

視界に広がる一面の青には、黒い煙が幾つも立ち上っている。
この戦いで犠牲になった人達だ。

「わたしが一番好きな世界は、未来が傍に居てくれるあったかい陽だまりなんだ」
「でも、響が戦わなくていい世界だよ?」
「たとえ未来と戦ってでも……そんなことさせない……ッ!」

こうなったら響は聞いてくれない。
でも、翔くんなら……。

一縷の望みをかけて、翔くんに呼びかける。

「翔くんなら、分かってくれるよね?」
「……確かに、俺だって響には戦って欲しくない。姉さんや純、雪音、叔父さん達だってそうだ。普通の暮らしの中で、平和な日常を送ってもらいたい」
「だったら……」
「だけどな小日向……そんな世界は、自分の手で掴まなくちゃ意味が無いんだ。与えられた平和、一方的な安寧を享受するなど、俺には出来ないッ! ましてや力を以ての支配による平和を騙る者達に与えられる仮初めの平穏なんて、たとえ神が許しても俺が許さんッ!」

どうして? どうして翔くんまでそんなこと言うの?

「──わたしは響を戦わせたくないの」
「ありがとう……でもわたし、戦うよ」
「響が戦うなら、俺も戦おう。小日向……お前を取り戻すために」

そう言って二人は、それぞれの聖詠を口ずさんだ。

「──Balwisyall Nescell gungnir tron──」
「──Toryufrce Ikuyumiya haiya tron──」

どうして? わたしは、二人の為に戦っているんだよ?

どうして止めるの? どうして邪魔するの?

立ち塞がるなら、たとえ響と翔くんが相手だって……わたしは戦うんだ……。

だってそれが──






『響ちゃん、並びに翔くん、対話フェイズBへとシフトッ!』
『カウントダウン、開始しますッ!』

ギアを纏うと同時に始まるカウントダウン。
それと共に、未来への想いが新たな胸の歌を呼び起こす。

歌の名は虹の花。発令所で聴いた未来の歌から感じた、未来の寂しい気持ち。
あの唄に対するわたしからの答え。今の未来へと向けるメッセージ。

翔くんが奏でてくれる旋律と共に届けッ! “Rainbow flower”ッ!

「幾億の歴史を超えて この胸のッ!」
「Goッ!」
「問いかけにッ!」
「Goッ!」
「応えよShineゥt! 焔より──」

跳躍し、空中で再びバイザーを閉じた未来と打ち合う。
わたしが繰り出す拳や脚撃を、未来はアームドギアで防ぐ。

了子さんが言っていた、ダイレクトフィードバックシステム……。
未来の身体を好き勝手している装置が、これまでの戦闘を元にわたしの動きを予測しているから、簡単に当てさせてくれないみたい……。

「最速で最短で──はぁ、はぁ……」
(──熱い……体中の血が沸騰しそうだ──)

着地し、息を整えながら本部で了子さんに言われたことを思い出す。



『シェンショウジンのシンフォギアには、ダイレクトフィードバックシステムが搭載されているの』
『なんですか、それ?』
『鏡の特性に倣って、装者の脳に「情報」を画として直接映写する機能よ。あらかじめ用意されたプログラムをインストールすることで、バトルセンスの乏しい装者であっても機械的にポテンシャルを底上げし、短い期間でも合理的に戦闘練度を高める機能なんだけど……』
『少し弄れば、幾らでも悪用できる機能じゃないですかそれッ!?』
『藤尭君の言う通りよ……。脳に「情報」を直接映写する機能は即ち、第三者から都合のいい「情報」を書き込める機能になりうる。装者の人格を歪め、洗脳することが出来るこの機能から見ても、最凶の名は伊達じゃないわね』
『その装置が取り付けられているのは、やっぱりあの……』
『ええ、未来ちゃんの後頭部と背中よ。この二か所はなるべく刺激しないよう、注意して。ウェルくんの言っていた通り、傷つけたが最後、未来ちゃんの脳は……』



元々、未来の顔を殴ることなんて出来ない。
大丈夫。ただぶん殴るだけじゃない、相手の動きを止めるための戦い方も訓練してきたんだ。
隙を見つけて、絶対に止めて見せるッ!

だけど……身体が……熱い……ッ!

