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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第十四話 安らぎの時間と憧れ

 
前書き
モデルOってオリジナルがあれだから多少の抑制なんて時間経過でどうにかしてしまいそう。

漫画版のキャラクターを再び。

サルディーヌはこの小説のアルエットポジションにしたいですね 

 
最後のライブメタルの居場所が分かるまで、ヴァンはガーディアンベースで待機して時折現れるイレギュラーを排除し、エールはジルウェと共に街に出て運び屋としての仕事をしている。

「はあっ!!」

冷気を纏ったアルティメットセイバーによるチャージセイバーがメカニロイドを両断する。

「流石フルーブだ。アイスチップも問題なく使える…聞こえるかプレリー?ここら辺にいるイレギュラーは全て倒したぞ」

『お疲れ様、ヴァン。一度ガーディアンベースに戻ってきて』

「ああ、分かった」

近くのトランスサーバーまで行き、ガーディアンベースへと帰還すると、プレリーが迎えてくれた。

「お帰りなさい、ヴァン…いつもごめんなさい…あなたに頼りきりで…」

ロックマンは個人差はあれど高い機動力を誇るので、他の隊員よりも素早く現場に迎えるヴァンにアウターからインナーに向かおうとするイレギュラーの掃討を任せているのだが、ミッションだけでなく、待機中の時にも戦っているヴァンを見て、申し訳なさを抱いていたのだ。

「別に、イレギュラーは倒さないといけないし…最後のエレメントチップのテストも兼ねてるからな」

強大な力を持つモデルOの影響なのかあれだけ動いても息を切らさないヴァン。

本人も大人しくしているというのが性に合わないと自覚しているので、ある意味ではヴァンとモデルOの相性は良いのだろう。

「……ヴァン、その…疲れてるとか、具合が悪いとかないかしら?大事な体なんだから…」

セルパン・カンパニーと戦うにはヴァンの力は必要不可欠であり、プレリー個人からしてもヴァンにはあまり無理して欲しくはなかった。

「………体か…別に何ともないさ。変身が解けないこと以外に今のところは何ともない」

「でも、少しくらいは休んでくれないかしら?次にイレギュラーが現れたら地上部隊のみんなに頼むから…」

「分かった。じゃあ、俺はベースで待機してるから…何かあったら通信をくれ」

それだけ言うと、ヴァンはトランスサーバーのある部屋から出ていく。

「…………」

「あいつの反応速度…普段よりも落ちていたな」

「モデルZ…」

一人部屋に残されたプレリーに話しかけたのはモデルZであった。

「今のあいつは昔のジルウェと同じだ。いや、心の拠り所があったあいつよりも苦しいかもしれん」

エールとヴァンが現れるまでは唯一のロックマンだったこともあり、ジルウェはイレギュラー現場を駆け回っていた。

終わる頃には疲弊していたが、帰りを待ってくれている運び屋のみんながいるジルウェ・エクスプレスという帰る場所があった。

しかし変身が解けないヴァンはインナーで暮らすことが出来ないため、実質帰る場所がない。

「………お姉ちゃんなら、ヴァンのことをどうにかしてあげられたのかしら……」

モデルZ達を作った“お姉ちゃん”なら、きっとヴァンをどうにか出来たのではないかと思えてしまう。

「プレリー、俺の記憶データにはそいつのことはないが…恐らくそいつはお前に出来ることをしろ…と言うかもしれん……何となく、だがな…記憶はなくとも、オリジナルから受け継いだ何かがそいつのことを覚えているのかもしれん…」

「モデルZ………ありがとう」

モデルZに礼を言うと、プレリーも部屋を出た。

一方、暇潰しも兼ねて倉庫に来ていたヴァンだったが…。

「……………」

“破か………我は…”

“全…を…ゼロ…す…ために…”

モデルXが抑えてくれているはずのモデルOの声が頭に響く。

流石に頭痛があったり、意識を失うほどではないが…。

「あまり良くない…か?」

「そうだね、あまり良い傾向じゃなさそうだ。肉体的にはまだ大丈夫なのかもしれないけど、精神的に弱ってきているのかもしれない。少し仮眠を取ったらどうかな?それとも何か食べるか…それだけでも大分違うと思うよ」

「………」

“でも、少しくらいは休んでくれないかしら?次にイレギュラーが現れたら地上部隊のみんなに頼むから…”

