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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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戦姫絶唱シンフォギアG
第2楽章~ネフィリムの目覚め~
  第8節「戸惑いのカルマート」

 
前書き
第二楽章、開幕です。

今回は翔ひび始め学生組は出番なしです。
何故なら今回はフィーネ組のターン!

緒川さんが忍者だと判明したのも、そういえばG3話が初でしたね。

それでは、どうぞお楽しみに! 

 
町外れ、海沿いに存在する廃病院。

その奥にあるモニターの前にて、キーボードを操作するのはマムと呼ばれる老年の女性……米国の聖遺物研究者、ナスターシャ教授だ。

モニターに映し出されているのは、先日の戦闘記録。
響達がS2CAを放った瞬間の映像。

「他者の絶唱と響き合うことで、その威力を増幅するばかりか、生体と聖遺物の狭間に生じる負荷をも低減せしめる……。櫻井理論によると、手にしたアームドギアの延長に絶唱の特性があるというが、誰かと手を繋ぐ事に特化したこの性質こそ、まさしく立花響の絶唱……。降下する月の欠片を砕くために、絶唱を口にしてもなお、装者達が無事に帰還できた最大の理由──」

そこで映像は切り替わり、今度は先日の戦闘にて生じたフォニックゲインにより起動させた、二つの聖遺物の画像……そして、片方の上に開かれたブラウザには現在、別室にて撮影中の映像が表示される。

「絶唱の三重奏、更にはその力をより安定させ、より効果的なものへと昇華する風鳴翔のアームドギア……。ならばこそ計測される爆発的なフォニックゲイン。それを以てして、ネフィリムを、天より落ちたる巨人を目覚めさせた……。そして、“生弓矢”もまた──」

ネフィリム。そう呼ばれた怪物は、檻の中で餌を貪っている。

一目で自然界の生物ではない、と判別できるほどに不気味なその外見。
一心不乱に餌にありつくその姿には、それが抱くおぞましささえ感じるほどの貪欲な飢餓衝動を感じさせる。

覚醒の鼓動。それはこの世に解き放たれて良いものだとは、とても言えない存在が目覚めた証だった。

ff

「ライブ会場での宣戦布告から、もう一週間ですね」

特異災害対策機動部二課仮設本部、発令所。

藤尭、友里の両名は、司令である弦十郎からの支持で、ネットワークを通じての情報収集に勤しんでいた。

「ああ。何もないまま過ぎた一週間だな」
「政府筋からの情報ではその後、フィーネと名乗るテロ組織による一切の示威行為や、各国との交渉も確認されていないとの事ですが……」
「つまり、連中の狙いがまるで見えてきはしないという事か」
「傍目には、派手なパフォーマンスで自分達の存在を知らしめたくらいです。お陰で、我々二課も即応出来たのですが……」
「事を企む輩には、似つかわしく無いやり方だ。案外、狙いはその辺りなのか?」

あれ以降、武装組織『フィーネ』に関しては一切の情報が得られていない。

その上、あれだけ派手にアピールしていながらも、その後一週間も音沙汰がないのだ。

全世界に向けて、ド派手に宣戦布告した組織とは思えない程の大人しさに、弦十郎達は警戒を募らせていた。

そこへ、緒川の端末からの入電が入った。

『風鳴司令』
「緒川か。そっちはどうなっている?」
『ライブ会場付近に乗り捨てられていたトレーラーの入手経路から、遡っているのですが……』
『この野郎ッ!』

緒川の声とは別に、オラついた乱暴な声や銃声、その他争いによって生じる騒音が入っているのだが、気に留める者は誰もいない。

情報部の仕事で色んな場所へと赴く緒川にとっては、戦闘・鎮圧をこなす片手間で報告を入れるなど朝飯前なのだ。
通信に反社会勢力の悲鳴が入っている事など、よくある事なのである。

『辿り着いたとある時計屋さんの出納帳に、架空の企業から大型医療機器や医薬品、計測機器等が大量発注された痕跡を発見しまして』
『うおぉッ!?』
『こいつ、忍法を使うぞッ!? ぐわぁッ!』
「医療機器?」
『日付は、ほぼ二ヶ月前ですね。反社会的なこちらの方々は、資金洗浄に体良く使っていたようですが……この記録、気になりませんか?』
「ふぅむ……追いかけてみる価値はありそうだな」

ようやく発見した、武装組織への足がかり。
緒川は戦闘で散らかり、気絶した組員達で死屍累々とした反社会勢力の事務所の中にて、端末を肩で支えながら確信めいた笑みを浮かべた。

ff

町外れの廃病院。そのシャワールームにて。

金の短髪の少女、切歌は隣でシャワーを浴びる黒髪の少女、調へと興奮気味に話しかけていた。

「──でね、信じられないのは、それをご飯にザバーッとかけちゃったわけデスよ! 」
「……」
「絶対おかしいじゃないデスか。そしたらデスよ……?」

先程からずっと黙り込んだままの調は、心ここに在らずといった様子だ。

「……まだ、アイツの事を……デスか?」

調は、一週間前に交戦したシンフォギア装者……立花響の事を思い出していた。

『話せば分かり合えるよッ! 戦う必要なんか……ッ!』

「……なんにも背負ってないアイツが、人類を救った英雄だなんて、わたしは認めたくない」
「……本当にやらなきゃならない事があるなら、たとえ悪いと分かっていても、背負わなきゃいけないものだって……」
「……。……ッ!」

