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テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―

作者:夕影
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第三十一話





――ヴェラトローパ探索から帰ってきたメリア達の口から説明された事…それは驚きの連発であった。


『マイソロ』設定の特有である、この世界『ルミナシア』は唯一無二のものではなく、別の世界から分かれた枝葉であった事。
そしてラザリスの正体は、その世界になりきれなかった存在であった事。
星晶《ホスチア》は、そのラザリスを封じておくための世界樹から生み出された力であった事。

そして僕が一番驚かされた事は……この世界にも『ニアタ・モナド』が居た事であった。
正確には彼の本体は別の世界にあり、この世界に居るニアタはその一部らしいけど……別の世界…恐らく『マイソロ2』のグラニデだろう。

僕も直接あってみたかったけど……ニアタは突如襲来したラザリスに攻撃され、破壊されたらしい。


後、『キバ』の事について。
あれは薄々考えていたけど…やっぱり、ラザリスの世界の一部であった。

ラザリスの目的…それは、自分の世界『ジルディア』の誕生を拒絶しながら、自ら自滅の道を歩む世界『ルミナシア』に失望し、世界樹の根幹『生命の場』のドクメントを書き換え、自分の世界へと塗り替える…というものであり、キバはその『生命の場』を守る世界樹を徐々に弱らせる物らしい。


これから何をどうするか……それは今現在、ニアタから手掛かりになる、と言って渡されたプレートを解析してから決めていくらしい。




果たしてこれから…どうなるのだろうか。



―――――――――――――




「――それで、アナタ達は一体どういったご用件でここまでいらっしゃったのかしら?」



バンエルティア号のホール。いつもなら皆が楽しげな雰囲気を出していた場所が今、かなりピリピリとした空気を出していた。
まぁ、当たり前だろう。今、ここに来て、アンジュが対応している客人達は…周りで見ている僕達にとっては警戒するべき存在なのだから。

そう、その客人とは……――



「――我々ウリズン帝国は、今これより、アドリビトムに協力を願いにきました」


――ウリズン帝国現王女であり、『テイルズオブリバース』で知られる『アガーテ・リンドブロム』と、ウリズン帝国騎士団第一師団隊長であり、同じく『リバース』で知られる『ミルハウスト・セルカーク』、そしてウリズン帝国騎士団総騎士隊長であり、『ヴェスペリア』で知られる『アレクセイ・ディノイア』なのだから…。




「――『協力』ねぇ。今までの行動から、よくもまぁ此処に来て平然とそんな事言えるな」


「――っ!!」


「落ち着け、ミルハウスト」


アガーテの言葉にピリピリとした空気の中、皆の心中を代弁するかのようにスパーダが出した言葉に、ミルハウストはキッと周りを睨みつけてくるが、それをアレクセイが止める。

ミルハウストや周りの様子に、アガーテは顔を俯かせて口を開いた。







「…アナタ方の言うとおりです。我々の行動…無理やりな星晶の採取や、村人達の強制労働やその他諸々…謝って許されるとは思っていませんが今、深く謝罪します。ですが我々には…アナタ方アドリビトムの力を貸して頂きたいのです」


「…『暁の従者』の反乱に続き、あの謎のキバの出現……我々の領内の不安は大きくきている。我々も出来る限りの尽力を尽くし、協力がしたいのだ。だから……っ!」


そう言って頭を下げるアガーテ、ミルハウスト、アレクセイ。
ホール内がざわめく中、アンジュは一度溜め息を吐くと口を開いた。


「――正直な話、あなた方ウリズン帝国の今までの事を、謝っただけで『はい、そうですか』と許して簡単に協力しようとは少なくとも私は思わないわ」


アンジュの出した言葉に、頭を下げたままのアガーテが一瞬震える。
そしてアンジュはそのまま『――だから』と付け足し口を再び動かせる。


「あなた方には言葉よりも行動で見せてもらいます。本当に心から謝罪しているのか、私達が協力してメリットがある事なのか。更に条件として…あなた方が捕らえて労働させている無罪な村人達の解放、それと意味があるかは分からないけど…収集した星晶を元の場所に戻すこと。そして最後に…あなた方ウリズン帝国がこれからどうやって別の形で国を変えていくのか…それを確認出来たら、私達アドリビトムは協力します」


「――はい、分かりました。…ありがとうございます」


アンジュの繋げた言葉にアガーテはゆっくりと顔を上げそう言うと、再度深く頭を下げた。
ミルハウストとアレクセイも、アガーテの様子にゆっくりと深く頭を下げた。



周りのピリピリとした空気が若干穏やかになってきた…そう思った時だった。


「――ちょっと待ってくれ」


そう言って前に出たのはユーリであった。アガーテ達がユーリの方を向くと、ユーリは口を開く。



「協力願いの為に謝りにきたってんなら…なんでサレが居ねぇんだ?このアドリビトムや村に一番の被害をもたらした原因のアイツをよ」


「……それは――」


「――陛下、それは私から説明させてもらいます」


ユーリのもっともの言葉に、アガーテは顔を俯かせ口を開こうとすると、それをミルハウストが止め真っ直ぐと僕達を見た。
そして……ある意味最悪な理由が出された。


「――……ウリズン帝国騎士団第三師団隊長サレは……『暁の従者』の反乱が起きた際、その争いに紛れ、数名の兵士と研究員…そして我々が収集した星晶の一部を奪い、失踪した」


