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インフィニット・ソード

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SCENE7「大陸の猛者」

 
前書き
中国のソシャゲってヒロインがエロエロすぎて目が釘付けになりますけど、逆に露出度多くてエロさを通り越して下品にみえてしまう今日この頃。これ、なんてエロゲ?
 

 
 この日、IS学園の正門を一人の小柄な女子生徒が潜ってきた。転入生だろうか、彼女は背まで伸ばしたツインテールの髪を風に揺らしながら学園の事務室に向かって歩き進めているのだが――
 「んもう! この学園の敷地っていったいどうなってるのよ!?」
 かれこれ一時間近く歩き続けているが、一向に広大なIS学園の施設内から事務室への道筋はつかめないままでいた。
 そうこうしているまに昼休みに入ってしまいそうだと、彼女は焦りを出しながら足を急がせながら今もなお、途方もなく学園敷地内をさまよっていた。
 「まったくもう――ん?」
 校舎らしき巨大な建築物の裏側へ出たところで、その敷地へポツリとたたずむ仮設の建物が見られた。
 「なにかしら?」
 少女は、恐る恐る足を進めながらその仮設所の元へ近づいていく。
 「……ネオファリア?」 
 仮設所の入り口付近に立てかけられた縦看板にそう書かれていた。
 「ネオファリア――どっかで聞いた覚えが……」
 「あれ? 君、学園の生徒――だよね」
 「――?」
 その聞き覚えのありそうな声に振り返ろうよする少女、中国からの代表候補生である凰鈴音(ファン・リンイン)は自身に開けられた声の主へ振り帰ったのだが――
 「い、一夏!?」 
 そこには小さいころから思いを寄せていた幼馴染の青年が、大人びた容子でこちらに立っていたのだ。
 「え?」
 しかし、青年はきょとんと首をかしげる最中で凰は当たり前のように馴れ馴れしい声を浴びせながらこちらへ駆け寄ってきた。
 「あんた一夏? 一夏よね」
 「え、いや俺は――」
 「よかった! 実はあたしもこの学園へ転向してきたのよ。いやぁ~施設がものすごい広くてさ、受付の事務室が何処へにあるかわからなかったのよね。あ、よかったら案内しなさいよ」
 「だから、俺は――」
 「んもう! ドンくさいのは相変わらずね? あたしよりも背がすっごい伸びたからって言ったって、まだまだ頼りないんだから――」
 ――何だこの子?
 次の講習へ向かおうとした矢先、突然見知らぬ少女に呼び止められて、さらにまたしても自分のことを「一夏」と勘違いしているのだ。挙句に事務室へ案内しろって――こっちは早くいかないと千冬がうるさいのなんのって…… 
 「あの、君――」
 「はやく、案内しなさいよ!」
 強引にも、彼女は一夏と勘違いした彼、織部彩夏の片手を取っ掴んでここから校舎の表側へ連れ出した。
 「ねぇ、事務室はどこ?」
 「あのなぁ……」
 ――まぁ、そんなに遠くないし、急げば間に合うか。
 と、彩夏は自身の片手を握り掴んでいる彼女の片手を、握り返した。
 「あっ……」
 急に握り返されたのか、凰は途端に顔をポッと赤くし出した。
 「付いてきてくれ、こっちだから」
 「う、うん――」
 一夏、なんかすっごいクールで大人って感じ――
 急に見せた大人っぽい風格は、どこか彼の姉である千冬を思わせた。が、不器用すぎて優しさを表情に出さない千冬とは違って、この``一夏``は彼の姉とは違って案内しようっていう親切心が顔に出ている大人の顔であった。
 「――ここだ。後はわかるか?」 
 「うん――あ、ありがとう」
 「じゃあな」
 そういって彼は通路をかけて教室へ急いだ。
 「あ、ちょっと――」
 もう少し、大人びたイケメンクールな幼馴染をもう少し見続けていたかったんだが……
 「あれ? でも、あいつの着ていた制服ってウチの制服と違うような――」
 青色の上着に灰色のズボンは、どう見てもIS学園の制服というよりは国連軍兵士の制服と似ているような気がした。それに、腰につけている黒いホルダーの膨らみはひょっとして――
 「ま、いっか!」
 あの顔はどう見ても一夏なんだし、彼もIS学園に入る前はISの訓練のために軍へいたんでしょうと、勝手に理由づけて事務室の窓口で手続きを行った。
