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出店のイカ焼き

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第四章

「食べてくで」
「今こそな」
「他にかき氷もたい焼きもあるし」
「皆で頑張って食べような」
「じゃあ」
 綾は皆の言葉に頷いた、そうしてだった。
 友人達と共に食べていった、そして食べたいものは全部食べてそうしてだった。家に苦しい顔で帰ると。
 父が帰ってきたのでその相手をしていた母にこう言われた。
「大阪のお祭りどうだったかしら」
「美味しかったわ、ただね」
「食べ過ぎたのね」
「わかるの?」
「そのお顔見たらね」
 それでというのだ。
「わかるわ」
「そうなの」
「かなり気に入ったみたいね、大阪のお祭り」
「お好み焼きも焼きそばも食べたし」
 それにというだ。
「たこ焼きも、それにイカ焼きも」
「どっちのイカ焼きもかしら」
「食べたわ」
 その両方をというのだ。
「そうしたわ」
「そうなのね」
「二つあるとか思わなかったわ」
 イカ焼きがというのだ。
「本当にね」
「関西じゃそうなのよ」
「関東とはそのことも違うのね」
「そうよ、どっちも食べたならいいわ」
「他にもかき氷とかたい焼きも食べたから」
「苦しいのね」
「食べ過ぎの限界超えたわ」
 まさにという返事だった。
「本当に」
「そこまで食べたのね」
「ええ、けれど」
 それでもとだ、綾は苦しいながらも笑顔で話した。
「満足してるわ」
「それは何よりよ」
「そうよね、またお祭りに出たら」
 その時にとだ、綾は母にさらに話した。
「どっちのイカ焼きも食べるわ」
「そうするのね」
「ええ、そうさせてもらうわ」 
「大阪にいるからなのね」
「そうするわ、いい街よね」
 満面の笑顔で話してだ、そのうえでだった。
 大阪の食べものを楽しむことをここで決意した、この街に来たからこそ。だが今はあまりにも苦しくて。
「シャワー浴びて歯を磨いてね」
「寝るのね」
「そうしていいかしら」
「どうぞ」
 母は娘に笑顔で答えた、そうして娘に風呂場に行く様に言った。大阪の夜の話である。


出店のイカ焼き   完


                  2019・11・19 
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