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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第76話

~レヴォリューション・ブリーフィングルーム~


「ぇ……………………」
「何ですって!?」
「し、子爵閣下が行方不明!?」
「……………………レン皇女殿下。子爵閣下はエレボニア帝国政府による”焦土作戦”の被害を受けたレグラムの復興の為にレグラムに戻った事は聞いていますが、何故子爵閣下がそのような状況に陥っているのか、詳細な説明をお願いします。」
レンが口にした驚愕の事実にその場にいる全員が血相を変えている中ラウラは呆然とし、サラは厳しい表情で声を上げ、エリオットは信じられない表情で声を上げ、信じられない表情を浮かべていたリィンだったがすぐに表情を引き締めてレンに問いかけた。

「ここにいるみんなも知っての通り、メンフィル軍はヴァイスラント新生軍に対する義理を果たす為に食糧等を定期的にレグラムに配給しているわ。で、今日がたまたまその配給日でメンフィル軍がレグラムに食糧等を当然届けたのだけど、その時にアルゼイド子爵家に仕えている家宰から”光の剣匠”が行方不明になった事を報告されて、もし”光の剣匠”についての手がかりを見つけた際にアルゼイド子爵家への連絡を頼まれていたのよ。」
「クラウスが……一体父上の身に何があったのですか!?」
レンの説明を聞いたラウラは血相を変えてレンに続きを促した。
「何でも二日前に領民達の為一部の門下生達と共に狩りに出ていて、夕方になっても”光の剣匠”だけ帰って来なかったそうでね。当然、レグラム支部の受付とレグラムにいるアルゼイド流の門下生総出で一晩中探したんだけど、それでも見つからなくてね。で、レグラム支部の受付を通して正式に”遊撃士協会”に”ヴィクター・S・アルゼイド子爵の捜索”を依頼して、更にその翌日に配給の為にレグラムを訪れる事がわかっていたメンフィル軍にも行方不明になってしまった”光の剣匠”の手がかりを見つけた際の連絡を頼んだって事よ。」
「何故子爵閣下は今の状況で領民達の為とは言え、狩りをしていたのですか?食糧に関してはメンフィル軍による配給があったのですからわざわざ子爵家閣下が自ら狩りに出る必要も無かったと思われるのですが…………」
「………多分だけど、領民達の不満を少しでも和らげる為だと思うわ。」
自分の話を聞いて真剣な表情を浮かべて質問してきたアンゼリカの質問にレンは静かな表情で答えた。

「”領民達の不満”、ですか?子爵閣下は領民想いの人物で、またレグラムの領民達も子爵閣下を慕っていたと記憶していますが………」
レンの答えが気になったユーシスは困惑の表情で指摘した。
「――――――みんなも知っての通り、レグラムもエレボニア帝国政府の”焦土作戦”によって壊滅的な被害を受けたわ。おまけに戦時中の上政府自身がそんな事をしたんだから、当然政府からの支援は期待できないし、既にメンフィルに帰属する事を決めたクロイツェン州の領土と違ってレグラムだけ帰属を拒否したから、当然メンフィルから様々な復興の支援が受けている他のクロイツェン州の領土と違って復興は遅れているのよ。その事に対する不満もそうだけど、配給されている食糧も保存食だから、当然ずっと同じ味の食べ物を食べ続ける事で不満も発生するわ。そういった様々な小さな不満が膨れ上がって、そこにレグラムを今の状況に陥らせた政府への怒りやエレボニア皇家に対する不満に加えてそんなエレボニア皇家の為にレグラムがメンフィルの領土に帰属する事を固く拒否し続けている”光の剣匠”に対する不満が重なったことで、ついに領民達の口から”光の剣匠”に対する直接的な不満やエレボニア皇家への忠誠心に対する非難の言葉が次々と出てきたそうなのよ。」
「そ………ん……な……………………」
「………ッ!」
「ラウラ………ユーシス…………」
レンの説明を聞いたラウラは愕然とし、レンの説明を聞いてアルゼイド子爵が領民達に不満を抱かれることになった原因は臨時とはいえクロイツェン統括領主も務めていた自分にもある事に気づいていたユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締め、二人の様子をガイウスは心配そうな表情で見つめた。

「その…………もしかして、子爵閣下の領民の方々の為に自ら”狩り”に出ていた理由は領民達が保存食続きの状況に嫌気がさしている事を知って新鮮な食材を食べてもらうことで、領民の方々の不満を少しでも和らげる為ですか?」
「状況を考えると恐らくその可能性が高いでしょうね。」
ラウラを心配しながら質問したエマの質問にレンは頷いて答えた。
「………もしかして、殲滅天使は”レグラムがいずれそうなるとわかっていたから、ラウラのお父さんがレグラムがメンフィルに帰属する事を拒否した時にあんな事を言ったの?”」
一方フィーは厳しい表情でレンを睨んで問いかけた。

ま、メンフィルの助けがなくても自分達で何とかできるって主張するんだったら、現時点ではそれ以上の追及はしないから頑張ればいいんじゃないの?


