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銀河帝国革命

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コミューン内の対立

 
前書き
今回の話は長めの説明があるので退屈かもしれませんが、お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。 

 
ロンドリーナの中心街にある豪華な城館、元々ロンドリーナ代官府が置かれていたここは現在、ロンドリーナ・コミューンの政府庁舎として利用されていた。その議長執務室で、二人の男が話し合っていた。

「同志ハンソン、帝国軍の兵器接収は順調に進んではいるが……如何せん数が足りなさ過ぎます。量も質も何もかもが足りない。これでは帝国軍が本格的に侵攻してきても防ぎ切れないでしょう。」

「分かっている同志テールマン、元々今回の革命は事が順調に行き過ぎたのだ。まさかこの程度の暴動で代官共が逃げ出すとは私も思わなかった。帝国貴族にノブレス・オブリージュの精神は最早存在しないのだな……」

「それは第一革命の時点で我々が身をもって思い知らされたでしょう……それで、どうするのです?やはり公安委員会を設置して戦時独裁に移行するしかないのでは?」

「それは最終手段だよ同志テールマン、コミューンには様々な連中が参加している。帝国軍が目前に迫ってこない限り、評議会を説得させるのは難しいだろう。それで内ゲバになってしまっては、それこそ帝国軍の思う壺だよ。」





ハンソンの指摘通り、コミューン評議会は様々な派閥の連合体であり、お世辞にも統制が取れているとは言える状態ではなかったのである。現在の評議会は主に、ハンソン率いる社会主義派の他に、共和主義派、サンディカリスム派、アナキズム派の4つの有力な派閥が存在している。

社会主義派は、評議会議長のカール・ハンソンを筆頭とした第一革命の参加者が中心の派閥であり、旧時代の社会主義(特にマルクス・レーニン主義)を理想としていた。勢力として四大派閥の中で最小勢力であるが、ハンソンを頂点に鉄の団結力を誇っており、コミューン革命の発端となったラグラン蜂起を起こしている。また、人民革命軍の指導部の殆どが彼等の派閥の構成員であり、軍を実質的指揮下に置いている。
共和主義派は、主に旧銀河連邦への回帰を理想としており、民主共和主義体制の復活を主張しているが、それまでの過程やそれ以外の主張は構成員によってバラバラであり、統一した行動はとれていない。しかしコミューン評議会の最大勢力であり、コミューンの行政の多くを担っているので、人民の支持が最も厚い派閥でもある。
サンディカリスム派は別名組合主義派とも呼ばれ、評議会では民主共和主義派に次ぐ第二勢力である。指導者はいないが、帝国を打倒し、労働組合によって経済運営を成すべきであり、そのためには民主政治ではなく、ゼネラル・ストライキによって帝国を打倒すべきという主張は、工場労働者を中心に支持を受けており、ラグラン蜂起がコミューン革命へと発展したのは、彼等の働きによるところが大きく、革命の原動力と言われている。
アナキズム派は別名無政府主義派と呼ばれており、コミューン評議会では第三勢力を担っている。彼等は権威や統制を否定し、国家権力の縮小または廃止を求めており、その思想に反映して、サンディカリスム派と同じく指導者はおらず、急進共和主義派以上に統一した行動を取らない。しかし派閥の殆どが、知識人や技術者、商人と農民で構成されており、コミューンが曲がりなりにも国家としての機能を果たせているのは、彼等の献身的協力があるが故である。

これらの四大派閥を中心として、互いが対立と協調を繰り返しながら革命を推進しているのが、現在のコミューンの政治なのである。





「しかしですね。以前に我々が提出した【帝国軍に機先を制すための積極的攻勢に転ずる作戦案】と【高度国防体制への移行の提言】もあっけなく廃案に持っていきました!これでは我々は戦うことが出来ません!奴等はこのまま何もしなくても帝国が自然崩壊するとでも本気で信じてるんですかね?」

テールマンが発言した【帝国軍に機先を制すための積極的攻勢に転ずる作戦案】と【高度国防体制への移行の提言】とは、帝国軍のロンドリーナへの侵攻を遅らせるため、帝国軍に先んじて少数部隊による奇襲やゲリラ戦を行うというものであり、その作戦を支えるための総力戦体制の構築し中央政府の権限を強化するという提案であった。しかし無所属の評議員や共和主義派の半数が賛成する一方、軍を台頭を防ぎたいと考えた残り半数の共和主義派や、国家による経済の中央統制を嫌うアナキズム派とサンディカリスム派が団結して反対に回り、廃案に追い込まれたのであった。
その結果、人民革命軍の軍備増強は果たされず脆弱な装備のまま、帝国軍の侵攻に備えなければならなくなっていた。

「同志テールマン、君の主張は充分に理解しているし、勿論私も同じ考えを持っている。私の権限の出来る範囲で軍の後援するつもりだ。だがそれ以上は厳しいという事は分かってもらいたい。」

「……承知しました、同志ハンソン。出来得る限りの事はやってみましょう。」

そう言うとテールマンは敬礼をして部屋を去って行った。

「このままでは革命が危ない……だが連中を説得できるだけの力も、黙らせるだけでの力もない。何とかしなくては……」

ハンソンは一人執務室で呟いた。





人民の声を反映させるための改革や、社会政策が強力に推進されていく一方、帝国軍に対する対応や軍の整備に関しては、未だ解決には至っておらず、特にハンソン率いる社会主義派とサンディカリスム派、アナキズム派の対立は深刻化していた。

だが、そんな彼等に対して、遂に帝国軍が牙を剥いたのである。
 
 

 
後書き
今回は予定と違い、1200字どころか2000字を超えてしまったので、話を分割しようと思ったのですが、キリが悪くそのままの方が良いと判断したため、この状態で投稿しました。
 
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