| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

戦姫絶唱シンフォギアG
第2楽章~ネフィリムの目覚め~
  第9節「新校舎と新学期」

 
前書き
今回は日常回、学園での装者達をお届けいたします。

学祭終わった日の夜にトラウマ生産したビッキームシャムシャくんは絶許。
XDキャラも出るよ!

それでは今回もお楽しみください!! 

 
都内、西洋風の外観をした学校施設。
長らく廃校だったそこは現在、私立リディアン音楽院の新校舎として、賑わいを取り戻していた。

響達が通っていたかつての学び舎は、カ・ディンギルの起動に伴って破壊されてしまったのだが、その後、政府が廃校だったこの学校施設を買い取る事によって新生したのだ。

生徒数は、春の新学期と比較して6割程度にまで減少したものの、混乱は徐々に収まっており、新生活の活気すら漂わせ始めている。

また、新校舎の準備が終わるまでの期間を共学で過ごした姉妹校、アイオニアン音楽院との合併の話が持ち上がっており、主に共学期間中に付き合い始めたカップルが喜んでいるとか。

そんなリディアン新校舎の教室、一番後ろの角に位置する窓際の席にて。
響は窓から青空を見上げながら、一週間前の戦いを思い出していた。

(ガングニールのシンフォギアが2つあるんだ……だったら、戦う理由がそれぞれにあっても不思議な事じゃない……)

『わたしは、困っている皆を助けたいだけで……だから──ッ!』
『それこそが偽善ッ!』

「はぁ……」

あの後、翔くんはこう言ってくれた。

『ある人が言っていた。“人の為に善をなす者、と書いて『偽善者』だ”って。善を為そうと云う気持ちに真偽なんてあるものか。響のその気持ちに、偽りなんてないんだろう?』

……そう言われると、ちょっとだけ楽になった気がする。

けど、やっぱりあの子の言葉は、胸が痛かったなぁ……。

せめてもう一度あの子達と話せたら……。でも、二課の人達にもまだ行方は分からないみたいだし──

「……びき……ひび……ったら……」

わたしが戦う理由……自分の胸に、嘘なんてついてないのに──

「立花さん、何か悩み事でもあるのかしら?」
「はい……とっても大事な──」
「秋ですものね。立花さんにとって、きっといろいろ思うところがあるんでしょう。例えば、わたしの授業よりも大事な──」
「──あ、あれっ?」

気が付けば、目の前に先生が立っていた。
それも、メチャクチャ怖い顔で……。

「……新校舎に移転して、三日後に学祭も控えて……誰も皆、新しい環境で新しい生活を送っているというのに、あなたと来たら相も変わらずいつもいつも! いつもいつもいつもいつもいつもいつも──ッ!」

やっば~……先生凄く怒ってる!?

えっと、なんとかしなきゃ! ええっと……!

「で、でも先生ッ! こんなわたしですが、変わらないでいてほしいと言ってくれる心強い友達も案外居てくれたりするわけでして──」
「とぅああちばなさぁぁんッ!!」
「ひいぃッ!」

この後、しこたま怒られちゃった上に、課題を増やされちゃって翔くんに手伝ってもらう事になったのは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです……はい……。

翔くん、本当にありがと~ッ! この借りはいつか必ず返すから、ツケにしといて!

「……ばか」

なお、サラッと話題に出された隣の小日向さんの呟きと不貞腐れた顔は、響含め誰にも見られていないとか。

ff

一方、同じ頃のアイオニアン音楽院。

こちらのとあるクラスでも、響と全く同じ状態になっている男が一人。

(あれから一週間とはいえ……響、大丈夫かな……)

当然、響の恋人こと風鳴翔である。

(二課のものではないシンフォギアに、発展型のRN式まで……。厄介な敵が現れたな……)

武装組織フィーネは、あれから一週間も動いていない。

その目的が掴めない中で、翔も今出ている情報から考察を試みているのだが、点と点が上手く結ばれず、モヤモヤし続けていた。

(俺達が岩国基地に行っている間に盗まれたという聖遺物、サクリストI……生弓矢。まさか、俺の胸に宿るこいつ以外の欠片があったなんて、思いもしなかったな……)

