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八条学園騒動記

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第五百六十六話 アンの絵その四

「僕そうした人でもないとね」
「大切な人が死んだら悲しい」
「そう思うのは当然だと思うんだ」 
 人間ならというのだ。
「そんな人になったらね」
「終わりだしね」
「もう気にかけてくれた人が亡くなっても何も思わないで」
「他にも悪い部分一杯ある様だと」
「もう人間とはね」
「言えないね」
「屑って言うんだろうね」
 菅はこの言葉も出した。
「そうした人こそが」
「そうだね、そこまであれだとね」
「屑だよね」
「僕もそう思うよ」
 マルティは菅に真剣な表情で言葉を返した。
「本当に」
「そうだよね」
「うん、というかどうしてそんな風になったか」
「そのことも考えるね」
「ええと、恩知らずで図々しくて尊大で礼儀知らずで」
「お葬式のそのお話を聞くとね」
「よくそこまで駄目な人になったね」 
 こう言うのだった。
「しかも自己中心的なんだよね」
「自分しかないっていう位にね」
「余計に酷いね、ちなみにずっと働いてなくて奥さんの紐だったし通っていた学校もあまりレベルが高くなくておまけに資格も持ってないよ」
「無能でもあったんだ」
「それでそうだったんだ」
「偉そうにしていたんだ」
「そんな人だったんだ」
 菅はマルティにその人のことをさらに話した。
「凄いよね」
「壮絶なレベルの駄目人間だね」
「屑って言ってもいいね」
「正真正銘のそれだね」
 まさにとだ、マルティも頷いて答えた。
「そうした人こそが」
「というか何の才能も取り柄も人格もないのにどうして偉そうなのよ」
 アンはそこがわからず言った。
「社会の最底辺の人じゃない」
「普通はそう思うよね」
「何処に偉そうに出来る根拠があるのよ」
「それは僕もわからないんだ」
「そうなの」
「だってね」
 そもそもとだ、菅はアンに答えた。
「今お話した通りにね」
「何の才能も取り柄もない人よね」
「性格はそうで。お世話になってる人にも組織にも文句ばかり言って」
「本当に恩知らずだったのね」
「全部後ろ足で砂かける様な態度だったから」
 それでというのだ。
「僕にしてもね」
「どうして偉そうなのか」
「本当にわからないんだ」
「そうなの」
「無能さは凄くてお仕事はどんなのも全く出来なくて」
「すぐに辞めるか辞めさせられて」
「性格もそんなのだったしね」
 恩知らずで尊大で無礼でというのだ。
「だからね」
「何処でも務まらなかったのね」
「そんな人だったんだ」
「まあお葬式で普通亡くなった人の家族のところに他人は行かないわ」
 アンもそれはと言った。
「気遣って声をそっとかけてもね」
「お食事の時に偉そうに当然といった態度でね」
「そこに行ったのね」
「上座にね」
「余計に酷いわね」
「もう五十代だったのにね」
「結構いい歳じゃない」
 五十代と聞いてだ、マルティは言った。
「それだと」
「そうだよね」
「人生の折り返しにきて」
 この時代の連合の平均寿命は百歳を超えている、だから五十代になるともうそうした年齢であるのだ。 
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