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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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援護

<海上>

アルル達一行はポルトガの北に浮かぶ島国『エジンベア』へ、船で向かっている。
新たに仲間に加わった元海賊モニカとその手下達の情報と、カンダタが各地へ向かわせた元盗賊の情報を加味して、次なる目的地を『エジンベア』へと定めた。

カンダタの元盗賊情報によると、アリアハンの西にある『ランシール』と言う町には大きな神殿があり『地球のへそ』と言うダンジョンで勇気を試す試練が行われている。
その試練に参加してダンジョンを探索すると、ダンジョン内には『ブルーオーブ』が奉られていると言われている…

しかしモニカの元海賊情報によれば、その神殿に入る為には『最後の鍵』を入手する必要があり、それがこれから赴くエジンベアに奉られているらしい…
『最後の鍵』に関しては、エジンベアの城に奉られているだろうと言う以外、城の者ですら何処にあるのかを知らないそうだ…
「何だそのいい加減な情報は!?」
リュカなどは、元とは言え盗賊も海賊も信用していない為、情報の信憑性に疑いを持ったのだが、他に行く当てもなくどうする事も出来ないので、その情報を頼りに動く事となった…
「お父様…例え情報が間違ってても、新たな情報が見つかるかも知れませんですわ」
愛娘の一言によりリュカも大人しく従うのであった。


そんなアルル達一行の前に、巨大なイカのモンスター『テンタクルス』が3匹現れ、アルル達を攻撃している!
「メラミ」
魔法使い時代に憶えたウルフのメラミのお陰で、1匹のテンタクルスは倒したが、まだ2匹残っている。
テンタクルスは海中に潜り、魔法の威力を軽減させ攻撃を仕掛けてくる。

「くっ!厄介ねぇ…直接攻撃が届きにくいわ!」
テンタクルスは海から頭(?)を出すと、その長い触手を使い攻撃をしてくる。
そして直ぐに海中へと身を隠すのだ!
アルルもメラやギラを使っては居るのだが、如何せん威力が低すぎて決定打にはならない。

しかしアルル達も成長してきたのだ!
黙ってやられているばかりではない!
海中から姿を現した瞬間を狙い、ハツキが船から勢い良くジャンプして、テンタクルスの頭(?)へと強烈な蹴りを食らわせる!
そして蹴りの反動を使い、器用に甲板へと着地する。

「ナイス、ハツキ!これであと1匹よ!」
華麗に舞ったハツキに向け、左手親指を立てて祝福するアルル。
だがその隙を付いて残りの1匹が、船に乗りかかりアルルの足を払った!
船が傾いた事も相まって、バランスを崩し倒れるアルル…テンタクルスは間髪を入れずアルルに襲いかかってくる!

皆がバランスを崩し援護にいけない中…
「ア、アルル!!…ライデイン!!」
咄嗟に動いたのは別世界の勇者ティミー…
勇者のみが使える魔法『ライデイン』でテンタクスルを1撃で葬り去る!

そしてアルルの元へ近付き抱き起こすティミー…
「あ、ありがとう…ティミー…」
「あ、いや…その…危なかったから…つ、つい咄嗟に…」
互いに見つめ、顔を赤らめる二人。
あの晩の事もあり、互いに意識しているアルルとティミー…
純情と真面目が服を着ている様な二人にとって、裸で抱き合って寝ていただけで、別次元の事まで意識してしまっている様だ。

そんな二人はカンダタや水夫等に、囃し立てられ仲間達の元へと戻る。
ハツキやウルフだけでなく、ビアンカやマリーもニヤつき眺めている…が、リュカだけが眉間にシワを寄せて二人を…と言うよりティミーを睨んでいる。

「あ、あの…リュカさん…どうしました…?」
不安に思いアルルが尋ねると…
「………ティミー……次もお前が戦うのか?」
珍しく苦しそうに問いかけるリュカ。
「………」
何を言いたいのか理解したティミーは、黙る事しか出来ない。

「アルル達の中に『ライデイン』を使える者は居るのか?」
「………」
リュカの問いには、もちろん誰も答えない。
「確かに先程アルルは危険な状態だった…助けたくなるのは分かるよ。でも…アルルの成長の妨げにしか見えない!…ティミー…お前は『スクルト』が使えるのだから、さっきは防御力の強化だけで良かったんじゃないのかなぁ?お前が倒す必要は無かったんじゃないのかなぁ?」
リュカの口調は優しい…
しかし表情は苦みを帯びている。
その意味を理解しているティミーは苦しくなる…自分のした事の意味に。