 *
 仮設部署の二階にて、彼らの担当を任せられた元司令官の篠ノ之慈は今日もネオファリアのメンバーと共に苦手なデスクワークに奮闘していた。そう、今日はいつも以上に奮闘していたのだ。
 「よし! これもよし!」
 そんな彼女のデスクに一杯のコーヒーが置かれた。
 「主任士官、コーヒーよろしければ」
 ネイナであった。白衣を羽織ったいつもの彼女がいれたてのコーヒーを奮闘中の彼女にふるまった。ネイナ自身もこれまで博士兼主任という両方二役を担わされていたために多忙であったが、こうして主任としての勤めを代わりに慈がしてくれるようになったので大好きなソードの研究開発に没頭することができる。それに関しては感謝していた。
 「ああ、博士。お忙しいのにすみません――その……」
 とはいえ、束を妹に持つ彼女からしてネイナは彼女を未だにどう思っているのか不安であった。
 「確かに妹さんは嫌いです。でも、貴女のことは好きよ慈主任」
 そう笑顔で言った彼女は続けて、
 「――准尉も、御両親をISのテロで亡くしているけど、だからと言ってもう貴方のことを憎んでいたりはしないわ、当事者ではないもの。そりゃあ、誰だって真実を知ったら戸惑うわ。それをどう受け止めるかよ。准尉は、その迷いをネクストワンに加え『ニュータイプ』として目覚めた能力も働いて、主任も被害を受けた人間の一人って悟ったわ。後は、貴女があの子を好きになるだけよ」
 そのとき、貰ったコーヒーを吹き出しそうになった慈は、とっさに誤魔化した。
 「ち、ちがう! その――」
 顔を真っ赤にする慈に、ネイナは続けた。
 「大丈夫。昨日の夜、准尉に一目惚れしたのよね」
 「う、うむ……」
 顔を赤くしながらも、静かに頷いた。周囲のメンバーは聞かぬふりをしつつもデスク作業をしながらそっと耳を傾けていた。
 ――織部、彩夏……
 その名を心の中で唱えるたびに胸が苦しくなる。あのとき、過去の悲しみを引きずり続けていた自分の事を思い、過去の悲しみにすがり続ける自分のために彼を棗と重ねて愛すことをやめさせてくれた思いにこそ、彼女は心底惚れていたのだ。
 『俺もあなたと一緒に頑張りますから、織部彩夏という一個人を見ていてください』
 あの夜に彼が行ってくれた言葉が、今も忘れずに根付いている。思い出すたびにあの時言ってくれた彼の真剣なまなざしを思い出してしまう。
 ――ニュータイプの力とやらは、女を心底虜にしてくるな……
 気づけば、自身の机の上に積み重なっていた書類はなくなっていた。彩夏との夜をきっかけに仕事にも熱が入って早急に終わらせてしまったのだ。
 「あら、もうお仕事はないのかしら?」
 「あぁ――今日やるだけの仕事はもうないな。ほかのメンバーの手伝いでも……」
 「主任、こちらは間に合っております」
 と近くのデスクのメンバーが言い出した。
 「こちらもです」
 「自分の方ももうじき終わります」
 「え……?」
 キョトンとする慈に、ネイナもこういいだした。
 「ソードの視察といっても、今日はメンテの日じゃないから私の方も間に合ってるわ主任」
 「いや、それはだめだ! 主任たるもの、何かないのか博士」
 「じゃあ……准尉の視察でもどうかしら?」
 「彩夏――准尉の!?」
 一瞬名前で呼びそうになってしまうほど慈は取り乱してしまった。
 「慣れない女子高での講習活動で気がめいってるかもしれないし、彼の心の状況を聞き出したり上司と部下という関係上のコミュニケーションを築くのも、主任としての御勤めよ。丁度お昼休みだから准尉だったら学食にいるんじゃない?」
 「う、うむ――では……その、視察へ向かう!」
 そういうなり、彼女はまじめな顔を保ちながら二階から一階へ降りてきた途端、仕事から一時の解放感を得たのように、可愛らしい声で鼻歌を口ずさみながら早歩きで一階のから仮設部署をでようとしたところ、
 「――慈?」
 一階で休憩をとっていたキースの存在に気付かないまま、彼にその鼻歌を聞かれていた。
 「……」
 無言のまま、きしむ音を立てながら恐る恐る彼の方へ振り向いた。
 「おう――うん」
 会釈をするキースだが、しばらく間を置いたところで。
 ニヤッ――
 「うわぁぁぁぁぁぁぁ~!!」
 にやける大尉の顔を合図に彼女は恥じらいながら部署から飛び出してしまった。
