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神機楼戦記オクトメディウム

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第10話 束の間の安らぎは振り切らずに満喫する

「おはよう、千影ちゃん♪」
 その日も姫子は愛しい幼なじみの千影と学校で出会い、彼女に朝の挨拶をする。
「おはよう、姫子」
 そんな人なつっこい姫子に対して、千影も快い気持ちで以て挨拶を返すのであった。
 と、ここまでは『今までの』彼女達の変わらない光景であるのだ。だが、今ではそこにある変化が加わったのであった。
 その変化の主に対して、二人は笑顔で言葉を掛ける。
「おっはよう、泉美ちゃん♪」
「おはよう、今日もよろしくね。泉美さん」
 そう、この度巫女二人の親友となった八雲泉美その人であった。そんな二人に安心感を覚えながら泉美は返すのであった。
「おはよう、千影さん、姫子さん」

◇ ◇ ◇

 生憎泉美は巫女二人とは別のクラスの生徒であるから、三人が会えるのは休憩時間を狙うしかないのである。そして、今その休憩時間でも一日で一番長い昼休みを彼女達は活かすのだ。
 昼食も終えて後は午後の授業までの自由時間を獲得した三人は、皆で話に華を咲かせていたのであった。
 まず、口を開いていたのは姫子である。
「それにしても、泉美ちゃんが友達になってくれて私は大助かりしているよ」
 姫子がそういう理由。それは彼女が成績が中の中であるが故に、宿題や勉強で行き詰まる事も中くらいに存在するのだ。
 そこを、成績優秀で頭が切れる泉美が問題の解き方をレクチャーしてくれるという関係が結ばれたのである。
「いいえ、私こそ必要としてもらって嬉しいわ」
 そして、泉美の方にとっても嬉しい事であるのだった。今までは自分の頭の良さは成績により両親の利益となるようにしか活用する手立てが無かったのだ。だが、今こうしてそんな『親としての』邪な願望以外の所で、純粋に必要とされる機会が出来たという訳だ。
 そうして勉強等の話は済んだ姫子は、ここで話題を切り替えてそれを切り出すのであった。
「ところで泉美ちゃん。心配はいらないと思うけど、『どうだった』?」
 突如として出されたその意味ありげな言葉に、泉美は合点がいったように返す。
「ええ、姫子さんの読み通り、問題なくいったわ、和希さんの所でね」
 その事については、詳しく説明しないといけないだろう。