「あ……………………」
「確かにギリアスといい勝負――――――いや、下手したらそれ以上に悪辣なそいつならありえそうだな……」
レンのかつての言葉を思い出したアリサは呆けた声を出し、クロウは厳しい表情でレンを睨んだ。
「失礼ね。第一その前にオリビエお兄さんが光の剣匠さんに『自分達の為の最適な判断をしてくれ。』って忠告したにも関わらず、光の剣匠さんはそれでもレグラムのメンフィルの帰属を拒否したし、更にその前にレン自身が『メンフィル(レン達)に調略された貴族達も、領民達の今後の生活を考えた上での領主としてのベストな判断をした』って言ったし、その事に対して光の剣匠さん自身もメンフィルに帰属した領主達の判断を肯定していたでしょう?光の剣匠さんがそうなってしまったのも、半分くらいは光の剣匠さん自身の自己責任よ。」
「レン皇女殿下の仰る通りだね。アルゼイド子爵は確かに領主としては立派な人物ではあるように見えるが、既にメンフィルに帰属した他の領主達と違って、皇家への忠誠を貫き通し続けた事で、”領民達の本音”には気づかなった事から”領主としては失格”だったようだね。」
「し、子爵閣下が”領主として失格だった”って………」
「……ッ!それはどういう事ですか!?父上は常に民のことを考えておられます……!」
呆れた表情で答えたレンに続くように答えたローレンツの答えにアリサ達が血相を変えている中エリオットは信じられない表情をし、ラウラは怒りの表情で反論した。

「今ローレンツがその理由はアルゼイド子爵が”領民達の本音に気づかなかった”といっただろう?それが答えさ。」
「”領民達の本音”とは一体……?」
「”未来の事より、今生きていけるかどうか”。――――――それが”焦土作戦によって財を奪われ、家を焼かれた領民達の本音”ですよ。」
「”平民”からすれば、正直自分達の国の王を含めた王族もそうだけど自分達が今住んでいる国が他国に占領されようと、自分達の生活に悪影響を及ばさなければ”自分達にとってはあまり興味のない事なのよ。”だって、どれも”平民達にとっては遠い世界の出来事だもの。”」
「”平民”が最優先に気にする所は、税や物価の変動によって”直接自分達の生活に影響する事だ。”エリンの里で以前お前達と初顔合わせした際にも自己紹介したが、俺はエレボニアの平民であったが、百日戦役で俺の故郷もメンフィル帝国領と化した事で税がエレボニアの時よりも低くなったことで、村の者達はむしろメンフィル帝国領と化した事に喜んでいた。現に俺自身もメンフィル独自の制度には随分と助けられたから、メンフィルには感謝している。」
フェルディナントの指摘に困惑しているガイウスの疑問にリシテアとドロテア、ドゥドゥーはそれぞれ答えた。

「!!」
「それは………………」
「……………………ッ!」
「チッ、要するに鉄血達の策略によって骨抜きにされたジュライの連中と似たようなものって事かよ……」
「クロウ君……」
リシテア達の話を聞いたラウラは目を見開き、アンゼリカは複雑そうな表情で答えを濁し、ユーシスは辛そうな表情で唇を噛み締め、舌打ちをした後複雑そうな表情を浮かべているクロウをトワは心配そうな表情で見つめた。
「い、幾ら何でもそれは偏見ではないですか……?実際、皇帝陛下が銃撃された件でのオズボーン宰相の演説で平民、貴族関係なく怒っていたそうですし、僕だって平民ですけど皇帝陛下の容態について凄く心配していますし……」
一方エリオットは不安そうな表情で指摘した。

