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おっちょこちょいのかよちゃん

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53 一年生の頃

 
前書き
《前回》
 教会のシスターから「完璧な寄せ書き」を見たりえはそれを見ながらまた清水へと訪れたいと思う。そしてかよ子はりえの事を共闘する心強い仲間と思うと共に恋のライバルと意識するのであった!!

 今回からは外伝と行きましょう。なぜかよちゃんが杉山君を好きになったきっかけを私的に創作してみました!!という事で、かよちゃんの過去話となります。 

 
 かよ子は宿題を続けていた。「夏休みの友」も終わり、読書感想文および自由研究に勤しんでいた時だった。
「う〜ん・・・」
 自由研究はやはり工作にしようと思ったが、何にしようか悩む。
(それにしても杉山君はどうしてるかな・・・)
 かよ子はまた好きな男子の事を考えていた。ついこの前、東京の少女・安藤りえという女子に会った時、杉山はもしや彼女と相思相愛と貸しているのではと疑ってはいるが、それでも杉山への想いは変わらない。
(そういえば私が杉山君を好きになったきっかけって何だったったけ・・・?)
 かよ子は一年生の頃を思い出す。

 小学校へ入学して少し経った。山田かよ子は生まれつきのおっちょこちょいだった。当然、慌てては階段で転んだり、廊下で滑る。教科書を音読すれば、読む行を飛ばしたり、同じ行を二度読んでしまったりする。
(はあ、情けないなあ、私ってどうしてこんなにおっちょこちょいなんだろう・・・?)
 かよ子は自分自身が少し情けなく思った。
「ねえねえ、かよちゃ〜ん」
「あ、まるちゃん」
 クラスメイトのさくらももこ、通称まる子だった。同じおっちょこちょいをしやすいという理由で友達になった。その親友である穂波たまえとも友達になった。
「かよちゃんもおっちょこちょいよくするよね〜。アタシもなんだよ〜。今日も宿題忘れちゃったしさあ〜」
(まるちゃん、そういえば三日連続で忘れてるよね・・・)
 かよ子は流石に宿題を忘れるまではしない。まる子のおっちょこちょいぶりには心の中で突っ込みたくなった。かよ子は校庭の方を見る。そこにはクラスメイトの大野けんいち、杉山さとし、そしてサッカー少年の長谷川健太がサッカーをやっていたところだった。
「お、今日も大野君と杉山君、あ、ケンタもサッカーやってるねえ〜」
「う、うん、三人ともスゴイよね・・・」
 かよ子はあの三人のようにしっかりした男子と結婚できたらいいなと思っていた。

 下校途中、かよ子は大野と杉山の姿を見る。
(はあ〜)
 かよ子は少しでもあの二人と接する事ができればいいと思った。そして家に帰る。
「只今〜」
「お帰り、かよ子」
「うん」
 かよ子はおやつを食べながら自分の事で物思いに耽っていた。
「かよ子」
「えっ?」
 かよ子は母に呼ばれて我に返った。
「どうしたの?ボーッとして」
「あ、その、私ってどうしてこんなにおっちょこちょいなんだろうって思って」
「あらあら、そんなに気にする事ないわよ。気をつけてばいいだけの事よ」
「う、うん・・・」
(かよ子のおっちょこちょいか・・・。誰に似たのかしら・・・。それとも・・・)

 別の日。この日は体育でドッジボールをやっていた。かよ子達、特に女子は逃げるのに精一杯だった。
「はあ、はあ・・・」
 そして、かよ子はアウトになってしまった。
「あ、ああ・・・」
 かよ子は外野へ行った。その時、かよ子はまだ内野に残る杉山が必死でアタックを繰り出し、ボールを投げられても何とかキャッチするその姿。かよ子は見惚れてしまった。
「おうい、山田あ、ボール行ったぞ!」
「あ、うん、ごめん!!」
 かよ子は慌ててボールを拾った。
(そうだ、杉山君にパスしよう・・・!)
 かよ子は杉山に向けてボールを投げた。この時はなんとかおっちょこちょいをしなかった。ボールは見事杉山に渡ったのだ。
「サンキューなあ、山田!」
「う、うん!」
 かよ子は杉山に言われて嬉しくなった。そしてかよ子はこの時、ますます杉山が好きになっていくのであった。
 だが、話す事はできたものの、どう話しかけていいか分からない。話す理由も特にない。それにこんなおっちょこちょいではまともに相手なんてしてくれないだろう。結局自分にとって杉山は高嶺の花だった。
(杉山君とどうやって話せばいいんだろう・・・。普段から親友として接してる大野君みたいになれたらいいのに・・・)
 かよ子は落ち込んだ。

 そんな時、かよ子は担任の先生から頼まれたプリントを職員室から運んでいた所だった。その時、途中で二人組の男子がぶつかり、足を引っかけて来た。
「ああ!」
 かよ子は転んでプリントが散らばった。
「ったく、どこまでもおっちょこちょいな奴だぜ!」
「気を付けろよな!」
「ご、ごめん・・・」
 かよ子はプリントを拾った。その時、男子がプリントを踏みつけた。
「ああ、それは大事なプリントなんだよ!」
「へへ、取りたかったら取ってみろよ!」
「いやだ、足を放してよ!」
「るせえんだよ!」
 かよ子は泣いてしまった。その時、助け人が現れた。
「おい、お前ら!」
「自分からぶつかって来たんだろ!?謝れよ!」
 大野と杉山だった。
(す、杉山君・・・、大野君・・・!!)
「ああ、コイツがぶつかって転んだんだぜ。俺達は悪くないっつーの!」
「何言ってんだ!お前らがわざとぶつかって足引っ掻けたところを見てたんだぞ!」
「ああ!?」
 その時、女性の先生が現れた。
「ちょっと、何してるの、貴方達!?」
「ちいっ、先生が来やがった!」
 二人が去ろうとした。
「先生、こいつらがウチのクラスの女子にわざとぶつかって足を引っかけて転ばしたんです!」
 杉山が告発した。
「何ですって!?」
 もちろんこの男子二人は叱られた。大野と杉山はかよ子のプリント拾いを手伝った。
「す、杉山君、大野君・・・。ありがとう・・・」
「なあに、クラスメイトの一人なんだから、このくらいは当たり前ってもんだよ!」
「杉山君・・・。うん、ありがとう!」
 かよ子は助けられる場面とはいえ杉山と喋るタイミングが掴めて嬉しかった。

 その時こそがまた杉山とに近づくことができた瞬間だったとかよ子は回想していた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「またクラスメイトに」
 かよ子は今度は二年生に進級して杉山とまたクラスメイトになった時の事を回想する。授業・掃除・運動会と杉山は大野とのペアで色々と活躍を続けていた・・・。 
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