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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Saga3-Aアインハルトの苦悩~Pain of a memory~

 
前書き
お久しぶりです! 前回の更新から1年以上と経ってしまい、申し訳ありません。
ようやく最終話まで書けたので、本日から3月9日まで毎日投稿します。
ルシリオンの長きに亘る旅路、その結末をどうかご覧あれ。 

 
†††Sideアインハルト†††

チームナカジマの合宿として無人世界カルナージのホテルアルピーノに、私はヴィヴィオさんア達と共にやって来た。
昨日は、ルーテシアさんとリヴィアさんが建設したアスレチックで汗を流し、午後は湖でもっぱら水泳に勤しんだ。以前、水中では水中の筋肉の使い方というものがあり、柔らかく持久力のある筋肉が出来るとノーヴェコーチから教わりましたが、確かによいトレーニングでした。

(そして今日は・・・)

「メガーヌさん、ルールー、リヴィ、本日より3日間お世話になります!」

クラウスの記憶にも登場する方が多く居らっしゃる八神家の皆さんが、この合宿に合流します。

「ええ、ゆっくりしていってね。・・・えっと、みんなのコテージは2番館、右から3番目ね♪ ルーテシア、リヴィア。案内してあげて」

「あ、ええですよ。2人とも、今はトレーニング・・・ってゆうか、ストレッチ中やろ? 宿泊先は教えてもらったし、2人もそうやけどヴィヴィオ達も気にせんで続けててな」

はやてさんからのお気遣いに、ルーテシアさんとリヴィアさん、それにヴィヴィオさん達は「はいっ!」と元気いっぱいの返事をしました。私も遅れて「ありがとうございます」と小さくですが一礼した。

「・・・お父さん? アインハルトさんがどうかしたの?」

「ん? いや・・・。なんでもないよ、フォルセティ」

八神家の皆さんがコテージに向かって歩いていく中、ルシルさんだけはその場に留まったまま、私を見ていました。ルシルさんの目は、まるで私の胸の内を見透かしているような鋭さで、居心地の悪さを感じました。今なお過去の過去の記憶に悩んでいる私の気持ちは、ルシルさんなら解かってくれるかもしれません。

「おーい、ルシル君。早く荷物を置いてしっかりストレッチせえへんと、ヴィヴィオ達に一杯食わされるかもしれへんよ♪」

「ああ、すぐに行くよ。・・・ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルト、それにルーテシアとリヴィア。今日の練習会を楽しみにしているよ。お互いに頑張ろうな」

そう言ってルシリオンさんは、八神家の皆さんやメガーヌさんと共に宿泊用コテージへ歩いて行きました。私はその背中に向かって「あ・・・」手を伸ばそうとしたのですが、すぐに思い留まる。私のこの悩みを相談してもいいのか迷ってしまったから。

「あの、アインハルトさん・・・」

おずおずと私を呼んだのはヴィヴィオさんでした。いつもは明るい表情で声を掛けてくださるのですが、今のヴィヴィオさんの表情は曇っていて。普段通り接し方をしているつもりでしたが、ヴィヴィオさんには気付かれているのかもしれません。私の胸の内に渦巻くある感情が、ヴィヴィオさん達との間に壁を作ってしまっていることに。

「はい、どうしましたか? ヴィヴィオさん」

「えっと、ストレッチの続きをお願い出来ますか?」

「あ、はい、そうでしたね」

2人1組で行うストレッチの最中に、八神家の皆さんがホテルアルピーノにご到着したので中断していたのでした。私はヴィヴィオさんと背中を向かい合わせて両腕を組み、ヴィヴィオさんが「いきますね!」と深くお辞儀。すると私の体が大きく反れました。次は私の番で、ヴィヴィオさんを背負うように体を曲げる。

「アインハルトさん」

「はい、なんでしょうか」

「アインハルトさんが抱えてる悩み、わたし達じゃ解決できませんか?」

2人1組でしか出来ないストレッチも終わりに差し掛かった頃、ヴィヴィオさんがそう聞いてきました。周りに居るコロナさんとリオさん、フォルセティさんとイクスさん、ルーテシアさんとリヴィアさんも、私とヴィヴィオさんの話に聞き耳を立てているようです。

「昨日、アスレチックコースのタイムアタックや午後からの水泳の時、アインハルトさんの纏ってた、その・・・拒絶というものが薄かったんですけど、今日はまた・・・」

アスレチックのタイムアタックやバトルは確かに楽しかったですし、水中トレーニングもいい具合に筋肉を鍛えられました。その時の私は悩みを忘れてしまうほどに熱中していたので、それがヴィヴィオさんの言う薄さになったのでしょう。

「よし、集合!」

ストレッチが終わり、空間モニターを睨んでいたコーチが号令をかけました。私は「ヴィヴィオさん、集合です」とコーチの元へと歩き出した。背後の気配からヴィヴィオさんが私を呼び止めようとしているのが判りますが、私は振り返ることなくコーチの前に立ちました。

