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犬のアレルギー

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第一章

               犬のアレルギー
 お互い三十を過ぎても子供が出来ない遠山武と由美の夫婦はある休日映画館に二人で行った帰り道に一匹の野良犬を見付けた。その犬は茶色と白の柴犬だったが。
 身体のあちこちに脱毛があり肌が見えていた、その肌が赤く随分と痛々しい。
 由美はその犬を見て夫に言った、黒の短い髪の毛とはっきりした大きな目を持っていて眉は細く長い。背は一六〇程だ。
「ねえ、この子」
「病気みたいだな」
 武も応えた、黒髪の優しい顔立ちの男で背は一七五程だ。腹は三十を越えてきて出て来たが然程目立っていない。
「この子は」
「すぐに病院に連れて行かないと」
 由美は夫にこうも言った。
「そうしてね」
「ああ、何とかしないとな」
「じゃあね」
 こうしてだった、二人はすぐにその犬を保護してそうして動物病院に連れて行った、そして獣医に診てもらったが。
 獣医は二人に難しい顔で言った。
「この子はアトピーですね」
「犬にもアトピーがあるんですね」
「はい」
 獣医は由美に答えた。
「そうなんです」
「そうですか」
「まだ原因はわかりませんが」
 それでもというのだ。
「この抜け毛や肌は間違いありません」
「そうですか」
「調べておきますね」
 そのアトピーの原因もというのだ。
「多分アレルギーでしょうが」
「何のアレルギーかをですね」
「はい、食べものには気をつけていきましょう」
「若し合わないものを食べたら」
「その時はこうなるので」
 だからだというのだ。
「食べさせて問題がないものだったら」
「それだけをですね」
「とりあえずお願いします」
「わかりました」
 由美が頷いてその横で武もそうしていた、こうしてだった。
 二人はその犬を自然に引き取ってだった、家族として育てることにした。子供がいない二人にとってこの犬はまさに子供の様な存在になった。
 名前は武が名付けた、その名前はというと。
「丸い感じがしているからマルにしようか」
「そういえばコロコロしてるわね」
「結構太ってるだろ」
「ええ、最初は結構痩せてたけれど」
 拾った当初はだ。 
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