 「聞かれてしまった――最も聞かれたくない奴に聞かれてしまったぁ……うぅ~」
 恥じらいながら両手で顔を覆う彼女のもとへ、
 「えっと、篠ノ之慈さん?」
 そんな彼女の元へ怪訝な表情を浮かべて歩み寄ってくる一夏の姿が現れた。
 「えっ? あ、あぁ――君か」
 「あの、その都度はちゃんとした挨拶もないまま失礼しました。箒の幼馴染で織斑一夏っていっます!」
 そう礼儀よく一夏は頭を下げて挨拶に来てくれた。やれやれ、姉弟でこの差とは……
 「ああ、確か――箒の幼馴染だったな。千冬の弟君だね?」
 何故、慈が一夏と出会わなかったかというと、それは当時束が必要以上に慈を嫌い続けていたのだ。それも殺意といっていいほとであった。
 そんな束の危なさを見兼ねた父親が慈の身を案じて彼女を棗の居た親戚の家へ預けたのである。そこから同じ学校へ通っていた。学校では極力他人としての素振りを続ければ束もこちらへ嫌悪感を抱かなかった。何より学園にいるときの束は、親友の千冬には異性との恋愛かというほどベタベタしていたからだ。見ていて気味が悪かったし、正直キモい。
 よって、滅多なことでは自宅へ帰ることは出来なかったので当時の一夏と直接顔を合わす機会はなかったのだ。
 「姉がいつも世話になってます。それと箒には世話になりました」
 「うむ、千冬は堂々と世話になっておるな。箒は迷惑をかけてばかりだろう」
 ついボソッと愚痴ってしまった。
 「ははは、ウチの姉は鞭ばっかで飴の欠片もないような厳しい人ですからね」
 と言って、一夏はついでにとこう続けた。
 「あ、そうそう! 実は中国から俺の小学校からの幼馴染が転校してきたんですよ。そいつも代表候補らしいので、もしかしたら実技で彩夏さんと戦うかもしれませんよ?」
 「そ、そうなのか――」
 イギリスの次は中国か、面倒なことにならんと言いが……
 「あ、その中国の代表候補ですけどあまり近づかない方がいいですよ。アイツは箒以上に凶暴で最凶な奴なんで」
 「不良なのか?」
 「不良以上におっかないですよ。まぁ、中国人ってもろ‘‘リアルゼントラーディ‘‘みたいに三国志いわく闘争本能半端ないから、うかうか近づいたらカンフー蹴り食らいますよ」
 そう爽やかなスマイルで言ってのけた一夏を見て慈は苦笑いした。
 「そ、そうか――」
 中国以前にその幼馴染のことが単に嫌いなのか彼は。
 しかし、中国と言えば最近ISの技術に力を入れてきた、「IS先進国」になりつつある国家だが、それ同様にソードや反IS思想の存在にはかなりの敵意を向けてくるとのことだ。
 これは、あまりその幼馴染とやらとも接触は控えるようにしないといけない。うかうかしていてらソードの技術も盗まれるかもしれない。
 「じゃあ、俺はこれで失礼します!」
 「あ、ああ――」
 ――なるほど、中国の代表候補か……
 これは、ネオファリア主任として目を光らせておいたほうがいい。
 「あ、彩夏!」 
 とっさに思い出した彼女は昼休みが終わってしまいそうだと急いで校舎の学食へ向かった。



 そのころ、彩夏は学園内の食堂に居た。ネオファリアの面々も学食を使用できるが、使っているのは彩夏ぐらいしかいない。
 とにかくも食堂へ顔を出せば真っ先に他の生徒たちに一夏同様声をかけられる。
 「彩夏さーん! こっちこっち!!」
 「あ、ああ……」
 そんな彩夏もIS学園の生徒たちへの接触は拒んでいなかった。仲良くしていればISに関して詳細な弱点を聞き出せるのではとも思っているため、それも意識して近づいているのだ。今はそのためにもコミュニケーションを深めておく必要もある。パイロット科以外にも整備科の生徒達から詳しい情報を掴もうとしていた。
 「この前のセシリアさんの事件、大変でしたね?」
 「ああ、まぁね」
 一人の生徒がそういう。何せ、セシリアのドラゴン事件でISを兵器として認識し始めた生徒たちも極一部であるが出てきた。
 兎に角も、ISがあんなことになるなんてとこれでは欠陥品もいいところだと言い出す生徒やISも十分な兵器だと肝に銘じる生徒たちが現れたのは確かである。
 「一緒にお昼食べようよぉオリベー」
 余り過ぎた袖を振りながら一組の一人、布仏本音も声をかけた。
 「じゃあ遠慮なく?」
