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世界創作

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第六章

 通販サイトでも評価が高かった、それで堀井達は社長から直接続編を制作する様に言われた。それでだった。
 堀井は大ヒットを祝う居酒屋の宴席の場で言った。
「いや、最初にな」
「世界観色々考えて話してな」
「それがよかったな」
「ああ、作品の世界観はな」
 まさにとだ、土井はビールをジョッキで飲みつつ堀井に応えた。
「作品の軸でな」
「それでな」
「しっかり考えてな」
「設定するとな」
 それでというのだ。
「いい世界になってな」
「それがそのままな」
 世界観、それがというのだ。
「作品を決めるな」
「そうなるな」
「というかですね」
 中村は日本酒を飲みつつ言った。
「RPGにしても何でも」
「ゲームはな」
「他の媒体もそうでしょうけれど」
「漫画でも小説でもな」
「まず世界観を決めないとはじまらないですが」
 それでもというのだ。
「それをどうするか」
「それがな」
「一番難しくて」
 そうしてというのだ。
「厄介ですね」
「ああ、どんな世界にするのかってな」
「考えて設定して決めることが」
「一番難しいな」
「俺達今回は神様になったつもりで考えてみて」
「世界各国の神話とか参考にしてな」
「それでやってみましたけれど」
 それでもというのだ。
「何ていいますか」
「難しいな」
「これが一番」
「そう思うと神様ってな」 
 堀井は今は焼酎を飲んでいる、それをロックで飲みつつ言うのだった。
「大変だな」
「そうですよね、世界創るっていうのも」
「かなりな」
「そういえば失敗もしてるな」 
 土井は笑って言った。
「ギリシアとか中南米とかな」
「何度か創りなおしたりしてるな」
「そうだよな」
「聖書だってな」
「ノアの箱舟の話はな」
「あれは失敗したからか」
「それで起こしたかも知れないしな」
 神、ユダヤ教やキリスト教のその神がというのだ。
「神様だって失敗するんだ」
「そんな仕事だからか」
「神様でもない俺達がやるとな」
 世界を創る、それが例えゲームのそれでもだ。
「やっぱりな」
「大変なのは当然か」
「けれどそれをやった」
「それでゲームをヒットさせたからか」
「ここはよしとするか」
「そうだな、じゃあな」
「今は乾杯しような」
 こう言ってだ、土井は自分のビールをぐい、と飲んだ。その後でごくごくと美味そうに飲んでそれからまた言った。
「こうしてな」
「そうするか、太るとか病気とかもな」
「今は忘れてな」
「忘れたらいけないことだけれどな」
「あえて忘れような」
 二人で話してだ、そしてだった。
 堀井も土井も中村も他のスタッフ達もだった。
 祝いの酒を飲んだ、それは神の飲みものではなく食べものもそうだった。ネクタルも黄金の林檎もなかった。しかしそれは何よりも美味いものであった。そういったものよりも。


世界創作   完


               2019・12・20 
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