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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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海の女

<海上>

「ごめんなさいお父様…私…私………」
皆が沈痛な面持ちの中、責任を感じたマリーが泣きながら謝っている…
「マリーちゃんの所為じゃないわ…私達がもっと強ければ、こんな事にはならなかったのよ…」
「アルルの言う通りだよマリー。マリーは悪くない!だって初めて使ったんだろ魔法を!?」
アルルとティミーがマリーを優しくあやしながら宥めてる。

「はい…ポピーお姉様がお嫁に行く前に、私に教えてくれたのです…グランバニアに居た頃は使う事が無かったので、今日初めて使いました…」
「そっか…じゃぁ憶えておきなさい…魔法は状況に合わせて使うのだと…」
リュカがマリーの涙を拭いながら優しく諭してる。

「魔法は二次的効果も考えて使用する物なんだよ」
「二次的効果…?」
「そう…さっきのイオナズンで言えば、一次的効果が敵を吹き飛ばす事…二次的効果は大津波を引き起こした事だ!………もし此処が狭い洞窟内だったらどうなってたと思う?」

「………どうなってたんですか?」
「狭い洞窟内だったら、壁や天井を崩し僕等は生き埋めになっていたんだよ…」
「こ、怖いですぅ…私もう魔法を使えません…」
「違うよマリー!状況に応じて魔法を使い分ければ良いんだ!さっきの場合だったら、イオナズンじゃなくてイオラ…も、凄そうだな…イオ!そう、イオを使えば被害がなく、敵を倒す事が出来たんだ!威力の調整も必要な事なんだよ」
リュカは魔法の存在の恐ろしさに怯える娘に、優しく使い方を手解きしている。

「そうよマリー!威力調整さえ出来れば、貴女の魔法の才能なら直ぐに大魔道士になれるわ!」
「で、でも…」
胸の前で両手をモジモジさせながら、マリーは俯き呟く。
「私…イオナズンしか教わらなかったんです…」

一瞬にして全員の表情が固まった。
普通は威力の低い『イオ』から憶え『イオラ』『イオナズン』と上位魔法へと移行していくのだが…
マリーは行きなり最上級位の『イオナズン』を憶え、しかもその威力は通常の4・5倍ある…
とてつもない存在である事に驚くと同時に、漠然と『イオナズン』のみを教えた彼女の姉に対して怒りが湧いてくる!

「あ、あの馬鹿女ぁ~!!!」
「ティミー落ち着け!ポピーも何か考えがあったのかもしれないだろ!?」
父親としてこの場に居ない娘を、一方的に非難するわけにもいかず、ブチ切れそうになっている息子を珍しく宥めている。

「あの女にそんな深慮があるとお思いですか!?」
「いやぁ~父親としては答えにくい質問だなぁ…」
「じゃぁ兄として答えてあげます!アイツにそんな深慮はありません!面白半分でイオナズンのみを教えたんです!…その所為でエコナさんは津波に攫われてしまったんです!」
此処に居ない女性の事で憤慨するティミーを見て、小声でビアンカにポピーの事を尋ねるウルフ…
「ビアンカさん…ポピーさんってどんな娘さんなんですか?」
「う~ん…あの娘もね、複数人を同時に移転させるルーラを使えるのよ。しかも生まれつき…魔法の天才ね」
「すげぇ…」

「でも…性格が…父親に似ててね…その…身勝手なのよね…あの娘!」
「うわぁ~!」
ウルフのその一言が、ポピーという存在の感想を全て表している。

「ティミーもみんなも落ち着いて!…波に攫われたとしても死んだわけではないわ!生きて…何処かに流れ着くかもしれないじゃない!希望は捨てちゃダメよ…世界を旅していれば、また再会する事だってあり得るわ!だから今は気持ちを切り替えて、次の目的地へと進みましょう!」
アルルがリーダーらしく皆を鼓舞する。

悲しみが拭えた訳では無いが、やる事がある以上何時までも浸っている訳にもいかない。
皆アルルの言葉に従い、次の目的地に向け船を操作する………リュカですら!
そして皆が叫ぶ…
「貴方は何もしないで下さい!!」




<海賊のアジト>

たとえ悲しみに暮れる航海であっても、日没は平等に訪れる…
日も沈み周囲が漆黒の世界に変わる頃、アルル一行は次なる目的地へと到着する。
其処は遠くから見ただけでは普通の建物だが、中に入ると世界が変わる!


中には荒くれ者を絵に描いた様な厳つい顔の男達が、所狭しと闊歩している!
皆、日に焼けた浅黒い肌をしており、不精髭を生やし清潔さとは縁遠い存在だ。
「うわぁ…俺、こう言う人達は苦手だなぁ…」
ウルフは海賊達の悪人面を見て恐怖し、リュカの影に隠れる様について行く…
「僕も苦手だなぁ…こう言う不潔そうな連中は!………何より臭いよ此処!」
リュカなどは不衛生な出で立ちに嫌悪し、遠慮することなく文句を付ける!
そして大勢の極悪人面に一斉に睨まれるのだ。

「おう!何処の貴族様が迷い込んだのかと思ったら、カンダタじゃねぇか!!聞いたぞ、おめぇ心入れ替えて、勇者様一行と共に世界を救う旅に出たんだってなぁ…がはははは!おめぇが正義の味方になれるわけねぇだろ!何勘違いしてんだぁ!?」
一人の海賊がカンダタに近付き、侮辱して大爆笑する。
カンダタ自身は、それに文句を言うでもなく、愛想笑いでやり過ごそうとした。
そんな海賊に怒りを感じたアルルが、カンダタに変わり文句を言おうとした瞬間!
「お前…口臭いから、こっち向いて笑うなよ!て言うか息するな!」
リュカがお得意のナチュラルな挑発を行った!

咄嗟に反応したのはティミーとビアンカで、マリーを抱き上げリュカから離れる!
安全な距離まで避難して、振り返った時にはリュカを中心に大乱闘になっていた!
そして巻き込まれるアルル達…

「お前達いい加減にしな!!」
奥から現れた威勢の良い女性が、大声でこの場を収束させる!
しかし立っていたのはリュカやアルル達…それと海賊が数人だけ…
しかも無傷なのはリュカのみ………乱闘に巻き込まれなかったティミー・ビアンカ・マリーはもちろん無傷。

「カンダタ…一体どういう事だい!?いきなり乗り込んできて…アタイ達を壊滅させるつもりかい?」
「いや違うんだモニカ!先に手を出してきたのは、アンタ等の方だ!…まぁ、こっちの旦那も口が過ぎたのは認めるが…」
アルル・ハツキ・ウルフをベホイミで治療するリュカを指差し、謝る様にモニカと呼ぶ女性に話しかけるカンダタ。

「ふん!そいつ等かい?勇者様ご一行ってのは!?」
「初めまして海賊さん!私が勇者としてバラモス討伐を目指しておりますアルルです!以後お見知りおきを…」
少しトゲのある口調で自己紹介をするアルル…
手荒い歓迎にご立腹の様子だ!(リュカの所為なのだが…)

「ほ~う…こんなお上品な嬢ちゃんが勇者様ねぇ………アタイがこの海賊団の頭、モニカだ!」
「まぁ!お上品と言われたのは始めてね!貴女達から見ると、私はお上品に見えるんですか!?光栄と喜ぶべきですかね!?」
海では仲間を失い、先程は乱闘に巻き込まれ…その所為か、かなり苛ついてる様子のアルル。
これから彼女等の力を借りようと、交渉しに来たのだが…
果たして上手く行くのだろうか…?



 
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