 彼女立の席に座って、唐揚げ定食を前に「いただきます」と手を合わせてから箸をつけた。
 「ねぇ、織部さん。結局クラスの代表はどうなったの?」
 と、セシリアと決闘することになった際の切欠の落ちを訪ねてきた。結局、そのままオジャンな形になったので最終的に一組だけはまだ決まっていない。
 「私達考えたんだけどさ、織部さんのソードっていうのめっちゃくちゃ強いでしょ? だから、織部さんが一組の代表ならって」
 「ああ、すまんが此方には期間内までしか滞在できないんだ。主にISとの模擬戦闘で得られたデータを取るための任務なんだ」
 「え、じゃあ期間を過ぎたら軍へかえっちゃうんですか?」
 「ああ、それまでの間はよろしく頼むよ?」
 「やだやだぁ~! オリベ―行っちゃやぁ~!!」
 そういうなり、駄々をこねて本音が彼の脇腹に抱き着いて泣きだした。
 「こらこら、織部さんだって忙しいんだからわまままいわないの!」
 そういって隣にいた親友が呆れた顔で本音を見た。
 「ははは……」
 相変わらず女子生徒の輪に入るのだけは慣れないなと、絶えない苦笑いを続ける彩夏であったが、そんな彼を遠くのオブジェ裏から半身を出して見つめている一人の姿があった。
 慈である。共に昼食を取りながら容態を聞くなりのコミュニケーションを図ろうと笑みを浮かべながら張り切って食堂まで足を運んだものの……
 ――あ、あ奴! よりにもよってあんな子娘たちと楽しそうにしているではないか。
 心配して損したという以前に、案外女子高を楽しんでいるという呆れと、大人げないが子供たちに対して嫉妬をしてしまう彼女がいた。
 が、そんな心を女特有の悪い性分だとすぐさま気持ちを切り替えだす。
 ――いやいや、ここで感情的になってはならん! 断じてならん!!
 勝手に決めつけて、感情的になるのは女という生き物の悪い癖だ。大体、女という生き物は子宮でしか物事を語らぬ単純極まりない生き物だ。
 賢い女というのは、常に冷静沈着に理性で物事を的確に判断し、誤解をせず感情的に突っ走らない女のことを言う。対して、感情的に突き動かされてすぐ行動に走ってしまう奴はただの馬鹿な女とよばれる存在であり、社会では鼻つまみものである。
 かつて、恩師である軍の士官から「感情的に走るな」という教えを何度も厳しく言われた。特に軍人であらば常に冷静であれ。そして物事を感情論ではなく詳細な社会情勢と知識論、常識的理性論で答えろ。
 そんな恩師の教えを守り抜いて彼女は司令官という座まで上り詰めた。彼女の貢献はミソジニーな軍人達からも認められ、人望も厚い。それは彼女は彼らも認める賢い女だからだ。
 そして、そんな彼女だから今後の国連軍全体の命運を左右する人型機動兵器ソードの開発部門「ネオファリア」の担当主任という、司令官職以上の大役を任せられたのである。
 ……とはいえ、まだ若さゆえにその辺にいる年頃の娘と同じ中身故にまだまだ精進が必要でもあった。
 「……准尉、そこにいたのか。食事中にすまない」
 彼女はそのまま彼の元へ歩み寄った。
 「あ、主任! ちょうどよかったです」
 彩夏は、慈がいいところに来てくれたと事で喜んでいた。何せ、詳しい情報も聞きだせないうえにどうでもいい話に理解を求められながら聞き流すという絡まれごとから逃げ出したかったのだ。
 うかうかと適当に女子生徒たちとの輪に首を突っ込むものではない。
 「そうか、実はこちらも仕事面で貴様に急用がある」
 「はい、あ――直ぐに済ませますので」
 と、定食を見てから彩夏が言うと、
 「いや構わんよ。それよりも――貴様が良ければ一緒にどうだ?」
 「是非! あぁ、ごめんな今から仕事の話をしてくるから」
 そういって、本音たちを振り払って定食のトレーを抱えながら慈の元まで席から立ち上がった。
 「では、あちらの席へ――少し待ってい居てくれ」
 そういって、彼女も券売機へ向かった。彼に聞こえないように鼻歌を口ずさみながら。
 ネオファリアの軍人にして、美女でもある篠ノ之慈が券売機へ近づくにつれて周囲の生徒からも彼女に向けた声が飛び交ってきた。
 「うわぁ~すっごい綺麗――モデルさんかな?」
 「でもあの制服は『国連軍』の人?」
 「織部さんと仲良さそうにしてる――もしかして彼女さんかな?」
 「うわぁ~追い越されたぁ~!!」
 ――わ、私達はそう思われているのか?