◇ ◇ ◇

 泉美は大邪衆の一人として姫子を、静かな形であるものの襲撃した事に変わりはないのである。その為、事後処理は必要であるのだった。
 大邪の力で惑わされたとはいえ、邪神に荷担して巫女の一人を狙ったのだ。その事は捨て置く事は出来ないだろう。
 故に、泉美はこの戦いに関わっている者の中で、一番話を通さなければならないだろう人物の元へと顔を出したのであった。
 そう、1200年前から続く大邪との戦いの事を一番知り、巫女二人を統率する『大神和希』その人である。
 そして、泉美から一通り話を聞いた和希は、事の内容を反芻しながら頷いていたのであった。
「事のあらましは大体分かりました。それで、あなたはこれから私達に協力をしたい、そういう事ですね?」
「はい」
 そのやり取りが泉美が話題にしている事なのであった。
 実を言うと、泉美はかぐらやたまと違って、自身の搭乗機の神機楼を破壊されて大邪の力から解放されておらず、今もその力が残っているのだ。
 しかし、元から巫女達を取って喰おうとする気のない泉美は、別に大邪に操られている状態ではなく、しっかりと自分の意思で以て行動出来るのである。
 故に、頭の回る彼女はその事を、大邪との戦いを少しでも早く終わらせる為に利用してやろうと思い至り、そして和希に申し出を行っているという事なのであった。
 そして、肝心の和希からの答えが返ってくる。
「協力ありがとうございます。こちらとしても現状は猫の手も借りたい所です。故にあなたの申し出は助かります」
「はい、喜んで力になります」
 快く自分の提案を聞いてくれる和希に、泉美はありがたく思いつつも、同時に困惑してしまうのであった。
 ──この、邪神に荷担した自分をそうすんなりと受け入れてくれるのか、と。
 なので、思わず泉美は彼に対して言ってしまうのであった。
「しかし、どうしてこうもすんなりと私を許してくれるのですか? 私は平手打ちの一つでもくるだろうと覚悟していましたのに?」
 それが、泉美が抱く気持ちであった。自分は『悪事を働いた』のだ。なので、それに対する制裁の一つでもあるだろうと心に決めていた所に、これである。
 そう思い抱く泉美に対して、和希は極めて物腰柔らかく振る舞いながら、こう言うのであった。
「それはですね、私は罰を与えるという方法で人を動かすのを好まないタチなのでしてね」
 そう言った後、諭すように彼は続ける。
「そして、罰をもらう事で心を軽くしようとするのはいけませんよ。それは、自分自身から逃げる事ですから」
「あっ……」
 その言葉を聞いた泉美は、呆気に取られてしまうのであった。──正に和希は彼女の心を見透かしているかのようであったからだ。
 現に彼女は、罰を受ける事で気を晴らそうとしていたからだ。そこへ和希の『厳しさ』の籠もったこの言である。
 だが、それは泉美を不快感で包むものではなかったのだ。それは、『逃げ』だと相手を責める人の心情は大体その発言者自身からの逃げを意味しているのであるが。
 和希は違ったのだ。逃げてはいけないと言ったのは自分自身だという事であったのだ。故にその事が泉美の心の奥底まで優しく染み込んでいったのである。
 そのような心持ちに包まれている泉美を更に諭すように、和希は締め括った。
「それに、罰を与えるというのは、今までのその人を否定する事です。私は今までの人生を送って来た泉美さん、あなたを否定する等という事は決してしませんよ。だから、自分を誇りに思いなさい」
「和希さん……ありがとうございます」
 泉美は和希の一言一言に心が救われるのであった。
 全く、この人には敵わないと泉美は思う所だ。こんな素晴らしい人のフリをしようとした事を改めて彼女は恐れ多かった事だと実感するのだった。

◇ ◇ ◇

「……と、こういう感じだったわ」
「うん、やっぱり和希さんだね」
「全く……ね」
 泉美の話が終わり、皆一様に和希の偉大さを再度確認する所であった。
 ともあれ、こうして泉美が和希への報告と協力要請を無事に成功させた事はこれで分かったのである。
 話が一段落した姫子は、ふと泉美に対して言うのであった。
「それにしても泉美ちゃん。眼鏡姿のあなたも知的っぽくて格好いいよ♪」
 そう、泉美は今までとは違い、その目には眼鏡を掛けているのであった。
 それは、彼女が姫子に目が綺麗だからと言われた事に、今までコンプレックスだった翠眼──緑色の瞳──を隠さなくていい自信がついた事にあるのだった。
 その為、今までカラーのコンタクトレンズにより視力の補助をしてきた彼女であったが、翠眼を隠す必要がなくなったならと、自分にとってしっくりくる眼鏡へと乗り換えたという事であった。
 無論、そう出来たのは姫子の存在なくしてはありえない泉美だったので、彼女は素直な気持ちでこう返した。
「ありがとう姫子さん。そして、それはあなたのお陰よ」
「えへへ♪」
 面と向かってお礼を言われると姫子とて満更ではないので、思わずはにかむのであった。
 泉美とそのようなやり取りをした姫子は続いて次の話題へと話を進める。
「それじゃあ、みんな。今日私の家に来てね♪」
「ええ」
「お邪魔させてもらうわ」
 それは、姫子の自宅の稲田邸へと皆で赴く事への確認であるのだった。