「何度でも立ち上がれるさ──」
「……」

わたしの二段蹴りを防いだ未来からのカウンターで、わたしは護衛艦の艦橋に背中から叩き付けられる。

〈残響〉

追い打ちをかけるように、ギアの腕から伸びている二本の帯みたいなパーツが、鞭のように動いてビシバシとわたしの身体を打ち付ける。

「響ッ!」

翔くんが、わたしを助けようと跳躍し、アームドギアから真空波を飛ばそうとする。

すると、未来の周囲に小さな丸い鏡のようなものが四つ現れ、翔くんにビームを放った。

「ミラービットッ!? 迎撃用遠隔操作武装まであんのかよッ!」

翔くんはミラービット?からの攻撃を寸前で躱して着地。
追いかけてくるそれを相手に戦い始めた。

ミラービットを出現させてからも激しさを衰えさせない未来の連撃。
両腕を交差させて防御し続けていると、発令所から師匠が叫んだ。

『胸に抱える時限爆弾は本物だッ!作戦時間の超過、その代償が確実な死である事を忘れるなッ!』

(死ぬ……わたしが、死ぬ……)

胸のガングニールが、わたしの身体を突き破るイメージが頭をよぎる。

それは翔くんも同じだ。

「「死ねるかアアアアアアッ!」」

両脚のパワージャッキを引き延ばし、未来を蹴って後方へと吹っ飛ばす。

すると未来はまた、両脚から展開する輪状の鏡を展開させ、強力な一撃を放つ。

〈流星〉

パワージャッキを伸縮させ、跳躍した直後……さっきまで立っていた艦が爆破された。

「『いつか未来に人は繋がれる』 大事な 友から 貰った言葉 絶対ッ!」
「絶対ッ!」
「夢ッ!」
「夢ッ!」
「紡ぐからぁぁぁぁぁッ!」

更に4機のミラービットを出現させた未来は、空中をアクロバット飛行しながらビームを乱射する。

でも、わたしだって負けられない。
いつもは急加速やキック力の倍化、高い所から飛び降りた時の衝撃を緩和させるのに使っている両脚のパワージャッキを応用し、衝撃波で空気を「蹴り込む」ことで滞空。
それを身体から溢れ出してくるエネルギーを利用して連続使用、更にバーニアを併用すれば……飛べないガングニールだって、空中でも戦えるッ!

命名、インパクトハイクッ!
え? ネーミングセンス? 翔くんと観てた特撮でちょっとは磨かれてるよッ!

タイムリミットはあと僅か……このまま未来に接近して、届かせるッ!



ff

その頃、エアキャリアからその戦いを見ていたマリアは、何かを操作する。

「ポイント確認、シャトルマーカー射出」

次の瞬間、エアキャリア上部から大量のシャトルマーカーが射出され、空中の響を未来を囲むように展開される。

「私が、やらなければ……ッ!」

やがて、展開されたシャトルマーカーは、未来が放つ神獣鏡の輝きを次々と反射し始めた。

ff

「おおおおおおッ!」

追尾してくるミラービットは、伴奏しながら戦うには厄介な敵だった。
しかもビットの数は4機だ。四方から追い込まれたらたまったもんじゃない。

幸い、小日向は上空で響とやり合っている。
パワージャッキを応用して、空気を蹴り込み疑似的な空中戦とは……流石だ。

俺も負けてはいられないッ!

「演奏の邪魔はお控え願おうかッ!」
迫ってきたビットをギリギリまで引き付けると、軌道を欺き、聖遺物殺しの閃光を刹那の間で躱して、弧を引き光弦を思いっきり弾いた。

永葬奏(ながそうそう)・共振の型〉

ミラービットそのものが共鳴を起こして砕ける程の周波数をぶつける。

俺を取り囲むように展開していたビットは、4機まとめて砕け散った。

「よしッ! あとは響を……」

上空を見上げた時、そこには光の檻の中を乱舞する響と、もはや動かずに小さな輝きを何度も放つことで制圧しようとする未来の姿があった。



(まだだッ!未来がもっと強いエネルギーを発する瞬間を──チャンスを掴むんだッ!)

滞空し、何度も連続して放たれる神獣鏡の輝きと、シャトルマーカーに反射されて向かってくるそれをなんとか躱しながら、響はその瞬間を待っていた。

『まもなく危険域に突入しますッ!』
『もう猶予はないぞッ!』

直後、響と翔の胸を、鋭い痛みが走り抜ける。

(体が──ッ!)
(そろそろ限界か……ッ!)