「フム…………もしかして、君はエレボニアの帝都――――――”ヘイムダル”の出身かい?」
「は、はい。ですが僕が帝都の出身である事と今の話と何か関係があるのでしょうか?」
ローレンツの問いかけにエリオットは戸惑いの表情で答えて質問を続けた。
「大ありだよ。先程君も口にしたように、ヘイムダル――――――つまり、”中央に住んでいる平民達”にとっては皇帝を含めた皇族をその目にする機会もあるだろうから、皇族や国に対する想いはある程度身に着くが、中央から離れている”地方の平民達”にはそんな機会はないから、今リシテア達が言ったように皇族や国に対する想いはそれ程でもないのさ。現に、去年の内戦でも地方の平民達は皇族に対する不満等もそうだが、平民達にとっては貴族連合軍だろうと、正規軍だろうと、どちらが勝者でもいいから早く内戦を終えて欲しいような事を口にしていたと思うのだが?」
「………………………………」
「そ、それは…………」
「……確かに今ローレンツ准将が仰ったような事は内戦時、平民の方達が口にしているのを何度も聞いた事があります……」
ローレンツの推測を聞いたリィンは心当たり――――――かつてケルディックの”太市”をアルフィンと共に廻っていた時に聞いた平民達のアルノール家に対する不満を思い返して目を伏せて黙り込み、リィン同様心当たりがあるトワは辛そうな表情で答えを濁し、エマは複雑そうな表情で肯定した。

「その…………ドゥドゥーさんは”メンフィル独自の制度に助けられた”と言いましたけど、具体的にはどのような制度に助けられたのですか?」
その時マキアスはその場の空気を変えるためにラウラ達の様子を気にしながら複雑そうな表情で訊ねた。
「”就学給付制度”だ。」
「ちなみに”就学給付制度”とは両親のような”保護者”がいない未成年者等といった”何らかの理由で一般の平民としての生活をすることも厳しい者達”がメンフィルの軍人や文官、使用人等”メンフィル帝国に直接仕える職業”の勉強を学んだり、訓練を受けて必ずその職業に就職して一定の年数を務める事を”確約”する代わりに、メンフィル帝国がその対象となる者達にさまざまな援助をすることです。」
「対象者の就学中の間の衣食住の保証は当然として、毎月2万ミラだが筆記用具等の生活する上で必要となる消耗品の入手の為の手当まで支給されるし、もしその制度を利用した対象者に家族がいれば、その家族に毎月ごとに一定の生活費が支給されるし、対象者自身もそうだが、その家族も病気や骨折等と言った医者や神官等が必要な事態に陥れば無料で治療を受けられる制度だ。」
「そんな制度がメンフィルにあるのか……」
「ええ……私もメンフィルに留学した際にその制度を学んだ時はその制度に隠されているメンフィル帝国の慈悲深さと合理的な部分に驚くと同時に感心したわ……」
「生活に困っている人達の就職を支援する上就職までの間の生活費の支給や、無償による治療まで受けられるその制度を利用する人達がメンフィルの太っ腹な部分に感謝することでその人達のメンフィルへの忠誠心も自然と身に着く上、孤児や浮浪者(ホームレス)の流出を防ぐ事で様々な犯罪や問題の抑止にもなりますから、確かに慈悲深さと合理的な部分が合わさった制度ですね。」
マキアスの質問にドゥドゥーが答えるとイングリットとディミトリが代わりに説明をし、二人の説明を聞いたロイドは驚き、静かな表情で呟いたエリィの言葉にティオは同意していた。

「いや~、懐かしい話だぜ。ドゥドゥーのように親父達がはやり病で逝っちまった後にまだ未成年だった俺がフランツを食わせて行くためにも利用したな、その制度。」
「そういえばフォルデ先輩も自分の今後と妹の生活の為にその制度を利用してメンフィル帝国軍に入隊する事を決めていたドゥドゥーと同じ理由で、その制度を利用してメンフィル帝国軍に入隊したという話でしたね。確かステラもそうだったよな?」
「ええ。ご存じの通り、実家と絶縁した私には保護者がいなかった上、手持ちもそれ程余裕は無かったですから、亡命手続きの際にその制度を紹介されて、すぐにその制度を利用する事を決めましたね。」
懐かしそうな様子で呟いたフォルデの言葉を聞いて苦笑していたリィンはステラに視線を向け、視線を向けられたステラは頷いて答えた。
「うふふ、そういえばヴァイスお兄さん達もその制度を参考にした制度をクロスベル帝国でも採用するような事も言っていたわね♪」
「ヴァイスハイト陛下達が……」
「まあ、”リアルハーレムを築いているかつ大の女好きという欠点”があるとはいえ、その欠点に目を瞑れば”為政者”や”人”としては立派な人物なんですよね、ヴァイスさんは。実際、”影の国”で出会った時は将軍クラスの人でしたがまず最初に自分達の立場を気にせず気さくな態度で接してくれと口にしましたし、”影の国”から帰還した後は最終的に皇帝になって、ヴァイスさんが治めたその”メルキア”という国の歴史でも称えられる為政者になったようですし。」
「ああ…………その”欠点”が無かったら、素直に心から尊敬できる人物なんだよな、局長は……」
小悪魔な笑みを浮かべたレンの話を聞いたエリィは驚き、静かな表情で呟いたティオの言葉を聞いたロイドは疲れた表情で溜息を吐いた。

