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戦国異伝供書

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第八十六話 紫から緑へその四

 そしてだ、こう言うのだった。
「どう思われますか、義母上は」
「大きなことを目指してですね」
「はい、ことを進めてです」
「それより小さなものになる」
「それがしはそう思うのですが」
「そうですね、ですが」
 義母である杉大方は松壽丸に優しい声で話した、丸い顔で穏やかな顔立ちをしている。物腰も実に穏やかだ。
「少しでもです」
「少しでもといいますと」
「その願いにです」
「近付くべきですか」
「はい、小さく収まるのではなく」
「より大きくですね」
「ことを進めるべきです」
 こう松壽丸に言うのだった。
「よいですね」
「わかりました」
 松壽丸は義母のその言葉に素直に頷いた。
「それでは」
「はい、そして」
「そしてとは」
「赴いた社は厳島でしたね」
「はい、そちらでした」
 松壽丸はここでも義母に素直に答えた。
「今帰ってきましたが」
「あちらですね」
「左様です」
「よい社に行きました」
 杉大方は松壽丸にここでも微笑んで話した。
「あの社の神は素晴らしいです、必ず当家を守護してくれます」
「毛利家を」
「そうです、ですから」
「崇めるべきですね」
「神仏を忘れないこと」
 決してという言葉だった。
「松壽丸殿に常に言っていますね」
「戦国の世といえどですね」
「そうです、神仏を信じることを忘れず」
 そしてというのだ。
「民はです」
「大事にですね」
「家臣の方々もですね」
「大事にする」
「そうしていくのです」
「肝に銘じます」
「そのうえで父上とです」
 杉大方はさらに話した。
「兄上をです」
「助けてですね」
「毛利家を支えるのです、よいですね」
「承知しました、父上がおられ」
 松壽丸も言った。
「そしてその跡はですね」
「兄上がおられますね」
「それがしはその父上を兄上をお助けする」
「それが役目です」
 松壽丸、彼のというのだ。
「家がまとまっていれば」
「それで、ですね」
「大きな力になるのですから」
「家の中がまとまっていれば」
「そのことはです」
 そのままというのだ。
「戦国の世では大きな力となります」
「そういえば」
 ここで松壽丸は気付いた、その気付いたことは何かというと。
「家の中でいがみ合い乱れれば」
「それで、ですね」
「その家は弱まり」
 そしてというのだ。
「滅ぶこともです」
「多いですね」
「親兄弟、身内同士が争えば」
 杉大方が今言うことと逆にだ。 
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