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地獄の訓練

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第三章

「艦隊も隊列を組むな、もっと言えば隊もだ」
「はい、隊列を組みます」
「縦隊なり横隊なり」
「その都度組みます」
「むしろ列を組めないでは」
 軍人としてだ、士官達も答えた。それこそ兵学校に入ったその時に骨の髄まで叩き込まれたことである。
「何も出来ません」
「軍ではありません」
「そして編隊を組むこともですか」
「航空機の基本ですか」
「それは即座にしてだ」
 そうしてとだ、山口はまた話した。
「出ねばならないのだ」
「それがまだ遅い」
「だからですか」
「もう一度ですか」
「訓練すべきですか」
「そうだ、訓練すればだ」
 それでというのだ。
「よりよくなる、だからもう一度だ」
「わかりました」
「それではです」
「もう一度ですね」
「もう一度編隊を組ませますね」
「我々も訓練だ」
 指示を出すそれをとだ、こう言ってだった。
 山口は空で編隊を組む訓練をまたさせた、それは航空機に乗るパイロットだけでなく艦にいる者全員で行った、それは朝早くから行われ。
 夜になっても続いた、山口は夜にはこう言った。
「夜に出撃、着艦する時もあればだ」
「攻撃する時もある」
「夜間攻撃ですか」
「その時もありますか」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「夜でもだ」
「訓練をしますか」
「夜も」
「そうしますか」
「我が帝国海軍は月月火水木金金だ」
 一週間休みなし、そこまで訓練をするということだ。山口はここであえてこの言葉を出してみせたのだ。
「そうだな」
「その通りです」 
 この言葉に頷かない帝国海軍軍人はいない、誰もが姿勢を正して答えた。
「まさに」
「我が帝国海軍に休みなぞありません」
「ただ軍務のみがあります」
「訓練も休みなしであります」
「例え何時であろうとも」
「だからだ、今もだ」
 まさにというのだ。
「訓練を続ける、いいな」
「了解しました」
「それでは」
「今日は戦闘機の空中戦の訓練を行うが」
 夜にそれをというのだ、もう九時を回っているが山口は気にしなかった。
「明日は対艦攻撃と急降下爆撃だ」
「艦上攻撃機と艦上爆撃機による」
「それですね」
「そうだ、それを行う」
 こう言って深夜まで訓練をして翌日は日の出と共にだった。
 山口は訓練にあたった、彼は海面すれすれに飛ぶ艦上攻撃機の訓練を見て怒った。
「高い!」
「あれで高いですか」
「海面すれすれですが」
「あれでもですか」
「そうだ、まだ高い」
 こう言うのだった。
「あの高さでは敵艦に魚雷を放ってもだ」
「それでもですか」
「あの高さでもですか」
「狙いが正確ではない」
 そうだというのだ。
「だからだ」
「より低くですか」
「あれよりもですか」
「さらにですか」
「そうだ、海面を這う様に進め」
 すれすれどころかさらにだった。 
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