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大阪のすねこすり

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第四章

「それで夜道で足餅にまとわりついてくるんだ」
「そうした妖怪なんだな」
「うちの学校にもいなかったかな」
「あたしが知らないだけか?」
「うちの学校全体で普通にそうした話が百以上あるからね」 
 とにかく多いからだというのだ。
「だからね」
「この妖怪もかよ」
「すねこすりもね」
 自分達が通っている学園にいるかも知れないというのだ。
「そうだろうね」
「さっきから色々言ってくれてるけれどな」
「おいら達に用か?」 
 その妖怪達の方から言ってきた、二人の足に擦りつきつつ言ってきた。
「おいら達こうする妖怪だからな」
「別に悪く思うなよ」
「これ以外特に何もしないしな」
「襲ったり食ったりはしないぜ」
「そうだよね、ところで君達神戸にお友達いるかな」
 牧水は妖怪達に問うた。
「それで」
「ああ、神戸か?」
「親戚が結構いるぜ」
 すねこすり達は二人にすぐに答えた。
「特に八条学園にいるぜ」
「叔父さんの一家が暮らしているぜ」
「そうなんだね」
「ああ、けれど本当においら達これだけだからな」
「足にまとわりつくだけだぜ」
「それ以外は悪いことしないからな」
「それは言っておくな」
「うん、ただそのこと聞いただけだから」
 牧水は妖怪達に微笑んで答えた。
「別に気にしなくていいよ」
「そうか、じゃあ充分擦り付いたしな」
「また会おうな」 
 すねこすり達はここまで言ってだった。
 二人の足から離れ闇の中に消えていった、牧水はその話が終わってから静香に顔を向けてそのうえで言った。
「そういうことらしいから」
「うちの学校にもいるんだな」
「だから運がよかったらね」
「今みたいに出会えるんだな」
「そみたいだよ、じゃあ今からね」
「家に帰るか」
「そうしようね」
 妖怪に出会ったことは何でもなかった、伊達に妖怪や幽霊の話が多い学園に通っている訳ではない。それでだった。
 二人はあっさりとした調子で家に帰った、牧水は静香を彼女の部屋の玄関まで送った。実はここでお互いにキスをしようと思った。
 しかしそれはまだ早いと二人共思ってそれは止めた、そうしてこの日は笑顔で別れた。ある日の学校帰りのことである。すねこすり達のことは覚えていたがそれだけだった。


大阪のすねこすり   完


                  2020・5・30 
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