生弓矢護送任務の際、俺が融合した欠片とは別に、遺跡の調査が進んだ事で新たに発見された欠片があったらしい。

と言っても、生弓矢が置かれていた場所を洗い直したら出てきたらしく、発見されたのはルナアタックと同時期だったとか。
灯台もと暗し、とはよく言ったものである。

それが盗まれた。事の重要さは、他の誰より俺が一番理解している。

「……ざ……りクン……」

生弓矢は生命を司る聖遺物。ギアとして纏い絶唱すれば、死者蘇生の奇跡さえ可能とする……文字通り、生殺与奪の権を握る事ができる力だ。

融合している俺でさえ、まだ分からない事だらけの聖遺物でもある。

「……か……なりク……いて……るのかね……?」

悪用されたらと思うと、恐ろしさに背筋が凍る。
果たして彼らは、一体何を企んで──

「風鳴クン! 聞こえているのかね!?」
「ッ!? はっ、はいッ!?」

気付けば、すぐ目の前には見慣れたちょび髭眼鏡の小太り顔が立っていた。

凪景義(なぎかげよし)先生、俺達の担任である。

「まったく、(チミ)にしては珍しいじゃないか。授業が全くの上の空とはね」
「すみません……」
「何か考え事かね。さては(チミ)、恋煩いでもしてるのかね?」

次の瞬間、クラスがドっと沸いた。

「センセー、そこはご心配に及ばず! 翔にはとっくにカノジョがいるから、恋煩いする時期は過ぎてまーす!」
「なっ、紅介!」
「なんだって!? ぐぬぬ、(ボキ)でさえまだだと言うのに……これが格差社会だとでも言うのかッ! 理不尽じゃないかね!?」

紅介、凪先生本気で悔しがってんぞ。
胸ポケットから取り出したハンカチを噛むってどんだけ古典的なんだよ先生……。

まあ、こんな人だからこそ、生徒達から愛されているのだが。
性格面白くて授業も分かりやすい。あとこう見えて結構生徒思いな所もある、良い先生だ。

これでもう少し痩せてて、尚且つ常に給料を気にする発言さえなければ、きっと女性にもモテると思うんだけど……悲しき哉。天は二物を与えず。
独身のままアラサー目前を迎えてしまっているので、最近ちょっと焦っているらしい。ファイトだ先生。

「しかし、彼女がいるなら他にどんな悩みが……ハッ! そういう事か。さては風鳴クン、三日後の秋桜祭に気が向いてしまっているんだな? そうだろう?」

いや、否定も肯定もしていないのだが?
なんで「謎は全て解けた」みたいな顔してるんだこの人は。

でも、秋桜祭か……そういや、あと三日後なんだよな。

近くに開催を控えているリディアンの学祭、「秋桜祭」。
共同作業による連帯感や、共通の想い出を作り上げる事で、生徒達が懐く新生活の戸惑いや不安を解消する。そういう目的の元に企画されているのだとか。

そこに今年は合併へのお膳立てとして、アイオニアンと合同での学祭となっている。

この合併、表向きではリディアンの生徒数減少に加えて、共学により生徒達の学力の向上が見られ、更には合併する事で異性との交流によりコミュニケーション能力が上がるというメリットも存在する為、という事になっている。

実際、異性との交流から社会性が身につく、というのは道理である。
それにリディアンとアイオニアンは姉妹校、合併の流れにも不自然な点はない。

だがその裏には、国家機密の塊であるシンフォギアを扱う装者と伴装者を一箇所に纏める事で、機密保持の労力を削減できる……という思惑が存在するのである……。

アイオニアン同様、リディアンからは以前の後暗い側面──シンフォギア装者の選出、ならびに音楽と生体から得られる様々な実験データの計測等を行う研究施設としての機能は、現在では一時凍結。叔父さん達の意向で廃止に向かっている。来年にはきっと、ただの音楽校になっている筈だ。

まあ、こんな後暗い話を知っているのは俺だけで十分だし、皆には関係の無い話だ。
誰かに危害が及ぶわけでもなし、いちいち気にすることでも無いだろう。

寧ろ、響と一緒に学祭過ごせるじゃんラッキー、くらいに捉えておこうかな。

……ハッ、この結論になった時点で凪先生の言う通りでは!?

「図星みたいだねぇ……まったく! うらやまけしからん!」
「どっちなんですか!?」
「どっちもに決まってるじゃないか!」

凪先生は溜息混じりに天井を仰いだ。

「ともかく! 青春するのもいいが、授業はきっちりと受けるように。(チミ)達の学力は(ボキ)のお給金に関わるのだからね!」
「は、はい……気をつけます」
「よろしい。それでは次のページを、大野クン! ……の弟の方! 流星クン、読みたまえ」
「先生……いい加減紛らわしいので覚えてください」