◇ ◇ ◇

 そして、今日の学校でのノルマは全て終わり、後は皆で稲田邸へ向かうだけであった。
 無論、皆部活やアルバイト等の予定は今日はなく、この日を見計らって姫子は以前から案を錬っていたのである。
 その取り決めの下、とうとう三人は姫子の住まう稲田邸へと辿り着くに至っていたのであった。
「やっぱり姫子の家はいつ見ても壮観よね……」
 その光景を目の当たりにして、千影は思わず感嘆の声を漏らしてしまうのであった。
 それもそうであろう。何せ稲田家はどう控えめな表現をしても『豪邸』と称するしかない程であるのだから。
 まず、玄関の中には庭園と呼べるような大きな庭があり、その先に白亜の城と見まごうような邸宅があった。
 そして、こういうシチュエーションではお約束の『噴水』まで完備されている状態ときたものなのであった。
 千影はそんな姫子の幼なじみであるが為に幾度となくこの豪邸を訪れてはいるが、未だにその自分にとっての高嶺の花には圧巻されてしまう所であるのだった。
 一方で、姫子にとってもう一人の客人となった八雲泉美はというと、こちらは千影とは対称的にあっけらかんとした振る舞いであった。
 それを見ながら千影は思う──確か、泉美さんとこの八雲家も、立派な名家だったから、こういうのは見慣れているという事なのね、と。
 そこで千影は、自分だけがこの邸宅に圧倒されてしまっていて庶民性丸出しになってしまっているなと思い至るのであった。それは何だかみっともない気がしたので、彼女はここで平静を装う事にしたのであった。
「姫子、今日はあなたの家にお邪魔させてもらうけど、改めていいかしら?」
「うん、何の問題もないよ。ちゃんとアリアには前もって言ってあるからね♪」
 そう言うと、姫子は十分すぎるボリュームのある胸を張って見せるのであった。
「……」
 それを見ながら、『この問題』でも自分は仲間はずれか、と千影は内心で舌打ちするしかなかったのだ。憐れ。
 千影がそのような人知れずに心の葛藤をしまくっている間にも、一行は稲田家のチャイムを鳴らした後、アリアに承諾を得て、邸宅の玄関へと辿り着いていたのであった。
 そして、ガチャリと荘厳な扉が開くと、中から人が出迎えてくれたのである。
「お帰りなさいませ、姫子様」
 そう言って出迎えたのは、メイド服に身を包んだ妙齢の女性であったのだ。
 そう、この人が稲田家専属のメイド長たる、『如月アリア』その人であるのだった。
 髪は誰かがメイドだからと狙った訳ではないのだが銀髪であり、それをショートカットにして凜々しく決めていた。
 そのアリアに対して、姫子は気兼ねなく帰宅の挨拶をする。
「ただいま~アリア。それで、電話で知らせた通り、今日はお友達を連れてきたからね♪」
「ええ、承っております」
 姫子にそう言われたアリアは改めてこの場の姫子以外の者へと意識を向け、そして言うのであった。
「ようこそ我が稲田家へ。千影さん、お久しぶりです。そして、八雲泉美さん、初めまして。私、稲田家でメイド長を務めさせて頂いている、如月アリアと申します」
 言ってアリアはニコリと千影と泉美へと微笑んで見せたのであった。
 その瞬間、泉美に電流走る。そして、彼女が思った事はこうだ。
(千影さん……この人、『出来ます』ね?)
(さすがね泉美さん。お目が高いわよ)
 泉美のその弁には千影も認める所であるのだった。彼女もこうして姫子宅を訪れる度に、アリアの隙のない立ち振る舞いっぷりにはいつも呆気に取られていたのだ。
 そのようにして千影と共にアリアへと称賛の念を送っていた泉美であったが、ここで彼女は今までここへ来る時の為に考えていた事を口に出力するのであった。
「初めましてアリアさん。早速ですが、たまと姫子さんに餌をあげていいですか?」