「・・・はぁ」

コーチは私やヴィヴィオさん達を見て溜息を吐きました。ヴィヴィオさん達でさえ私の今の様子を察しているのですから、コーチもおそらく・・・。

「・・・今日の練習会だが、前々からチーム分けにえらく悩んだがなんとか決めた。相手はガチの戦闘特化なベルカ騎士だ。戦力が均等に分散するように気を付けたんだが、ちょっと難しくてな。だから・・・」

そこで区切ったコーチにヴィヴィオさんが「だから・・・?」と小首を傾げます。コーチがどんなことを続けるのか固唾を飲んで待ちます。

「とにかく、本物に扱かれて来い。チーム分けは以下の通り。チームナカジマ+ルーテシアとリヴィアVS八神家だ」

コーチから告げられたチーム分けの内容に私は身震いしました。守護騎士の皆さんは、クラウスの記憶の中でもその強さは圧倒的でした。八神家の皆さんと出会ってから結構経ちますが、拳を交えることはクラウスの頃からありませんでしたから、これから闘えるとなって興奮してしまう。

「ノーヴェ。ちょうストレッチするから待っててな」

「あ、はい! 大丈夫です!」

「ん。ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルト、ルールー、リヴィ。楽しい練習会にしような♪」

はやてさんに私たちは「はい!」力強く頷き返しました。八神家の皆さんがストレッチを始めたのを確認したコーチは、「んじゃ、はやてさん達のストレッチが終わるまでにこっちのポジションを伝えるぞ」と、私たちの前にモニターを展開しました。私たち赤組と、八神家の皆さんの青組の参加メンバーと、ポジションが表示されました。

「「「「「「え・・・!?」」」」」」

青組の参加メンバーとポジションを見て、私たちは驚きました。そんな私たちに「午後からはメガーヌさんの手伝いがあるそうでな。午前の練習会にしてほしいってリクエスト貰ったんだ」とコーチが苦笑しました。

「まず、リオ、アインハルトはフロントアタッカー」

「はい!」「はい」

フロントアタッカーは最前線で防衛ラインを維持することが役目のポジション。相手はなんとルシルさん、それにザフィーラさん。あのルシルさんと闘える。そう考えるだけでモヤモヤが少し晴れた気がします。

「ヴィヴィオはガードウィング」

「はい!」

「コロナはウィングバック」

「はい!」

「ルーテシアはフルバック」

「ん!」

「リヴィアはセンターガード」

「うん!」

ヴィヴィオさんと対となる相手はアイリさんですね。コロナさんはウィングバック――中後衛で、対となる相手はいません。ルーテシアさんの対ははやてさんとシャマル先生。リヴィアさんの対はアインス補佐官となります。

「ルールは昨日話した通り、チームナカジマを赤組、八神家を青組としての、どちらかのチームが全滅するまでのフィールドマッチ。ライフポイントはDSAA公式試合用タグで管理する」

コーチから渡されたタグをトレーニングウェアに付けたところで、ルーテシアさんが「そんじゃ、青組攻略について話そうか♪」」と、私たちに集合をかけました。今日のコーチは私たちの試合を見る側で指示を出すことはしません。そのため、最後衛のフルバックであるルーテシアさんが指揮を執ってくれます。

「相手は騎士の中でも屈指の実力を誇る八神家。魔力出力に制限があるといっても、その戦闘技術はとんでもない。だから射砲撃でフロントアタッカーのルシルさんとザフィーラさんを追い込みたいんだけど・・・」

まさかの作戦内容に知らず拳をぎゅっと握り締めていると、「アインハルトは不服なわけね」とルーテシアさんが苦笑しました。私は「あ、いえ」と首を横に振ります。

「あたしは不服かも。こんな機会なんてそんなにないと思うし、真っ向から闘ってみたい!」

「わたしもリオと同じ考えだよ、ルールー。最初の1戦は相手チームの戦いを直に感じてみて、2戦目から勝ちに行こうよ」

「お姉ちゃん。私もそれでいいと思う」

「コロナはどう? 負ける確率が10割近いけど、それでも真っ向からやってみたい?」

「うん。みたい」

「・・・判った。ノーヴェの言うように一遍しごかれてこよう。マッチアップの相手を1対1で抑え込んで。で、少しでも青組のライフを削ったら・・・」

ルーテシアさんがリヴィアさんを見たので、私たちも自然とリヴィアさんの方へと顔を向けました。私たち赤組で最も魔力と火力を有するのはリヴィアさんです。

「私の集束砲で、青組のライフをさらに削る。そうしたらこっちの生き残りで攻勢に打って出る」

1回目の試合で勝つのは無茶というのは、いくらなんでも私も理解できる。ただ、その経験を活かして次は勝ってみせる。

「変に搦め手を使わずに個々の実力勝負で勝敗を決しようってか。いいぜ、やってみな。あぁ、そうだ、ルシルさんは今回、広域攻撃は使わないって話だ。フロントアタッカーとしての役割を果たすそうだ」