先生は教科書を開きながら、教卓へと戻って行く。
三日後、か……。今日も午後からはリディアンで合同準備だし、向かう途中で差し入れでも買っていく事にしようかな。

ff

放課後、リディアン三年生の教室。

その片隅にて、装飾用の紙花や輪飾りを作っている生徒が五人ほど。

そのうち二人は、よく見知った顔である。
風鳴翼、そして新学期から二年生に編入したクリスだ。

何故二年生のクリスが、三年生の翼と同じ部屋にいるのか。
理由は暫く前に遡る。

学祭の準備の為、テープや画用紙を運んでいた翼は、廊下の角から走って来たクリスとぶつかった。

何事かと話を聞くと、どうやら学祭のイベントにクリスを参加させようとするクラスメイト達から逃げて来た、との事であった。

フィーネを名乗る武装組織が現れたのに、こんな事にかまけている暇があるのか、とも言っていたが、何処か言い訳臭い。

折角の学友達からの誘いに素直に乗れず、恥ずかしがっては逃げてしまう。
そんなクリスの姿に、翼は自分の作業を手伝う事を提案したのだった。

「まだ、この生活に馴染めないのか?」
「まるで馴染んでないやつに言われたかないね」
「フッ、確かにそうだ。しかしだな、雪音──」
「あ、翼さん。いたいた」

そこへ、翼のクラスメイトが三人ほど、入室して来る。

「材料取りに行ったまま戻って来ないから、皆で探してたんだよ?」
「でも、心配して損した。いつの間にかカワイイ下級生連れ込んでるし」
「皆、先に帰ったとばかり……」
「だって翼さん、学祭の準備が遅れてるの、自分のせいだと思ってそうだし」
「だから、私達で手伝おうって」
「私を……手伝って?」

それは、翼にとって意外な言葉らしく、思わずキョトンとしてしまう。

「案外人気者じゃねぇか」

翼の珍しい表情に、クリスはニヤニヤと笑いながら冷やかすように言った。

「でも昔は、ちょっと近寄り難かったのも事実かな~」
「そうそう。ココーノウタヒメって言えば、聞こえはいいけれどね」
「始めはなんか、私達の知らない世界の住人みたいだった」
「そりゃあ芸能人でトップアーティストだもん」

そこで一度、クラスメイト達は間を置き、顔を見合わせる。

「でもね」
「うん」
「思い切って話しかけてみたら、私達と同じなんだってよく分かった」
「特に最近は、そう思うよ」
「みんな……」

初めて知った、クラスメイト達から見た自分。

初めて聞いた、学友達の本音。

何処か嬉しそうに笑う翼。それを見てクリスは、わざとらしく手を振った。

「ちぇ、うまくやってらぁ」
「面目ない……気に障ったか?」
「さぁてね?」

そっぽを向くクリス。しかし、その顔は……。

「だけどあたしも──もうちょっとだけ頑張ってみようかな……」

何処か、先程よりも険しさが抜けていたような気がした。

「ふっ……そうか」

学校生活の何たるか。それをようやく見いだせそうな後輩に、翼はクスッと微笑んだ。



「翔、嬉しそうだね」
「そういうお前も、顔が綻んでるぞ?」
「お互い様だね」
「だな。そろそろ出ていって、差し入れしないと」

片や心の壁を開き、片や自ら歩み寄る意志を固めて。ようやく学校に馴染み始めた姉と姫を、教室の入口の影から見守る弟と王子であった。 
 

 
後書き
先日のよい夫婦の日に千慧理登場回を読み返すよう促すツイートしたのはそういう事かって?
さあ、どうなんでしょうねぇ(笑)

凪先生を知らない人の為に、ざっくりと説明。

凪景義。XDUのイベントシナリオ、『竜姫咆哮メックヴァヌラス』に登場。板場、寺島、安藤ら三人娘が戦う平行世界の特異災害対策機動部二課司令代行として登場。司令ならぬ仮令である。
小太り眼鏡でチョビ髭、小物発言が多くヘタレ、特技はハッキングというだいぶアレな人であり、明らかに何か隠しているその態度から登場当初は若干疑われていたりもした。

しかし、実のところ彼もれっきとしたOTONAの一員であり、その臆病さゆえの慎重さと用心深さ、そしてその脂肪はそのためのものかと思えるほどの耐久力で本部崩壊から生存。
竜姫らのピンチに生き残った職員らと共に駆け付け、追い詰められていた装者らの元へと急行させ最終決戦へ持ち込むという快挙を成し遂げた。

後半でイメージが一転したため、有能さを隠すほどのヘタレや小物臭い発言の数々も愛嬌になっている辺りが巧い。流石金子監督である。
分かりやすい例でいうとFGOのゴルドルフ新所長タイプ。

伴装者世界線ではアイオニアンの教師ということで登場していただきました!
多分今後も、XD出身のキャラがちょくちょく出てくることになると思いますので、誰が出るのかお楽しみに!

さて、次回はアレですね……忘れた頃にやって来る赤いガスお披露目回。
それではまた次回! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