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戦国異伝供書

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第八十六話 紫から緑へその九

「時がかかる、その時まで家を一つにしてな」
「政をしていき」
「そして戦もですな」
「その様にしていきますな」
「そうしていこうぞ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 松壽丸は今は学問や武芸に励みそうしてだった。 
 義母である杉大方にも多くを学んでいた、杉大方は彼に対して念仏を教えさらに日輪を見せて語った。
「お日様は尊いののです」
「天照大神ですね」
「そうです、神はこの尊い女人の女神であり」
 そしてというのだ。
「仏では日天ですね」
「その両方であり」
「これ以上はないまでに」
 まさにというのだ。
「尊いものなので」
「だからですか」
「強く信じるのです」
 こう松壽丸に話すのだった。
「宜しいですね」
「そうしてですね」
「そうです、神仏を敬い信じることを忘れない」
「義母上がいつもお話されていますね」
「そしてその中でも」
 まさにというのだ。
「今私が話している様に」
「日輪への信仰をですか」
「持つ様に。日がなくして何もありません」
「世を照らすものなので」
「そうです、昼は日があればですね」
「照らされ、そして夜は」
「月がありますね」
 杉大方はそちらの話もした。
「そうですね」
「はい、夜は」
「月も尊いですが」
「本朝の神々では日がよりですね」
「高天原の話もしましたね」
「読みました」
 古事記をとだ、松壽丸は答えた。
「そして今日本書紀も」
「松壽丸殿は学問に励んでいますね」
「学問と武芸に励めば」
 それでとだ、松壽丸は杉大方に明るい声で答えた。
「それが必ずです」
「貴方の力になるからですね」
「そう義母上が仰ったので」
 それ故にというのだ。
「両方に励んでいます」
「よいことです、そこにです」
「神仏を敬うこともですね」
「忘れないことです」 
 決してというのだ。
「よいですね」
「そのこと誓います」
「そして」
「それで、ですね」
「生きていくのです、さすれば」
 杉大方は松壽丸に優しい声で話した。
「神仏特に日が貴方を護ってくれますし当家も」
「毛利家もですか」
「護ってくれます」
 そうしてくれるというのだ。
「ですから」
「そのお言葉忘れませぬ」
「その様に。そして家中と民への仁愛もです」
「忘れないことですね」
「決して」
 このこともというのだ。
「宜しいですね」
「戦国の世であっても」
「家中で非道な者を誰が信じるでしょうか」
「信じられずですね」
「やがては身を滅ぼします」
「だからですか」
「そして民を大事にせぬなら」
 それならというのだ。 
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