その一言は、事態を更に最悪な方向へと向ける報告であった。









―――――――――――――



「――そっか。そんな事があったんだ…」


「――うん。皆、かなりピリピリしてて大変だったよ」


――医務室にて、いまだ全快ではなく休んでいてホールでの出来事を知らなかったカノンノに説明すると、カノンノは不安げにそう言った。

サレの行方…結局ウリズン帝国はそれを知る事が出来ず、サレが一体何の目的で数名の兵士と研究員、そして星晶を奪って失踪したのか謎のままらしい。
一応兵をまわして捜索はしているらしいが、姿どころか情報一つ回ってきていないらしい。

サレ……多分、いやきっと『リバース』でのあの性格上、此方を妨害してくる事は確実だろう。警戒はしておかないとな。


「ぁ、そうだ。ヴェラトローパの話、メリアから詳しく聞いてみたんだ。凄いよね…『ヒトの祖』って」


「うん、そうだね。…世界と共に、創造する為に地上に降りたんだっけ」


不意にカノンノが出した話題に僕は頷くと、メリア達から聞いた話を思い出しながら応える。


「私達、その『ヒトの祖』の子孫なんだなって思ったら、すごく不思議な気分。
不思議で、素敵な事だと思うけど……でも、今の世界はどうなのかな…」


「……カノンノ…?」

「戦争したり、奪い合ったり、欲しがったり。皆が皆、別々の方向を見てる。…世界樹は…、寂しがってないかな」


言葉を続けながら不安げな表情を浮かべ徐々に俯いていくカノンノ。その様子に、僕はそっとカノンノの頭を撫でると言葉を出す。


「…大丈夫だよ、きっと。ウリズン帝国だって、変わってくれたんだから…皆、遅くなってもきっと同じ方向を見てくれるよ」


「ん…そうだね、今悲観的になったらだめだよね。世界を良くするために、アドリビトムはあるんだもん」


僕の言葉にカノンノは一度頷くと、顔を上げてそう言う。
僕はそれを見ると、ゆっくりと頭を撫でていた手を離した。



「ん。ならカノンノも早く体調よくして依頼を手伝ってもらわないと。今もいっぱいいっぱいなんだから」


「うん!……ねぇ、衛司」


「……ん…?」


カノンノの返事を聞き医務室から出ようと後ろを向くと、カノンノが僕を呼んだ。


「……世界が良くなったら…もしかしたらメリアは、予言の通りに世界樹へ帰らないといけないかもしれないんだよね…?」


「……もしかしたら…かもね」


ディセンダーの予言。それはディセンダーは世界を救うと、再び世界樹へと眠ってしまうという結末。
定かではないけど…僕が『元の世界』で今までやっていた『マイソロ』の通りならば…きっとメリアは眠ってしまうだろう。
僕は言葉を濁しながらそう応える。





「……なら、衛司はどうなっちゃうの…?」


「―――っ!!」


カノンノから出た言葉に、僕は思わず顔を歪めてしまう。
僕には、メリアが世界を救った後……『僕自身』がどうなるかは分からない。
このままこの世界に居続けるかもしれないし…『元の世界』に戻るかもしれない。

…ただ、元の世界に戻っても

『僕自身が生きているかどうか』は……



「――……衛司…?」


「っ――なんでもない。…どうなるのかな…僕自身にも分からないよ。イレギュラーな訳なんだし」

思考が巡り回っていると、不意に届いた不安げなカノンノの声に、僕はカノンノの方へと振り返ると苦笑を浮かべてそう冗談混じりに答えた。彼女の不安げな表情を見たくないから。

カノンノはそんな僕に対し、ゆっくりと立ち上がると……僕の胸元に顔を埋めるように抱きついてきた。


「ぇ……カノンノ……?」


「衛司……私は…君が居なくなったら……寂しいよ」


突然の事に呆然としてしまうが、抱きついたままそう声を出すカノンノに僕はそっと頭を撫でて応える。
僕自身がどうなってしまうかは分からない。だから言葉で答える事は出来ない。

ただ、今この時だけでも、長く彼女と居たい。彼女を寂しがらせたくない。
…そんな思いを込めながら……ただただ、彼女の頭を撫で続けた。




―――――――――――――



「――どうだい、全ては順調な方かな?」


「――はっ!今三割程、出来上がっております」



――様々な機器類が置かれた研究所のような場所。
そこで、一つの画面を見ながら青白い顔の男――サレと、研究員であろう白衣を着た男が話していた。
研究員の返答に、サレは不適な笑みを浮かべた。


「うんうん、順調でなによりだよ」


「はっ!ありがとうございます。…しかし、上手く完成するかの確率はいまだ25%程ですが…」


「なに、失敗すればまた作り直せばいいさ。奪った星晶はまだまだ残ってるんだしね」


研究員の言葉に、サレは不適な笑みを浮かべたままそう応える。
そんなサレの言葉に、研究員は首を傾げた。


「…サレ様らしくありませんね。『失敗しても構わない』、など」


「ん?あぁ…答えは簡単さ。…『コレ』の持ち主になる人間には、もうちょっと『強く』なって欲しいからね」


「はぁ……成る程」


研究員の言葉にサレはニヤリと笑いそう言うと再び画面へと視線を移す。研究員もそれに納得したのか、同じく一つの画面へと視線を移した。



「――そう。彼には『コレ』が完成するまでもっともっと…強くなってもらわないとね……フフフ」



『コレ』と呼ばれる物が映し出された画面を見ながらそう言って、サレは不適に、不気味に笑みを浮かべ続けていた―――




 
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