脳裏にプレリーの言葉が過ぎったヴァンは倉庫のコンテナに背中を預けながら座った。

「少し寝る…イレギュラーが出たら起こしてくれないかモデルX」

「分かったよヴァン。良い夢を」

少しして、ヴァンは眠りについた。

モデルXはモデルOの介入を抑えていたが、通路から聞こえた声に気付いて、倉庫を出た。

「君」

「あ、モデルX!どうしたの?」

オモチャを片手に遊んでいたサルディーヌにモデルXは注意する。

「今、ヴァンは寝ているんだ…少し静かにしてもらえるかな?」

「え?」

そっと、サルディーヌが倉庫の中を見つめるとコンテナに背中を預けながら座って寝ているヴァンの姿があった。

「ホントだ…ぐっすり寝てる…起こしちゃ駄目?」

「寝たばかりだからね…最近イレギュラーの相手ばかりしているからたまには休ませてあげないと」

「一緒におやつ食べる約束してくれたのになー…そうだ!」

「…?」

走り出していくサルディーヌにモデルXは不思議そうに去っていく背中を見つめていた。

「ヴァン…どこに行ったのかしら…?」

ベース内のヴァンの部屋にはいなかったので探していたプレリーだが、向こうから現れたサルディーヌの抱えている物に目を見開いた。

「どうしたのサルディーヌ?その毛布とお菓子?」

サルディーヌが抱えているのは毛布と、一人で食べるには多い量のお菓子であった。

「あ、プレリーお姉ちゃん…シィー…」

「………?」

人差し指を口に当てて言うサルディーヌにプレリーは疑問符を浮かべる。

「ヴァン…ここでお昼寝してるんだ。ぐっすり寝てるからおやつの時間まで一緒にいようと思って…後、風邪引いたらいけないから」

プレリーはサルディーヌが見つめている倉庫の扉を少し開けて中を見ると、寝ているヴァンの姿を発見した。

「本当に…ぐっすりと寝ているのね……ヴァン…」

プレリーはサルディーヌから毛布を受け取って、そっとヴァンにかけてやる。

「起きないかな…?」

「静かにしてれば大丈夫よ…(ロックマンの状態で起きないなんて…やっぱり、相当無理をしていたんだわ…何ともないなんて言ってても本当は……どうしてもっと早く気付いてあげられなかったの私は……)」

「プレリーお姉ちゃん…?大丈夫?どこか痛いの?」

辛そうな表情を浮かべているプレリーを心配したサルディーヌが見上げると、ハッとなったプレリーはすぐに笑顔を浮かべた。

「いいえ、何でもないわ…そのお菓子…もしかしてヴァンと食べるの?」

「うん、一緒に食べるって約束したんだ。プレリーお姉ちゃんも一緒に食べようよ」

「……良いの?私まで…?」

「うん、だって二人は僕のお姉ちゃんとお兄ちゃんだもん。あ、勿論エールやジルウェもだよ」

サルディーヌの言葉にプレリーは優しく微笑んで自室に向かった。

「それじゃあ、ヴァンと待ってて…美味しいミルクティーを用意するから」

プレリーが倉庫から去って、しばらくしてヴァンの意識が浮上し始めた。

「んん…(何だ…?良い匂いがする…これは…)」

目を覚ますと、自分の前に簡易テーブルが置かれてあり、テーブルの上にはお菓子とミルクティーのカップが三つ置かれていた。

「起きたのねヴァン?疲れは取れた?」

「プレリー…?それにサルディーヌ…?あっ!?サルディーヌと一緒におやつ食べるって約束…」

「大丈夫よヴァン。丁度おやつの時間だわ」

「まさか、この毛布…」

「ええ、かけたのは私だけど持ってきてくれたのはサルディーヌよ」

「そっか…ありがとなサルディーヌ」

「へへ」

ヴァンが頭を撫でると、サルディーヌも嬉しそうに笑った。

それを見たプレリーは胸に暖かなものが灯るのを感じて、更に笑みを深めた。

「さあ、二人共、食べましょう」

「ああ」

「うん」

サルディーヌが持ってきてくれたお菓子と、プレリーが淹れてくれた甘いミルクティーを頂きながら、三人は穏やかな時間を過ごしたのであった。

ガーディアンベースでヴァンが穏やかに過ごしている一方、エールもまた仕事が一息吐いたので、いつもの店で休憩をしていた。

ショートケーキを一口分にフォークでカットして口に運ぶと、疲れたエールの体が糖分の侵入に気付いて体をプルプル震わせた。

「うーん、やっぱり疲れた時はここのケーキよね」

「お前は本当にここのケーキ好きだな」

「女の子にとって甘い物はエネルギー源なの!!」

ジルウェは苦笑すると、自分のケーキのチーズケーキを差し出してそれをエールは喜んで受け取った…ヴァンや他の運び屋の仲間がこれが見ていたらまた甘やかしてると見られるだろう。

