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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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愛娘

<海上>

皆が集まる食堂へ、息子との語らいを終えたリュカが戻ると、マリーを中心に水夫達が集まり、談笑しているのを目撃する。
この場にビアンカやアルルもおり、マリーの傍らにはウルフも付いているとはいえ、元海賊達に愛娘が囲まれている事に不快感を募らせる。

「マリー…夜更かしが過ぎるぞ!早く寝なさい…」
「ぷっ!!」
普段言った事の無い様な父親らしい台詞を言い、妻に吹き出されるリュカ。
慣れない事は言う物ではない。

「ごめんなさい、お父様。水夫さん達に『幽霊船』のお話を聞いてましたの」
「幽霊船……そんな怖い話を聞いちゃうと、眠れ無くなっちゃうぞ!」
「大丈夫ですわ!ウルフ様が添い寝してくださりますから♡」
「え!?俺?」
今更ながら焦るウルフ。
「じゃぁ安心だね!」
《げ!納得しちゃったよ…もう、俺の自由意志は無くなったって事………?》

ウルフの困った表情に気付かないフリをして、マリーの隣へ腰を下ろすリュカ。
すると周囲に集まっていた水夫達が一斉に距離を取る…
因みにティミーに対しても同様に、水夫達は恐怖から一定の距離を置こうとする。
相当この親子は恐れられている様だ。

「…で、幽霊船がどうしたの?」
優しい口調でマリーに問うリュカ…
先程、夜更かしを咎めたのに、元海賊達が離れたと見るや、寝かし付けようともしないダメな父親…
当分、真面目モードは訪れないだろう。

「はい。何でも以前…『船乗りの骨』と言うアイテムを持っていたら、ロマリア沖で『幽霊船』に遭遇したそうです。是非、私も見てみたいですわ!ね、お父様ぁ♡」
「ふ~ん……じゃぁ、その内幽霊船に出会すかもしれないじゃん!」
「いえ、お父様…もう船乗りの骨は手元に無いそうですぅ………このレッドオーブと引き替えに交換してしまったそうなんですって…」
懐から取り出したレットオーブを大事そうに見つめ、マリーは残念そうに溜息を吐く。

「誰と交換したの?物好きな変人も居たもんだ!」
「はい!何と偶然なんですが、この海域の近くにある『グリンラッド』と呼ばれる極寒の地に住むお爺さんと、交換されたそうですのよ!是非、船乗りの骨を譲ってもらいたいですね!」

「…それは難しいなぁ……だって、そのレッドオーブは僕達に必要な物だろ!?確か……不死鳥…ラー油……だっけ?…それの復活に欠かせないんじゃ…」
「ラーミアですよ、リュカさん!」
ウルフの突っ込みに軽く頷くリュカ…きっとワザと間違えたのだろう。
「勿論、このオーブは手放しませんわ!…でも他の物と交換出来ないでしょうか?」

「他の物?……例えば?」
「う~ん…そうですねぇ……美女の脱ぎたてパンツとか!お父様は大好きでしょ!?」
「うん。その老人が僕と同じ思考回路の持ち主なら、パンツと交換してくれるだろうけど…きっとムリだと思うな!」

「…なぁリュカさん…親娘の会話として、今のは正しいのか?…父親として、『パンツと物々交換』なんて話題を出した娘を、叱るべきではないのかな?」
ウルフが少し脅えながらも、リュカに突っ込みを入れてくれた…その場にいた誰もが思っていた突っ込みを!
「ん?う~ん…そう言う方面の事で、僕が叱っても…説得力が無い!」
「あぁ……自覚はされてるんですね……少し安心しました…」

「ともかく近くに来たのですから、一度寄ってみましょうよ!」
幾ばくかの沈黙か続いたが、マリーの明るい声が沈黙を破った。
「でも…その幽霊船と遭遇する事に意味はあるの?正直、無意味な事に時間を割いている余裕は無いのよ、私達!」
アルルが少しきつめの口調で、マリーの提案に疑問を抱く。

「む、無駄かどうかは分からないじゃないですか!死して尚、現世に現れるなんて相当の思いが込められてると思いますわ!もしかしたら、魔王討伐に何らかの影響があるかも知れないじゃないですか!」
「………そんな確証があるの?」
「………ありませんですぅ…」
「じゃぁ「まぁまぁ、アルル!」
悲しそうに俯くマリーを助けたのはリュカだった。

「バラモス討伐を急ぐ気持ちは解るけど、無駄かどうかは断言出来ないだろ!?後日に幽霊船を見つけておいて良かったって時が、来るかもしれないじゃん!」
「しかしリュカさん…」
アルルの反論を手で制し、真面目な表情で語りかけるリュカ。
「アルルの言いたい事は分かる…僕が娘のお願いだから、幽霊船を探そうとしていると言いたいんだよね…」
アルルは黙って頷くだけ…

「うん…それは否定しないよ。でも、僕の言っている事は間違っているかな?もし幽霊船にオーブがあったらどうする?後日その事に気付いても手遅れかもしれないよ…」
「………分かりました!グリンラッドへ寄りましょう!」
リュカの優しい瞳に騙される様な形で承諾するアルル…

「お父様ぁ…ありがとうございますぅ!」
何時もの様に明るい口調でリュカにお礼を言うマリー。
そのマリーの頬にキスをしてその場を立ち去るリュカ…

皆がリュカの動きを目で追っていたのだが、ウルフだけはマリーから目が離せないでいた。
頬にキスをされた時、リュカに何かを言われ青ざめ固まるマリーに…
何を言われたのかは聞こえなかった。
マリーにもリュカにも聞く事は出来ない…聞いても答えないのは明白だ!
少しの間、悩み続けるマリーを見つめていた。

ウルフの視線に気付きマリーが顔を上げた時、既に何時ものマリーに戻っており、屈託のない笑顔でウルフに抱き付いてくる。
「幽霊船…楽しみですぅ!」
何時もの笑顔…何時もの口調…
今後マリーから目が離せなくなるウルフ…
もしかしたら、この親娘の狙いはそれだったのかも…
人を操るのが上手いから…





<グリンラッド>

リュカ流に言えば『クソ寒い不毛の地』に、一人で暮らす変人ジジイ!
そんな老人を前に、何時もと変わらないリュカとマリーが、『船乗りの骨』を譲って貰える様交渉する……何時もの様に。

「なぁ爺さん!それ、くれよ!」
「何で見ず知らずのお前に、これをやらなければならないんだ!?」
「お爺様ぁ…私ぃ…幽霊船を見たいんですぅ!だから船乗りの骨をください!」
どう贔屓目に見ても脈略がない交渉術。
ただ欲しいからよこせと言う横暴さ!
本当に手に入れる気があるのか、疑問に思ってしまう!
「ただではやれん!ある物と交換じゃ!」
「えー、めんどくさ~い!!」



 
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