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小玉鼠

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第二章

「一体」
「そのことだね」
「理由がわからないし破裂したら死ぬわよね」
「うん、そうなったらね」
「死んだら意味ないじゃない、わざわざ人の足元まで来てそうするとか」
「それ俺も不思議に思ってるけれど」
「そうした妖怪なの」
 こう文哉に問うた。
「つまりは」
「妖怪の行動理由ってわからない時あるから」
「どうしてそうするのか」
「それが民俗学的に面白い根拠だったりするけれどね」
「じゃあ小玉鼠も?」
「そうかもね、それで山に出るんだよね」
「府中の方にね」
「じゃあ今度二人の一緒の休みの時府中に行って」
 そうしてとだ、文哉は加恋に提案した。
「そうしてね」
「実際に妖怪見ようっていうのね」
「フィールドワークは学問の基本だしね」
 文哉は学生時代のことを思い出しながら加恋に言った。
「だからね」
「それじゃあ」
「うん、今度の休みにね」
「府中に行くのね」
「そうしよう」
「わかったわ、じゃあ今度ね」
 二人が一緒の休みの時にとだ、加恋も答えた。
 そして実際に二人が同じ休みの日にだった、共に府中の山に入った。二人はそこで登山というかピクニックと山の紅葉を観て楽しみつつだった。
 小玉鼠が出るのを待った、二人共山道を進んでいき小玉鼠が出るのは今か今かと心待ちにしていた、そうしていると。
 二人の足元に急に野鼠が来た、二人はそれを見ていよいよ来たと内心喜んだ。そして実際に二人の足元でだった。
 身体を急に膨らませてそうして破裂した、本当にまるで風船みたいに膨らんでそうして破裂したがここでだった。
 肉も血も骨も内蔵も破裂して二人の前に散らばった。幸い二人のズボンや靴にはそういったものはかからなかったが前が血や肉で真っ赤になった。
 それを見て加恋は首を傾げさせて文哉に問うた。
「実際に見たけれど」
「何でこうして破裂するか」
「どうしてなの?」
「山の神様の怒りとか警告でね」
「それでなの?」
「この妖怪が来て」
 そうしてというのだ。
「破裂するとかね」
「言われてるの」
「それで昔はマタギさん達はこの妖怪に出会ったら猟を止めたとかね」
「言われてるの」
「神様の×でマタギさん達の魂がなってるとか実はヤマネとかね」
「あの栗鼠みたいな生きものね」
 ヤマネと聞いて加恋はすぐにどういった生きものか思い出して話した。 
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