 そう泉美はさらりと倫理的に何か問題のある事を口走ったのであった。
「はい、たまの餌ですね? すぐにご用意させて頂きます」
(あ、スルーされた……)
(アリア、グッジョブ♪)
 あっさりと自分の野望をかわされてしまった泉美と、自分の付き人の隙の無さに改めて感謝する姫子であった。
 姫子は泉美が『こう出る』事は何となく予想出来たのである。あれから和解してからというもの、泉美が自分を見る目が、どこか小動物を愛でるかのような感じになっていたからだ。
 無論姫子は自分は泉美のペットになる気は更々無いので、今のアリアの機転は大いに助かる所であるのだった。
 そのような泉美の悪しき願いはアリアの活躍により無事に打ち砕かれた所で、本題に入らなければならないだろう。
 その事を、当の泉美が口にするのであった。
「アリアさん、たまは無事にやっていますか?」
 その問いの真意を知ったアリアは、にっこりと微笑みながら泉美に返す。
「はい、あの子は問題なく飼い猫としてやっていますわ」
「良かったです……」
 そう意味ありげなやり取りをする二人であったが、その意味はじきに分かる事となるのだった。
 そうして一行はアリアの案内の下、とある一室へとやって来たのである。
 と、そこには一匹の愛らしい黒猫がソファーの上に鎮座しており、アリアや姫子や客人達の姿を一瞥すると『にゃー』と可愛らしい声で鳴いたのであった。
 その猫を見て千影は確信するのだった。その事を彼女はアリアに聞く。
「アリアさん、この子が『たま』ですよね?」
「ええ、ご名答です」
 そんな千影の質問に、アリアはさらりとそう答えて見せたのであった。特に問題はないといった風に。
 そして、アリアは千影を始めとした者の疑問に対して代弁するかのように説明を始めるのであった。
「この子は猫の妖怪と言える存在となったのですからね。こうして変化して猫の姿を取るのも容易な事であったそうよ」
 その事を一体『誰から』聞いたのかという疑問が沸いてくるが、それに答える代わりにアリアは『たま』に呼び掛けるのであった。
「たま、この方々は周りには他言しはしないでしょうから、『演技』はもういいですよ」
「あ、それは助かるね♪」
 アリアのその言葉に答えたのは、他でもなくその『黒猫』自身からであった。
 そう、猫でありながら人語を話すという、ファンタジーやメルヘンの産物である行為をこの猫はやってのけたという事である。
 そして、そんなファンタジーやメルヘンのような現象はこれで終わりではなかったのであった。突如としてその黒猫を煙とポンというコミカルな音が包んだのである。
 その後その場にいたのは、ミニ丈の和服に身を包んだ黒が基調の猫耳少女であるのだった。
「う~ん☆ やっぱりこの姿の方がすっきりするね☆」
 そう言いながら、正体を現した『猫妖怪たま』は間延びした掛け声と共に背伸びをして見せた。
 そう、たまは普段は人の目に着かないように猫の姿で過ごし、信用出来る者達の前ではこうして本来の姿である人型を取るという生活を稲田邸で行っていたのであった。
 その、人型をとったたまの姿を見据えた泉美は、今がこの時だと言わんばかりにアリアに言う。
「アリアさん、早速たまに餌をあげさせて下さい☆」
「猫型の時にお願いします」
 だが、その悪しき野望もやんわりとアリアの活躍によって阻止されたのであった。やったね☆
「泉美ちゃん……それはちょっと……」
 その新たな友人の暴走に危ないものを感じた姫子はそう指摘するが……。
「餌は餌でしょう? 何か問題でもあるかしら?」
 そう泉美はどこぞのウィングな主人公の如く屁理屈を言うのであったが、姫子も負けてはいられない。
「うん。あげるのは同じでも、絵的に全然違うからね!」
 これまた正論であった。そこに隙は無かったので、泉美はこの場は引く事にしたのである。