そんなティミーが哀れに見えたのか、又は助けてくれた恩返しなのか、アルルがティミーの援護に回りリュカに突っかかる。
「じゃ、じゃぁ私がライデインを憶えます!…私だって勇者です。私がライデインを憶えて、今後ティミーが前戦に出ない様にしますから!目の前で見せてもらったから直ぐに憶えてみせますよ!それで文句はないでしょ、リュカさん!」
そう言うとティミーの手を取り、船首へと向かうアルルとティミー。
水夫の邪魔にならない船首で、ティミーに魔法を教わる様だ。


「リュカさん…ちょっと言い過ぎじゃないですか…?咄嗟の事だったのだから…思わず攻撃呪文を唱えちゃったんだと思いますよ…」
多様な場面でティミーに共感する事の多いウルフが、リュカの苦言に意見する。
「仲間を救ったのだから、父親として褒めてあげるべきでしょう!」

「…救った…?確かに今は救ったよ…でも、未来はどうだろうか?何度も言うが、今急に僕等が元の世界へ戻ったら、君らはどうなる?さっきのイカが、また現れたら…今のウルフ達だけで倒せたのか?みんな無事で戦闘が終わったのか?」
「そ、それは………」
リュカは首を左右に振り溜息を吐く。

「ウルフだって偉そうな事言ってられないんだぞ!」
「え!?お、俺が何ですか!?」
リュカの言葉に目を丸くして驚き怯む。
「さっきみたいな場面では、魔法が頼りなんだ!なのにメラミで1匹倒した程度…先程の戦闘で活躍したのは、ハツキ一人だ!己の身体能力を最大限に駆使して、華麗に舞い敵を倒した!それに引き替えウルフ…君はメラミを放っただけ…せめて3匹に大ダメージを与えられるベギラマくらいは唱えられないと…」
リュカの落胆な口調に言葉が出ないウルフ…

「お、お父様!そうは言いますが、ウルフ様のメラミは凄かったですわ!1発でテンタクルスを倒したのですから!」
正確には1発ではない!
それまでにアルル等の魔法で、ダメージを与えておいた結果である…
しかし最終的に敵を倒したのは、ウルフのメラミである事に違いはない。

「マリー…お前に戦闘の何が分かる…?」
皆が、溺愛する娘の言葉でリュカが怯むと思っていたのに、渋い表情のまま苦言は続いた。
「今、お前達には守る者がある!この船と、船を動かしてくれている水夫達だ!誰かを守りながら戦うという事は、非常に難しい事なんだ。負ければ自分だけでなく、守ろうとした者の命も失う事になる…『頑張りました』じゃ意味がないんだよ」
マリーとウルフだけでなく、聞いていた者全員が俯き黙る…
「マリーは魔法の威力が強すぎて、味方に被害を出しかねない…逆にウルフは威力が弱すぎて、味方を危険に晒してる…」

短時間の沈黙が辺りを過ぎる。
そして瞳に涙を浮かべたマリーが、リュカを睨み言い放つ!
「じゃぁ、私とウルフ様で魔法の勉強を致します!そして私は威力調整を…ウルフ様は強力な魔法を…それぞれマスターしてみせますわ!!」
そう言い、袖で涙を拭うと、ウルフの手を引き船室へと走り去って行く。



甲板にはリュカ・ビアンカ・ハツキ………そしてカンダタ・モニカと幾人かの水夫達。
皆が居たたまれない気持ちで作業をしている。
それに気付いたビアンカが、付近に先程リュカに叱られた4人が居ないのを確認し、リュカに本音を話させる。

「…相変わらず………人を操る事が上手いわね…」
「………真面目なヤツ程操りやすい!」
夫婦の表情は笑顔だ………いや、人の悪い笑顔だ!
「え!?ど、どういう事ですか!?」
まだまだ若いハツキが問う。
カンダタとモニカも身を乗り出して真相を聞きたがる。

「リュカは別に怒ってなどいないのよ。ただチャンスを利用しただけ…」
「「チャンス?」」
「そ!ティミーとアルルちゃんは、お酒の勢いで急接近したらしく、妙に意識し合ってるから、上手くいく様に切っ掛けを与えたのよ!」
つまり…魔法の個人授業を介し、男女の仲を進展させようとしたのだ!

「じゃ…ウルフとマリーちゃんは?」
「あっちも同じよ…何があったか分からないけど、何かがあってマリーがウルフ君の事を気に入っちゃてるから、この親馬鹿男はマリーの手助けをしてるのよ!」
皆が驚きと呆れの混ざった表情でリュカを見つめる…

「アイツ等に喋ったら殺すぞ!」
そしてリュカは人の悪い笑顔で皆を脅す…
誰も喋らない…喋りたくないのだろう。
この男に拘わりたくないから!


 
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