「ハッ、聞こえはいいが、必ずその職に就く事を約束させるんだから、その制度とやらは要はつぎ込んだ金をムダ金にしない為の手綱って事だろうが。」
「ア、アッシュ君。」
「何であんたはそんな尖った考えしかできないのよ……」
一方アッシュは鼻を鳴らして皮肉を口にし、それを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは困った表情を浮かべ、サラは呆れた表情で指摘した。
「ま、話を戻すが”領民達の本音”に気づかなかった――――――いや、”目を逸らしていた”と思われる光の剣匠は”皇家に仕える貴族”としては立派な貴族のようだが、今回はその忠誠心の篤さが仇になっちまったって事だな。」
「そうね…………”アルゼイド”も”ヴァンダール”のように領地持ちの貴族ではなくエレボニアで双璧をなす武門の貴族としてだけだったら、そのような事にはならなかったでしょうね。―――っと、別にかつて”光の剣匠”の先祖に後の事を託したサンドロット卿を批判している訳ではないわよ、デュバリィ殿。」
「幾らマスターを敬愛しているとはいえ、別にその程度で貴女に怒ったりするような狭量な性格じゃありませんわよ、私は。そもそも様々な不幸な偶然が重なったとはいえ、非があるのは”光の剣匠”自身なのですから。」
「…………………………ッ!」
「ラウラ………」
クロードの意見に同意したエーデルガルトはある事に気づくとすぐにデュバリィに説明し、エーデルガルトの説明を聞いたデュバリィは静かな表情で答え、クロード達の話に反論する言葉が見つからず辛そうな表情で唇を噛み締めて身体を震わせているラウラをフィーは心配そうな表情で見つめ
「えっと………先程レン皇女殿下は”半分くらいは子爵閣下の自己責任”と仰いましたが、”もう半分の理由”とは何なのでしょうか?」
ラウラの様子を見たトワは話を変えるためにレンに訊ねた。

「それについては”リィンお兄さん達とは別の理由で、紅き(あなたたち)と決別した貴方達の同期生と同じ状況”になったといえばわかるかしら?」
「リ、”リィン達とは別の理由で紅き(わたしたち)と決別した私達の同期生”ってもしかして…………」
「”呪い”に侵されて実家が政府との繋がりがあってその関係でこの戦争で政府の連中に負けてもらったら困るから、政府の狗になったヒューゴとかいう野郎の事か。」
「……………………」
意味ありげな笑みを浮かべたレンの指摘に心当たりがあるアリサは不安そうな表情をし、アッシュは目を細めて呟き、リィンは目を伏せて黙り込み
「………なるほどね。レグラムの領民達の”光の剣匠”への不満が”呪い”によって増幅された事で、領民達に慕われていたはずの”光の剣匠”がそのような状況に陥ってしまう事を加速させたって事ね。」
「しかしそれでも疑問が残るの。幾ら領民達の不満が爆発したとはいえ、その領民達の不満を和らげる為に狩りをしていた”光の剣匠”が何故行方不明に…………――――――!レン皇女、ヌシはヌシの父からの連絡――――――”光の剣匠が行方不明になった件で、黒の工房の本拠地にいると思われる敵の戦力の上方修正をする必要がある”と口にしていたが……よもや、”光の剣匠”自身も”呪い”に侵されて宰相達側についたと想定しているのか?」
セリーヌは重々しい様子を纏って呟き、考え込んでいたローゼリアはすぐにある事に気づくと真剣な表情でレンに訊ねた。

「ええ。”本来の歴史”の事も考えるとその可能性が高いと思っているわ。」
「”本来の歴史”でアルゼイド子爵閣下が呪いに侵された事で帝国政府側にって………――――――あ。」
「………そういえばキーアの話で、アルゼイド子爵閣下はオリヴァルト殿下と共に九死に一生を得た後、”呪い”に操られてⅦ組の皆さんと敵対したという話がありましたね……」
「そしてその件があるから、レン―――いや、メンフィル・クロスベル連合はアルゼイド子爵閣下が”呪い”によってエレボニア帝国政府側についたと想定しているのか……」
レンの答えを聞いて不思議そうな表情をしていたエリィだったが心当たりを思い出すと気まずそうな表情をし、ティオは複雑そうな表情で呟き、ロイドは静かな表情で推測した。
「そんな…………父上が……」
「ラウラ………ねぇ、”本来の歴史”だとラウラのお父さんも助かって最後はわたし達に協力したんだよね?”本来の歴史”だとラウラのお父さんはどうやって正気に戻ったの?」
一方辛そうな表情で肩を落としたラウラの様子を心配そうな表情で見つめたフィーはロイド達に訊ねた。