◇ ◇ ◇

 その後は、たまに餌を与え──無論、猫型形態で──彼女が可愛らしく食べる様を皆一様に微笑ましく見守って過ごしたのであった。
 そして、事務仕事があるからとこの場から去ったアリアを見送った一同は、皆で豪邸の一室にて憩いの時を満喫していたのであった。
 そんな環境に当の住人である姫子と、彼女と同じく名家育ちの泉美は平然としていたのであるが、やはり千影はこのような場所は自分には場違いだと何度訪れても痛感する所だった。
「やっぱり、私には刺激が強すぎるわ……」
「千影、気にする事はないよ。あたいもまだ自分には不釣り合いだなって感じているからね」
 嘆息気味に言う千影に、この家の新たな家族となったたまも同意するのであった。ちなみに、彼女は今人型を取っているので、その振る舞いは同世代の女の子同士の会話そのものなのだった。
 そう切り出したものの、たまはこの場を借りて言わなければならない事を言う。
「でも、あたいにこの家に住まわせる話を切り出してくれた千影に、あたいを受け入れてくれた姫子とその家族には感謝しても感謝しきれない位だよ」
 そう、たまが稲田邸の新たな家族になるように手ほどきをしてくれたのは千影であるのだった。
 彼女は、以前捨てられていたたまを半ば見捨てる事になった後で内省をしたのである。──自分の家では面倒を見られないのなら、友人にそれを引き受けてもらうという対処をすべきであったと。
 その反省を千影は実行に移し、今ではたまは住まう家を手に入れ平穏な毎日をものにする事が出来たという事であった。
 そんな見た目は人間の女の子四人が存在するという華やかな空間にて、姫子は何となく部屋のテレビを点けたのである。
 ちなみに、金持ちの家らしく、そのサイズはプレゼンテーションにでも使えるんじゃないかという大振りなものであった。この事にも千影は目まいを覚えてくる所である。
 そんな千影の密かな葛藤をよそにテレビは起動され、地デジ化以降のテレビの仕様上、まず音声から発せられ、続いて遅れて映像が液晶画面に映し出される。
「あ!」
 そこで、姫子は思わず声をあげるのであった。
 何故なら、そこに映っていたのは、姫子も良く知る顔であったからだ。
 間違う筈もないだろう。オレンジ色のツインテールをなびかせ、ゴスロリ衣装に身を包むアイドル・夕陽かぐらの姿がそこにあったからだ。
 そして、彼女はテレビ画面越しに元気に歌い、踊り、皆の歓声を浴びていたのだ。
 その事から、導き出される結論は一つであろう。
「良かった。かぐらちゃん、無事にアイドル活動に復帰したんだね」
 その姫子の弁が全てを物語っていたのであった。
 あれから、自分の足が治った事を自覚したかぐらは、その好機を逃すまいと再び芸能界へと舞い戻って行き、そして無事に復活を遂げたという事であるのだった。
 こうして大邪衆として自分と関わったかぐらが、元の夢に向かう生活に戻れた事に姫子は安堵すると共に、この事も忘れてはいなかったのだ。
「泉美ちゃん、ありがとうね。これもあなたがあの子を後押ししてくれた事もあると思うから」
 それは、かぐらの事後に泉美が彼女に(八雲家のコネを利用して)コンタクトを取った事である。
 その際に泉美は彼女に言ったのであった。
 ──もしかしたら、足の負傷が治ったのは大邪の力によるものかも知れないけど、あなたは足が治った事に変わりは無い、だからそれを利用しない手はないのだ、と。
 そして、かぐらはその泉美の言葉が後押しとなってアイドル活動に復帰する心づもりが着いたという事なのであった。
 その事に対して泉美はこう言う。
「いいえ、一番彼女に対して頑張ったのは姫子さん、あなたよ。私はただ後押しをしただけの事」
 それが自分に出来る事だったから、と泉美はしっかりと自分を見据えながら言った。
 そう泉美が振る舞っていると、そこへたまが話し掛けてきたのである。
「泉美、あたいからもありがとうね」
 たまがそう言う理由も、かぐらの件と似たような事であった。
 たまの事後に泉美は、あなたの命は大邪の力で妖怪化した事で生きながらえる事となったけど、その手に入れた命は大切にしなさい、そう言ったのであった。
 そして、たまはその言葉に背中を押され、こうして今を懸命に生きる決心が着いたのだ。
 そのような影響を二人に与えた事を再確認した千影と姫子は、そんな泉美と仲間になれた事にとても感謝する所なのだ。
 今までの自分達にはない感性を泉美はもたらしてくれたのだ。その事をこれからも大切にしていかなければならないだろうと二人は感じるのであった。 
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