 顔を赤くして、掛け蕎麦のトレーを恥ずかしそうに俯きながら彩夏の居る席まで運んできた。
 慈も、両手を合わせて「いただきます」と言ってから割りばしを割った。
 「して、先に准尉からの用件を聞こう――」
 「まぁ――その、先ほどの生徒たちにしつこくされましてね、抜け出したいところへ丁度主任が来て下さったので助かりました。生徒たちとうまく接触を図ってISに関する詳細な情報を聞き出せないかとコミュニケーションを取ろうにも、全然話にならなくて……」
 「なるほど、大の大人が少女たちに絡まれていたのだな?」
 「め、面目ありません――」
 「まぁよい、私も今後は准尉と仕事面でもうまくやっていけるようコミュニケーションを取りたいゆえ、こうして食堂まで足を運んだまでだ」
 ――なんだ、やっぱり私の思い込みではないか。
 とっさに感情的になってしまった自分が実に恥ずかしい……
 「して、ハイペリオンの状態はどうだ?」
 「すこぶる快調です」
 「それならいいが、パイロットである准尉のほうはいかがかな?」
 「今のところ体調具合に支障はありませんよ。出撃となればいつでもスクランブルできる覚悟ですから」
 「うむ、それを聞いて安心した――」
 「一夏!」 
 そんな二人の元へ例の中国少女が駆け寄ってきた。
 「またか……」
 いい加減に俺は一夏じゃないと強めに言った方がよさそうである。
 「探したわよ? こんなところで――あれ? 千冬さん――じゃないわよね? 誰よ! その人」
 少し、嫉妬したように感情的になる凰を見て慈はため息をついた。
 ――こういう子娘が一番腹が立つ……
 少女だからという理由で大目に見ろというが、こういう年頃から女というものは感情を抑える努力をしなくてはならないのだと、慈自身は思っている。
 「君――」
 そう言って、慈は凰へ振り返った。
 「は、はい……」
 そのクールビューティーな容子の女性にビクッとした凰は、一瞬で体がピシッと固まった。
 「冷静に物事を理解しなさい。彼は、本当に君が知る一夏君かな?」
 「えっと――」
 そういって、凰はまじまじと彩夏を見ていると――
 「何となく……違う? でも、一夏よ!」
 私は間違っていない! の一点張りをする凰に慈は懲りない奴だとまたため息をついた。
 「彩夏さん! 慈さんも」
 すると、ちょうどいいところで一夏が定食のトレーを持ってこちらへ来たではないか。そんな少年と凰がばったり視線が合ってしまった。
 「あ――」
 一夏は、会いたくない人物とあってしまったことで膠着してしまう。
 「い、一夏!? 一夏が……二人!?」
 片手の指先が彩夏と一夏へ左右に行ったり来たりする。慌てふためいて動揺する彼女に慈がこう言い決めた。
 「先ほども言ったが、ようく考えて自身の誤りを認めないといかん。隣にいる彼は私の部下で織部彩夏准尉といい、君と目が合っている少年こそが君が会いたがっていた織斑一夏君だ」
 「ま、まぁいいわ! 一夏、一緒に食べなさいよ!!」
 気を取り直して、ご機嫌の様子で一夏の肩をつかむ凰だが、
 「悪いが、俺は今日一人で食うから――」
 「はぁ!? 何でよ、私が誘ってるのに!!」
 と、肩を激しく揺さぶりだす。
 「こら揺らすな! 飯がこぼれるだろうが――」
 「納得いかないわ! どうしてなの!?」
 「うぜぇ――」
 一夏はその場を後にして、そんな彼の後を追う凰は食堂にその大声を張り上げた。
 ――中国の者は声が大きいな……
 元気があっていいことだが、場所を選んでもらいたい。少しは静かにしてくれと思う慈であった。
 「そうだ、この前はご自宅でとてもお世話になりました主任」
 と、准尉の一言に慈は顔を真っ赤にしながら手元の定食の方へ俯いてしまった。
 「い、いい。気にするな、私が誘ったのだから……」
 「それで――今度、来週の金曜にでもご一緒に飲みへ行きませんか?」  