広域攻撃はしないとのことですが、射砲撃は使ってくるようです。オーディンさんもそうでしたが、ルシルさんも1対多数戦を得意とする魔導騎士です。全力のルシルさんと闘えないのは少し残念ですが、今は本気で闘い合えることに感謝です。

「お待たせ。八神家一同――青組の準備は万端や。ヴィヴィオ達の体が冷めへんうちに始めようか」

八神家の皆さんもストレッチを終え、ルーテシアさんがバトルフィールドとなるシミュレーターを起動し、高さや大きさがまちまちな建造物群が出現しました。これは高低差を利用しての戦闘も視野に入れないといけない。

「おし。チームナカジマ一同、リストバンドを外せ」

コーチの指示に従って左手首にはめていたリストバンドを外す。コレは、月村技術官が私たちのために開発してくれた特別なもので、魔力に負荷をかけるというもの。負荷と開放を繰り返すことで、成長期である私たちの魔力量を通常よりさらに伸ばすことが出来ると言っていました。

(現に私の魔力量の伸びはかなりのものと思います)

「アインハルトさん。あの・・・」

リストバンドをコーチに預け、そしてデバイスを起動して防護服への変身を終えて、それぞれのポジション位置に付こうというところでヴィヴィオさんに声を掛けられました。私は何を言おうかと迷っているようなヴィヴィオさんに振り向いて、「頑張りましょう、ヴィヴィオさん」と伝えました。

「っ! は、はい! 頑張りましょう!」

そうして赤組と青組はフィールドの端と端に分かれ、ルーテシアさんが全体に聞こえるように『ママー! 試合開始の合図をおねがーい!』と通信を開きました。

『はーい♪』

私の側にもモニターが展開され、ルーテシアさんとリヴィアさんのお母様であるメガーヌさん、そしてコーチ、午前の練習会には不参加のシグナム一尉とヴィータ教導官、アギトさん、リインさん、それにフォルセティさんとイクスさんとファビアさんが映し出されました。

『では、ノーヴェコーチから試合前に一言♪』

『え、あ、こほん。えー、怪我の無いように正々堂々と頑張りましょう!』

『『それでは試合開始ぃー!!』』

リインさんとアギトさんが一緒に持っている撥でコーチ達の後ろにある銅鑼を打ちました。それが合図となり、前線を押し込められないように私とリオさんは即座に前進します。

「リオさん。ザフィーラさんのお相手をお願いしていいですか?」

「はい! 任せてください!」

同じようにこちらに向かって来ている狼の姿をしたザフィーラさんと、ザフィーラさんの背に跨っているルシルさんと目が合う。

――ブルーティガー・ドルヒ――

――ハーツイーズマルチファイア――

そこにリヴィアさんとアインスさんが放った数十発という射撃魔法が、最前線の私とリオさん、ルシルさんとザフィーラさんの元に降り注いできました。2つの射撃魔法は私たちの頭上で相殺され、爆風が地上を走る私やリオさんの髪を揺らしました。

「ルシルさん! 一槍お願いいたします!」

「ああ! 来い、アインハルト・ストラトス!!」

ルシルさんは「リオの方を任せる」とザフィーラさんに言い、その背中から飛び降りました。そしてザフィーラさんはリオさんの元へと突進し、激突直前に跳躍。空中で人の姿へと変身して、落下しながらリオさんに殴りかかりました。

「そちらから誘っておいて余所見かい?」

「っ・・・!」

ハッとして視線を前に戻せば、すぐそこにまでルシルさんが接近していました。左手に携える双槍“エヴェストルム”による薙ぎ払いが繰り出され、私はグッと腰を落として回避。“エヴェストルム”は柄の左右に穂を有する槍、初撃を躱しても即座に反対側の穂による2撃目が来る。

「(その前に!)はあああああ!」

地面に両手を付いて片足を伸ばし、そのままルシルさんに足払いを仕掛けます。足払いは成功し、ルシルさんは後ろ向きに倒れこみそうになりましたが、“エヴェストルム”を地面に突き刺して支えにすることで転倒を免れました。

(こちらが体勢を立て直すまでの猶予が生まれただけで十分です!)

ルシルさんより離れ、改めて構えを取る。ルシルさんも体勢を直して私と向き合いました。ピンっと張り詰めた空気の中、私たちの周囲では戦闘音が鳴り続けています。私は息を吸い、止めた瞬間に地を蹴る。

(セインテストに、覇王の拳を届けてみせます!)