「確かキーアの話によると、君達が”呪い”によって操られた子爵閣下自身と戦って制圧した事で、子爵閣下の”呪い”は解けたそうだが……」
「………ちなみにその時は結社の執行者――――――”劫焔のマクバーン”もアルゼイド子爵閣下と共に皆さんと戦ったそうですよ。」
「えええええええっ!?ぼ、僕達が子爵閣下を!?」
「し、しかもあの化物と同時に戦って、よく全員生き残って子爵閣下を取り戻す事ができたよな……?」
「………”本来の歴史”と違って”劫焔”は既に死亡しているから”劫焔”と子爵閣下を同時にやり合うなんて状況は発生しないでしょうけど……それでも2年の経験による成長がある”本来の歴史”と違って、内戦を越えたばかりの今のあたし達が子爵閣下を制圧するなんて、相当厳しい戦いになりそうね……」
ロイドとティオの説明を聞いたアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは驚きの声を上げ、マキアスは困惑の表情で呟き、サラは厳しい表情で考え込んでいた。

「”エレボニア最高の剣士”と謳われるかの”光の剣匠”ですか……そうなると私達の方も”光の剣匠”とやり合う事を想定しなければなりませんね。」
「そうだね…………そしてその際には僕達先輩陣の中でも一番実力がある君の出番だね、フォルデ。」
「フッ、フォルデは”光の剣匠”同様”皆伝”に到っている上、修めている武術の流派も”アルゼイド流”と並ぶエレボニアの武術だから対抗できる可能性は高いだろうね。」
「マジで勘弁してくれよ……というか、もし今回の作戦で”光の剣匠”とやり合う羽目になったら、鉄騎隊同士の対決として”現代の鉄騎隊”の連中に任せた方がいいんじゃねぇのか?」
「んなっ!?何でそこで私達に”光の剣匠”を押し付ける話に発展しますのよ!?貴方、それでも”ヴァンダール”の皆伝者ですか!?」
真剣な表情で考え込んでいるステラの言葉に頷いたローレンツと、静かな笑みを浮かべたフェルディナントに視線を向けられたフォルデは疲れた表情で溜息を吐いた後デュバリィに視線を向け、突然話を振られたデュバリィは驚きの声を上げて反論した。

「ハハ…………かつて鉄騎隊の副長を務めた人物を先祖に持つラウラ――――――いや、”アルゼイド”に対してライバル意識を持っているデュバリィさんにとっては絶好の機会でもあると思うんだが……」
「べ、別に私は”アルゼイド”に対してそんな意識は持っていませんわよ!?…………ま、まあ?私一人ならさすがに厳しい事は認めざるを得ませんが、”鉄機隊”全員による連携、それに”風御前”の加勢もあるのですから、その気になれば私達だけでも”光の剣匠”とも互角にやり合える事は事実ですけどね。」
苦笑しているリィンに指摘されたデュバリィは反論した後、自信を隠せない様子の謙遜の答えを口にし、デュバリィのその答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「ア、アハハ……その場にデュバリィさん達がいない時は私達で対処しても構いませんよ?」
「確かにカシウス・ブライトとも互角――――――いえ、それ以上にやり合える可能性が高いレーヴェに加えてプリネお姉様達も加勢すれば、”光の剣匠”にも勝てる確率は高いでしょうね♪」
「さすがに相手が相手ですから、幾ら何でもアルゼイド子爵閣下を侮るのは止めた方がいいですよ、レンさん…………」
我に返って苦笑しながら答えたプリネにレンは小悪魔な笑みを浮かべて指摘し、レンの指摘を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘した。

「そういえばエーデルちゃん。その”光の剣匠という人物と同じ流派”のエーデルちゃんなら、相手の技や動きとかもある程度わかるから、エーデルちゃんも”光の剣匠”に対抗できるのじゃないかしら?」
するとその時ある事を思いついたドロテアはⅦ組にとって驚愕の事実を口にした――――――

 
 

 
後書き
ストックも結構たまった上ゴールデンウイークですので、今日から6日まで久しぶりの連日更新をします! 
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