カウントは既に20秒を切っている。
二人がその命を喪失するまでのカウントダウンは、もはや目の前だ。



「戦うなんて間違ってる。戦わないことだけが、本当にあたたかい世界を約束してくれる。戦いから解放してあげないと……」

そのためには響と、翔くんと戦って、分からせなきゃ……。

シェンショウジンがそう囁く。

そう、わたしは二人を守るんだ。
そのためにわたしは、二人と戦って……。

……あれ……でも、それって……。

「うう、ぐううう……ッ!」

聞こえた悲鳴に、ぼんやりしていた意識が呼び起こされる。

目の前で苦痛に唸っているのは、身体を突き破って琥珀色の結晶を生やし始めた親友だッ!

(……違うッ!わたしがしたいのはこんな事じゃないッ! こんなことじゃ……ないのに──ッ!」



バイザーが開き、未来の絶叫が轟いた。

その目から流れる雫を、響は見逃していなかった。

「君と私、みんな、みんな 歩みきった、足跡に、どんな花が咲くのかなぁ──?」

目の傍にも、胸から肩、それから腕や脚からも、大小バラバラな結晶が生えて、身体中が熱いし痛い。

だとしてもッ! わたしは未来を取り戻すッ!!

迫りくる幾重もの輝きを全てすり抜けて、わたしは未来の胸の中へと飛び込んだ。

「離してッ!」
「いやだッ!離さないッ!もう二度と、離さないッ!」

未来の身体をぎゅううっと抱き締めて、そのまま落ちていく。

「響いい……ッ!」
「離さないッ!──絶対に……絶対にいいいいッ!」



「来るッ!フロンティアへと至る道ッ!神獣鏡のエネルギー、照射ッ!」




「翔くんッ!!」

落下していくわたしと未来。
その下から飛んできたのは、アームドギアを翼にした翔くんだ。

翔くんも私と同じように、全身から結晶が生えている。
でも、わたしのインパクトハイクと同じように、翔くんもアームドギアの推力にエネルギーを回しているみたいだ。

わたし達を抱きかかえ、翔くんはライブ会場へと飛んだ時よりも力強く、わたし達と共に空へと翔いた。

「飛べよおおおおおおおッ!!」
「そいつが、聖遺物を消し去るって言うんなら──こんなの脱いじゃえ、未来ううううッ!」



フロンティアへと向けて放たれた極大の輝き。
小さな輝きの一つ一つを反射し束ねて増幅させた、迸る凄まじい光の奔流。

その眩い光の中へと、三人は飛び込んでいった。















「これは……」

翔、響、未来が神獣鏡の輝きの中へと消えた直後、海底より辺り一面を白一色に染め上げる程の激しい光が空へと立ち昇った。

「翔と響くん、未来くんはッ!」
「聖遺物反応の消失を確認ッ!」
「三名のバイタルは……確認できましたッ!」
「作戦、成功……なのか?」

その場の誰もが呆気にとられる中、エアキャリアの副操縦席へと上昇してきたウェルだけが、これまでにないほど満足そうな笑みを浮かべていた。

「作戦は、成功ですッ! 封印は解除されましたッ!」
「ドクター……ッ!」
「さあ、フロンティアの浮上ですッ!」




海底より立ち上った光が収まった直後、それは轟音と共に姿を現した。

それは、石を積み上げて造られた巨大な建造物だった。

神殿のようなひときわ巨大な建造物に、何十本もの石柱。

海面を荒れ狂わせながら浮上するそれは、舞い上げた海水を雨のように降らせながらどんどん上昇していく。

「いったい、何が……ッ!?」

一進一退の攻防を続けていた純と切歌もその手を止め、フロンティアの威容を前に立ち尽くす。

その時だった。



ガッ!



「……ッ!」

後頭部からの激しい衝撃に、純は倒れ伏す。

驚く切歌。
純は遠のいていく意識の中、なんとか背後からの襲撃者を確かめようと首を動かして──



「つばさ……せん、ぱい……?」


「──すまない、爽々波……ここまでだ」 
 

 
後書き
第3楽章、完ッ!
翔くんのアームドギアに飛行用形態を追加したのはこのシーンの為と言っても過言ではありませんw

ウェルが無印のキャッチフレーズを台詞に使ってるの、実はすっごい好きな台詞だったりします。

そして遂に、導火線に付いた火が爆弾に届きました。
翼さん……オンドゥルルラギッタンディスカー!?

それでは次章、「浮上のラストアーク」をお楽しみに!










次章、遂に彼女が還ってくる。






「アタシを楽しませてくれるのは……お前か?」



Comeback to the “Gungnir” 
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