これまでに学んできた技術や、ジークリンデさん達との練習で得た経験を総動員して、完封負けだけは避けたい。

「はっ! せいっ! たあっ!」

「くぅ・・・!」

ルシルさんの横薙ぎと刺突の連続攻撃を紙一重に躱しつつ、攻撃の機会を伺います。ですが、断空に必要な力を練り上げるための起点となる足をこうも狙われては・・・。

「断空。その威力は素晴らしく、これからまだまだ伸びていく強力な武器だ。が、今のように君の動きを制限すれば、断空による攻撃は基本的に防げる。上位競技者なら、その弱点をすぐに見破るだろう」

「ならば!」

ルシルさんへの接近を中断し、私は一足飛びで距離を開ける。ルシルさんの追撃が来る前に、覇王流の数少ない中距離攻撃、衝撃波を飛ばす「覇王空破断・改!」を打ち放つ。

(刺突によって伸びきった腕で空破断を迎撃できるだけの威力を持つ斬撃は振るえない。ならばシールドか回避かを選ぶはず!)

その僅かな猶予の内に一撃を打ち込むために私は突進。ルシルさんは迫る空破断を前面に展開したシールドで防御しました。そんなルシルさんの右側へと回り込んだ私は、「はっ!」攻勢に出る。“エヴェストルム”は2m以上もある槍です。懐に入ってしまえば薙ぎ払われることはありません。

「ところで、アインハルト。君、何か最近、ヴィヴィオ達に壁を作っているそうだな」

――ゲブラーフォルム――

「っ!?」

ルシルさんの言葉と同時に“エヴェストルム”が柄の中央で分離し、双槍から双剣となりました。右の剣の腹で私の拳を受け、左の剣で攻撃を仕掛けてきました。

「試合中なので! 今は!」

大振りな振り下ろしだったので僅かに横にズレることで回避。私の拳を受けた右の剣を外側に弾くように腕を外に払うルシルさん。地面を穿った左の剣が私に向かって振り上げられようとするのを片足で踏みつけて阻止すると同時、「おっと」とルシルさんが剣を手放しました。

「でぇぇぇぇい!」

残る右の剣による攻撃が出来ないようルシルさんにインファイトを仕掛ける。射砲撃による強制的な間合い取りも行えるはずなのですが、ルシルさんは射砲撃を使わず、足捌きのみで間合いを開けようとしています。甘く見られているのか、少しばかりムッとしてしまう。

「先ほどの続きだが、無限書庫でヴィルフリッド・エレミアの手記を読んでからだそうだな」

「い、今は・・・今は!」

なぜ、このタイミングでその話をしてくるのでしょうか。私は今、ルシルさんとの手合わせだけに集中したいのに。私を苛む悩みを忘れて闘えると思ったのに。ふつふつと湧き上がる怒りのような、悔しさのような、嫌な気持ち。

「私との手合わせに集中してください!」

そんな嫌な気持ちを拳に乗せて繰り出す。ルシルさんは空いている左手で私の拳を受け止めるとギュッと鷲掴んで、「集中しているとも。ただね・・・」私を放り投げました。真上に投げ飛ばされたことで足を付けられる建物が遠い。ゆえに地面に着地するまでの間は何も出来ない・・・。

(いえ! あの手がありました!)

騎士の方々がよく使う、シールドを宙に展開して足場とするという手段で、空中での体勢を整える。ルシルさんの方を見れば、両方の剣を再連結した“エヴェストルム”を待機形態に戻し終え、周囲に蒼く輝く魔力槍を6本と展開していました。

『アインハルト!』

『逃げてください!』

――コード・シャルギエル――

ルーテシアさんとヴィヴィオさんからの通信で、今まさに私に向かって飛来した氷の槍に気付いた。私は回避を最優先に魔法陣を蹴り、迫る氷槍を紙一重でしたが回避。しかし私に迫る危機はそれだけではありませんでした。

――舞い降るは汝の煌閃(コード・マカティエル)――

ルシルさんより射出される魔力槍6本が、私を穿とうと迫ってきます。私の防御魔法で防げるようなものではないと即断し、地上に向かって建物の外壁を駆け出す。私が通り過ぎた場所に次々と魔力槍が突き刺さり、爆発していく。爆風に煽られながらも地上に着地した私は、こちらに向かって突進してくるルシルさんの迎撃に入る。

「先ほどの続きだけど。あとで聞こうにも、はぐらかされそうだったからね。試合中なら逃げられることはないから、話が出来ると思ったんだ。君の悩みはやはり、シャルの家でみんなに語った、クラウスの記憶に起因しているものだろ?」

「それは・・・!」

二の句を継げない。大事な試合の中で、今は忘れておきたい話で、私の悩みの核心を突いてきたから。それでも今はこの試合の集中したいため、かぶりを振って構えを取った。
 
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