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木の葉詰め合わせ

作者:半月
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本編番外編
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  此処ではない他の世界で

 
前書き
もしもこの作品の主人公が原作世界にトリップしてしまったら……? というリクエストから始まった話です。 

 
 ――此処は一体どこなのだろう?

 つい先程まで隣で休憩を取っていた扉間の姿はどこにも無いし、精が出ますねといって差し入れを持って来てくれたミトの姿も見当たらない。
 森なのは確かなのだが、今現在私がいる森に関しては生まれて来てからの十数年近くで見た事も無い。
 はてさて、そうなると今の私は迷子状態なのか。
 ううむ、仮にも千手の次期頭領ともあろうものが一族の集落内で迷子になるだなんて笑えない冗談だ。

 それにしても、つい先程この辺りで暴風でも発生したのだろうか。
 目に見える範囲だけでも森の木々は無残にも薙ぎ払われている様だし、地面のあちこちが陥没しまくって大穴を晒している。

 暴風と言うよりも怪獣が出て来て暴れ回っていると考えた方が楽そうだわ。

「……参ったなぁ。本当に此処はどこなんだろ?」

 怖いものなどありはしない! と日々豪語している私だが、この状況はいかんせん不安にさせられる。

 昼寝から目が覚めたら、周りに誰もいなかったんだぞ。
 しかも周辺の状態は滅茶苦茶だし、そんな風にする様な大事件が起こっていたにも拘らず、気付かなかった自分が怖い。

 そんな事を考えながら比較的被害のない地面を選んで歩いていた私だったが、目の前に見えて来た黒い物体に目を見開いた。

「うっわ……。酷い怪我だな、この人。血がだらだら出てるし、剣が何本も刺さっているし……、ん? でもどっかで見た様な気がしなくもない」

 血の気が失せて青ざめた表情と、長い黒髪。
 固く閉ざされた瞼の奥の双眸は明らかではないが、かなり整った顔立ちをしている。
 さぞかし生前は女の子達に騒がれた事だろう。

「――まあ、まだ生きてはいる様なんだけどね」

 内心で思った事に自分自身で突っ込んで、軽く胸元に耳を押し付け、口元に手を当ててみる。
 うん。弱いけど脈はあるし、ちゃんと呼吸もしている。この怪我でまだ生きてるって本当に凄いな。

「生きているならオレが治せない筈が無いよね」

 刺さったままの刀を抜きながら、傷の治癒と彼が今までに失った分の血の補充に勤しむ。
 まだまだ勉強途中だが、なかなかどうして私には医療忍術の才能がある様だ。見る見る内に抉れていた腹の肉が隆起し出して、血の気の引いていた顔に赤みが差す。

「……誰、だ? 子供……?」
「はいはい。お兄さんがどなたかは知りませんが、瀕死状態なんだから大人しくしていて下さい。今、治療中ですから」

 擦れた声がするが、だからといって傷口から目を離さない。
 刺し傷に打撲に打ち身。擦過傷は当たり前として、骨だって何本か折れているみたいだ。どんな相手と戦ったらこんな怪我を負わされるのやら。
 何度か怪我人の治療を行った事はあるが、これは酷い。よっぽど戦った相手が容赦の欠片も無い人だったに違いないな。

「――貴様、千手……柱間?」
「は?」

 不意に名を呼ばれて、ぎょっとして治癒の手を休める。
 確かに私は千手柱間であるが、その名で呼ばれるよりも『千手の木遁使い』としての通り名の方が有名だ。

 どう考えても今の私よりも年上らしきこの人が、なんで私の名を知っている?

「どういう事だ……? 柱間の奴はオレよりも年上だった筈……しかし、このチャクラは……」
「は? え? しゃ、写輪眼!?」

 閉ざされていた瞼が開いて、三つのおたまじゃくしの浮かんだ赤い目が私を睨んでいる。よくよく見ると、この青年の顔にはこの間あったばかりの黒髪少年(兄)の面影がある様な無い様な……。

「チャクラの質は同じだが、歳は違う……。それに……貴様、女か?」

 に、俄には信じられないが、この世界では私の他に柱間がいるらしい。
 そんでもって、その柱間さんは私よりも年上で性別は男だと言う事。

 そりゃー、確かに男の柱間を見た事がある人からすれば私の男装なんて一発で見破れるだろうよ。

 ……てか、どうしてくれよう神様。
 昼寝から目が覚めた先で、私の知っている世界とはよく似ているけど違う世界に居るだなんて、誰だって想像しないって。つーか、マジで誰か助けて。

 人の足首を掴んでギラギラした目で睨んで来る、知り合いの面影を持つ黒髪長髪青年から逃げ出したいです。

 にしても、治療を続けるべきか続けないべきか、それが大問題である。 
 

 
後書き
黒髪少年達に出会ったばかりの彼女ですので、歳は十二、三です。幼女ではないけど、少女。
原作で彼がどうして助かったのか分からなかったので、無自覚の協力者という形で登場してもらいました。
この人を怪我させた相手は別世界の貴女ですよ、とは言えないお約束。 
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