 「え、えぇ――!?」
 誘われた? そんな衝動にかられる慈だが、
 「し、しかし――准尉はまだ十九だったな?」
 「ええ、実はその日に二十歳になるんですよ」
 「そ、そうか! なら祝ってやらないとな」 
 「別にいいですよ。今度は、大尉と博士も誘っていきませんか?」
 「え! ふ、二人も――か?」 
 途端、感情を制御しようと必死な彼女はついついしょんぼりとしてしまった。
 「あれ? 何か……」
 「――い、いや! うむ、飲むのは大勢のほうが楽しいからな、うむ!!」
 「じゃあ、そろそろ休憩時間は終わるので自分はお先に失礼します!」
 「あ、ああ――頑張れ」
 結局、再び二人きりになれることは叶わなかったようで、それが顔に半分出てしまっていた。
 ――いかん、上に立つものとして抑えろ!
 そう自身に言い聞かせ、彼女も食事を終えてから仮設部署へ戻った。
 さて、午後の実技授業のためアリーナでは授業開始前に千冬から今後のトーナメント戦についての説明が始まった。
 「今後のクラス戦についてだが、ネオファリアの方たちもソードで期間内にクラストーナメント戦へ参戦することにした。また、クラス代表に関してだが――結果的に織斑が自ら志願してくれたとのことだ」
 クラス代表は一夏に決定した。彼が自ら志願したことに周囲はいくつか疑問を持った。
 「しかし、一夏はまだ専用機を持っておりませんよ?」
 箒である。彼やたのクラスメイト達はこれまで一夏が一度もISに乗って実技に出てきたためしはないのだ。現に今日も制服姿で周辺に広がる観戦室の一つに座って手を振っている彼が見えた。 「それに関してはシミュレーションをしているから問題ないそうだ」
 ちなみに、彼の初陣は次のクラス戦である。その時に彼専用の機体が到着するのであるが、本番ぶっつけで大丈夫かという周囲の不安もあった。
 しかし、今の様子からして自信ありきなために大丈夫なのだろう。
 「では、各自ISを展開!」
 その後、生徒一同は慣れない手つきで次々に通常時間外でISを展開しだした。本来、ISの展開時間た0、数表とのことだから恐れ入る。
 「さて、御待てせしました。こちらは準備はできておりますのでネオファリアの皆さんもソードを展開してください」
 千冬の言葉に彩夏とキースは右手首の腕輪から念じてソードを展開した。一瞬でアリーナの地に立った二体のソードの出現はIS並みの展開速度であった。
 もちろん、展開した彼らは次に気づけばソードのコックピット内へ転送されているのだから、これは実に便利である。
 「准尉、嬢ちゃんたちを踏んづけねぇようにな?」
 「了解」
 足元からこちらを見下ろす、大勢の打鉄を装着した生徒たちを見て、いい気分だとキースは思ったことだろう。常に男がISを見お上げる立場だったのが一転という気分だ。それならそれで彩夏も気分がいい。
 授業は開始された。内容は、生徒全員がソードと模擬戦闘をするという事だ。IS側にはセシリアはこの場には居ないことで専用機はない。ゆえに現存は打鉄のみである。
 二機のソードはSEシステムの推進力によって砂煙も立てず低空へ浮上すると、地上の打鉄にむけてバルカンのペイントをバラまいた。
 ハンデでSEフィールドは使わず、打鉄がブレードやライフルで攻撃して一撃でもソードへ命中させたら彼女たちの勝ちであるが――
 次々に地上の生徒たちはペイントまみれにされていく。これではもう一方的な攻撃で会った。
 「やれやれ――山田先生」
 そういって、これ以上は見てられんとスナイパー仕様の打鉄を装着した後の山田に命じた。
 「は、はい!」
 もと日本の代表候補生である山田は得意のライフルを構えた。
 「嬢ちゃんたちだけが相手とは退屈だな」
 「あれ? 大尉! 熱源が――」
 「ああ――?」
 とたん、タイラント改の目の前をギリギリでスナイパーのビームが通過したではないか。