どうも自分は他の運び屋のメンバーで特にエールを甘やかしてしまう。

「(まあ、それでエールが笑えるのなら悪くないよな)」

「このチーズケーキも美味しい!!」

コーヒーを啜りながら目の前で美味しそうにケーキを頬張るエールを見て、ある意味これも自分の幸せなのだと思う。

「(ヴァンに感謝だな)」

あの時、エリアDでのイレギュラー襲撃事件の際にヴァンが駆けつけてくれなければ、恐らく自分は生きてはいなかった。

エールを助けるために自分の命を繋いでくれていたモデルZを託そうとしていたのだ。

だからこそ、こうやって戦えなくなってもエールを身近で見守ることが出来る現在に感謝していた。

「どうしたのジルウェ?アタシの顔をジッと見て?」

「いや、な…こうしていると、当たり前のことが幸せに感じられるんだって思っただけさ」

「そっか」

どことなく良い雰囲気を漂わせるが、それを木っ端微塵にする明るい声が響き渡った。

「よっ!エール!ジルウェさん!」

「「ん?」」

聞き覚えのある声に振り返ると、ジルウェにとって後輩、エールにとって同僚のシュウがいた。

「シュウじゃないか?」

「何?サボリ?」

「あの、エールさん。俺が現れる=サボリみたいに考えるの止めてくれないか?」

「そう思うなら、仕事をサボるの止めたら?」

シュウの言葉を一蹴するエール。

「ちぇっ、まあいいや」

「いや、俺としては全然良くないんだけどな?」

ジルウェも時々サボるシュウに手を焼いているため、頭に手を置いて溜め息を吐いた。

「あのさ、エリアGでお前とヴァンに助けられたろ?ジルウェさんがやられそうになった時、ヴァンが現れてイレギュラーをあっさり倒していく姿を見てさ、思ったんだよ。ヒーローみたいだなって」

「ふーん、あんたでもそんな風に思うのねー。珍しいこともあるもんだわ」

「明日は嵐…いや、隕石が降るかもな。遥か昔の流星の再来になるかもしれないな」

「エールもだけど、ジルウェさんも酷くね?」

カフェオレとコーヒーを啜りながらの二人の感想にシュウは落ち込みそうになりながらも話を続けた。

「そう思うなら真面目に仕事をしなさいよ。それで、そんなことをアタシ達に話したかったの?お礼なら前に聞いたじゃない」

「おう、良く聞いてくれた。俺さ…考えたんだ。お前やヴァンみたいなヒーローになりてえって」

「ん…?」

それを聞いたジルウェは嫌な予感を感じた。

「俺もガーディアンに入るぜ」

「「!?」」

それを聞いて驚いた二人は思わず飲み物が気管に入って噎せてしまう。

「ケホッ!ケホッ!あ、あんた…本気なの!?止めときなさいよ!!」

「っ……シュウ、エールの言う通りだ。悪いことは言わないから考え直せ」

何とか立ち直ったエールとジルウェがシュウを止めようと説得を始める。

「だってジルウェさんやエール、ヴァンもガーディアンなんだろ?だったら俺も入ったって…」

「駄目よ!ガーディアンはね!イレギュラーと戦うのよ!あんたが思ってるよりずっと危険だし命懸けなの!!あんたそれ分かってる!?」

「それにな、ヴァンとエールがイレギュラーと戦えるのは特別な装備があるからなんだ。その装備はきっとお前には使えない。だからな、考え直せシュウ」

「でも!俺だってあの日からずっと考えてたんだ!俺は強くなりてぇ!あの時のお前らみたいに強くなってヒーローになりてぇんだ!!」

「何…それ…?そんな気持ちでガーディアンに入らないでよ…ガーディアンにいるみんなはヒーローになりたいから戦っているんじゃない…プレリーやヴァンも…いなくなった大切な人のためや、守りたいものがあるから戦ってるの…そんな軽々しく考えないでよ!!」

カフェオレを一気に飲み干すと、店を後にするエール。

「エール!悪いな、シュウ…だけど、そんな気持ちで入るつもりなら止めておけ…みんなはヒーローになりたいから戦っているんじゃない。守りたいものや譲れないものがあるからイレギュラーと戦っているんだ。お前は俺達の帰る場所を守っててくれ。後であいつにも言っとくからな」

シュウの肩を優しく叩くと、ジルウェも店を後にした。

そしてインナーの廃ビルの屋上でそのやり取りを観ていた者がいた。

「あのガキが、他のライブメタルを持ってんのか…なら、あのガキの知り合いのあいつ…使えそうだな!」

邪悪な笑みを浮かべてチャンスを待つ。

ヴァンとエールの因縁の戦いまで後…。 
 

 
後書き
このまま一気に…と言いたいんですが…風邪引きました…微熱で喉が痛いくらいでコロナじゃないだけ良いですけど…三日間くらい休みますね… 
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