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友達を守る

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第三章

 ほっとしてだ、セルゲイは言った。
「逃げたな」
「ええ、じゃあね」
「すぐにな」
「ユリア達を連れてね」
「家に帰ろうか」
「お父さん?お母さん?」
 ユリアはここで両親を見て言った。
「どうしてここに」
「お昼になっても帰らないから探していたのよ」
 母が娘に答えた。
「そうしたらね」
「クズリに遭ったのね」
「まさかクズリが出るなんて」
 ユリアは真っ青になった顔で言った。
「いるってわかったら」
「ああ、もうこの森には入らない方がいい」
 父は娘にこう言った。
「クズリは怖いからな」
「物凄く怖かったわ」
「それでそのクズリからだな」
「レックスが守ってくれたの」
 今は自分の横にいる彼を見て娘に話した。
「それでそこにお父さんとお母さんが来てくれて」
「そうか、よかったな」
「レックスのお陰で助かったのね」
「うん、あんな怖い生きものがいるなんて」
 クズリについてだ、マリアはこう言った。
「思わなかったわ」
「ああ、お父さんもだ」
 父は娘のその言葉に応えた。
「クズリがいるなんてな」
「子供の頃にはいなかったわよね」
「熊だっていないからな、いや」
 父はここで気付いた、そうして言った。
「熊もいないし狼だってな」
「いないからなのね」
「クズリが来たのかもな」
「他に怖い獣がいないから」
「人を食うって話は聞いたことがないがな」
 クズリがとだ、夫は妻に話した。
「凶暴で怖い獣だからな」
「近寄らないに越したことはないわね」
「ああ、小さな女の子が敵う相手じゃない」
「そうね、じゃあね」
「村長にも言っておこう」
「子供が森に入ったら駄目ね」
「クズリがいるならな」 
 それならというのだ。
「本当にな」
「そうね、それで今回は」
「レックスに助けてもらったな」
「本当にそうね」
「有り難うな」
「今回も助けられたわ」
「有り難うね、レックス」
 親子三人でレックスにお礼を言った、するとレックスはワンと鳴いて応えた、そうしてだった。
 一家で家に帰って遅い昼食を食べた、その後で森に子供は入らない様に村で決められた。それと共にレックスは少女を守った名犬として褒められた。ロシアの小さな村の話である。


友達を守る   完


                   2020・5・26 
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