 「あぶなっ! 誰だよ!?」
 大尉がスクリーンを拡大すると、そこにはスナイパーを構えて、こちらへ銃口を向ける山田の姿があった。
 「あの牛乳眼鏡の――ハンデを変えやがったな!」
 大尉はすぐさま、僚機の准尉へ命じる。
 「准尉、千冬の腰巾着が相手で出てきやがった。油断するなよ」
 「は、はい――うわっ!」
 今度は今度はハイペリオンにもビームが横切った。
 「お次は教員相手かよ!」
 そんなドッキリ展開に対応を焦らされる彩夏は、次々と撃ってくる山田のスナイパーライフルのビームを回避するのに必死だった。タイラント改も同様である。こんなアリーナという限られたフィールドで、低空での模擬戦だ、全長十八メートル程のソードには状況的に不利であった。
 そして、二体のソードが追い詰められて互いの背中がぶつかり合った。
 「じゅ、准尉! 気を付けろ」
 「す、すみません――」
 お互い様である。彼らはまんまと山田の戦術によって追い込まれていたのだ。
 「ソードは、低空での限られたフィールド内では不利というわけか」
 そんな、地上から山田の戦術の姿を久しぶりに見上げている千冬はじっくりとソードに対して自己研究していた。頼りのSEフィールドも重火器を使えば敗れると思っているのだろう。彼女立とて一方的にやられ続けるわけではない。学園の顔もあるため少しはソードの彼らへお灸をすえてやらねば学園側の職員、とくに学園長は納得いかないだろう。
 「切り札を召喚させたというのか、卑怯者め」
 そう千冬の背後から慈が歩み寄ってきた。
 「――ネオファリア主任、此処は危ないので博士のいる観戦室内へお戻り願います」
 不愛想に言い返す千冬に慈も、
 「私は現場派の人間でな。主任たるもの間近でソードの状況を見定める義務がある」 
 と、言い返した。そして、慈は観戦室でハンデを付けられてウズウズしているネイナの元へ電話をかけた。
 そして、本気の目を空に向けてこう命じる。
 「ネイナ博士、直ちにSEフィールドの展開と全武装の使用を許可する。ソード二機のパイロット達へ全力の本気で戦うよう指示してくれ」
 『待ってました、その言葉!!』
 ネイナはすぐさまソードの彩夏達へ伝えた。
 「聞いての通りよ!」
 「へへ、ありがたいぜ主任さんよ!」
 そして、彼女の話を聞いていた彩夏も。
 「主任――ありがとうございます!」
 「ッ!!」
 そんな彼からの礼に慈はまたポッと顔を赤くして目を見開いてしまった。
 ハイペリオンの両手には主要武装のSE式ビームアックスが転送、握りしめられた。タイラント改は両手にビームサーベルを二刀流で構える。
 「相手が代表候補上がりの教員なら本気でいくぜ!」
 そういうと、キースはビームを受けたりかわしたりを繰り返しながら上空へ逃げた山田機へその機体で躍り出た。
 「え――?」
 一寸で間合いに入ってきた巨体の振り下ろすビームサーベルに直撃。幸いネイナが威力を調節しているのでISのシールドを削るだけに過ぎないが、それでも威力は半端ない。
 斬りつけられて地面へ低下する山田機を待ち構えるのはハイペリオンソードのビームアックスである。
 「落ちろ!」
 バットでボールを打つかのようにアックスの先端が山田機に直撃、そのままさらに高速で地面に直撃した。
 アリーナの地面へ大の字になって「張り付いた山田機へハイペリオンがトドメのSE式ビームガトリングでアリーナにクレートを作らせた。
 これまたオーバーキルでフルボッコにされた山田機は完全に戦闘不能であった。
 「や、やりすぎですぞ篠ノ之主任!」
 慌てて怒りに来る千冬に気持ちよさそうな顔をする慈は愉快に笑っていた。
 「はっはっは! しかし、これで十分に良いデータが取れました。感謝しますよ織斑先生」
 そして慈はハイペリオンの活躍を見て、
 ――さすがは私が見込んだ部下だけはある!
 織部彩夏への第一歩の好意が進展した。
 「すげぇ! やっぱ、ハイペリオンはマジッ半端ねぇよ!!」
 興奮気味の一夏は地面へ降り立つ二体のソードをみながら興奮が止まらずにいた。
 その後、どちらが強いかと張り合っていたISの生徒たちもこの日だけは大人しく黙っていた。それと、ソードを決して本気にさせてはいけないという事も山田の最期を見て思い知ったことだろう。
 そして、山田はしばしソード恐怖症になった。ハイペリオンのアックスでバッティングされたことがまだトラウマになっているのだろう。
 「ふぅ~今日はソードのど派手な戦闘が見れてよかった!」
 今日はいい日だと一夏は満足げに放課後、寮へ帰った。
 すると、
 「い~ちか!」
 凰がルームメイトに変わっているという悪夢が目の前に。
 「すみません、部屋を間違えました」
 即答してクルっと背を向ける彼に凰は泣きついて引き留めてきた。
 「まってよぉ! 一夏ぁ!!」
 「ってか、なんで俺の部屋にいるんだよ!?」
 「ルームメイトだからよ!」
 「俺のルームメイトは箒じゃ――」
 「代わったのよ! 千冬さんがこうしろって」
 「ああ……あの糞姉貴、何が楽しくてこんなことすんだ!」
 「ところで、あのときの約束覚えてる?」
 「あぁ? 何のことだ?」 
 「って――忘れちゃったの!?」
 「いやお前の約束なんて知らねぇし――約束?」
 約束なんて、帰り道が真反対なのに一緒に帰らなかったらぶっ飛ばすと脅迫されたことや、まずい中華料理を食べさせられて残したりしたらぶっ殺すと脅迫されたことか、遊ぶ誘いを断ったら拷問するという強迫しか思い出せないでいる。
 「約束っつうか……脅迫じゃね?」
 「脅迫言うな!あんたはアタシのことが好きなんでしょ!?」
 「え?」
 そんな思い切った彼女の思い込みに一夏はきょとんと首を傾げた。
 「えっと――勘違いじゃね?」
 「んなわけないでしょ!? あんた、あのときアタシのお店でアタシのこと好きって言ってたじゃない!?」
 「店でって――あれ? あ、あぁ!」
 思い出しようであるが、
 「あれはお前じゃなくて凰の伯母さんのことだよ」 
 「……へっ?」
 突然頭が真っ白になるように凰に一夏は続けた。
 「お前のお母さんの妹さんも食堂で働いてたろ? よくお前にいじめられては伯母さんに慰めてもらったよ。本当に優しくていい人だったな~今頃何してんだろ。会いに行けたら会いに行きたいよ」
 「じゃあ、好きっていたのって――」 
 「ああ、お前の伯母さんのことを好きって言ったんだよ」
 「……」
 その後、突如カバンから青龍刀を片手にぶん回しながら暴れまわる凰を静めさせるのに一夏は大層苦労した。
 「覚悟しなさいよ! 乙女の純情を踏みにじったこの大罪は明日の対抗戦で晴らしてやるんだから!!」 
 「大罪って――お前の一方的な思い込みだろ?」
 「うるっさい! そんなことよりも覚悟しなさいよね!?」
 そういうと、彼女は寮から出ていった。
 「おいおい何処へ行くんだよ?」
 「今日はクラスメイトの部屋へ泊めてもらう! ほっといて!!」
 その一言で、今夜はラッキーと一夏は内心ガッツポーズをしたのは言うまでもない。
 「明日、あんたのISをアタシのISでボッコボコにしてやるんだから!」
 「へぇ……俺の``IS``でね?」
 一夏はにやっと笑んで続けた。
 「いいぜ、待ちわびた新型を扱えるんだ。初陣で負けるわけにはいかないよ。でも、俺ISは結構デカいんだぜ。あの``ソード``みたいにな」
  
 

 
後書き
次回
「飛来する一角獣」 
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