苛立ちが募ったのか、切歌がシャワーを止めた次の瞬間。
調はカッと目を見開き、力任せに壁を殴り付けた。

「困っている人達を助けると言うのなら、どうして……ッ!」

あくまでも調の視点だが。彼女から見た立花響という装者は、自分達のように背負っているものもなく、何も知らないクセに『話せば分かり合える』等という甘ったるい理想論を口にする、この世界にありふれた偽善者の一人として映っていた。

そんな彼女の無神経さが、調にはとても気に障ったのだ。

「調……」

切歌はゆっくりと調の手を取ると、その拳を優しく開かせ、自分の手を握らせた。
握られた切歌の手に、調はもう片方の手を重ねる。

二人がその両手を繋ぎあった所に、スタスタと足音が近づく。

髪を下ろしたマリアが、二人の更に隣のシャワーを浴び始めた。

「それでも私達は、私達の正義とよろしくやっていくしかない。迷って振り返ったりする時間なんてもう、残されていないのだから……」
「マリア……」
「……」



その頃、反対側にある男子用のシャワールームでは、ツェルトが一人でシャワーを浴びていた。

途中、壁を殴る音に驚いたりしてはいたが、ずっと考えていたのは調と同様、特機部二の装者の事だった。

(風鳴翔……。日本政府の重役の家柄だって聞いた時は、“日本政府の防人”と名高い姉と違って、さぞかしいけ好かない甘ちゃん野郎だと思っていたんだが……)

響を“偽善者”と断じた調と対照的に、ツェルトの心には迷いが生じ始めていた。

『姉さんのライブを台無しにしたお前に、振るう資格などあるものかッ!!』
『地に沈め、擬き者っ!』

(姉さんのライブ、か……。なんだよ、それ……そんな事言われちまったら、まるで俺達、ヴィランみたいじゃねぇか……ッ!)

翔の言葉には、姉への強い思いが込められていた。

大義や正義といった大きなものではなく、姉の晴れ舞台を楽しみにして来た一人の弟としての……とても少年らしい、等身大の怒り。
その怒りはとても身近な必然を伴ったものであり、同時にあの場にいた観客達の心とも合致していた筈の言葉だ。

それがあの瞬間、ツェルトの心を抉った。

(俺達には果たすべき使命がある。救わなければならない人達がいる。だから、正道ではないと理解した上でこの道を選んだんだッ! なのに……クソッ! どうしてこんなにも、胸が痛いんだよッ……!)

「それでも私達は、私達の正義とよろしくやっていくしかない。迷って振り返ったりする時間なんてもう、残されていないのだから……」
「ッ!?」

ツェルトの迷いを見通したように、隣の女子シャワールームからマリアの声が聞こえた。

「……マリア……そう……だよな……」

ツェルトは右の二の腕をギュッと握る。

肘から下のない、義手の外れた隻腕。
それは決して消えない、忘れられない傷跡。

片腕で済んだ自分と違って、あの日守れなかった少女は全身に火傷を負い、今でも目を覚まさない。

(俺の不甲斐なさが、あの娘を……セレナをあんな目に……)

左手に自然と力が入る。
もう迷わないと決めたのに、ブレそうになっている自分が腹立たしい。

(迷っている時間はない。振り返る暇さえ許されない。その間に失われる生命があるのなら……俺は──ッ!)

その時、警報音が鳴り響く。

「ッ!?」

慌ててシャワーを止め、脱衣所へと走る。
急いで髪を拭きながら着替え、右腕に通常用の義手を装着。

「ツェルト!」
「マリィ!この警報は!?」
「分からないわ……でも急ぎましょう!」

マリア達と合流し、四人はナスターシャ教授がいる部屋まで一気に駆け抜けた。



五枚の隔壁が瞬時に降ろされ、強固なロックが掛けられる。

マップの上に【LOCKED】と赤文字で表記されると、ナスターシャ教授は警報を止め、一息吐く。

カメラの映像を確認すると、ネフィリムは荒い息遣いで、与えられた新たな餌に喰らい付いていた。

「……あれこそが伝承にも描かれし、共食いすら厭わぬ飢餓衝動……。やはりネフィリムとは、人の身に過ぎた──」
「人の身に過ぎた、先史文明期の遺産……とかナントカ思わないでくださいよ」
「ドクター・ウェル……」
「たとえ人の身に過ぎていても、英雄たる者の身の丈に合っていれば、それでいいじゃないですか」

暗がりから現れたウェル博士は、コートのポケットに両手を突っ込みながら、極めて穏やかな表情で微笑んでいた。

そこへ、マリア達が入室する。
風呂上がりであるため、女子三人の服装はバスローブやネグリジェ、キャミソールといった生地の薄いものが並ぶ。

お陰で見事にツェルトが浮いてしまっているのだが、女性の比率が高い以上は仕方ないだろう。

「マムッ! さっきの警報は──あっ……」

モニターに映るネフィリムに、マリアは全てを察した。

「次の花は、まだ蕾ゆえ、大事に扱いたいものです」
「心配してくれたのね。でも大丈夫、ネフィリムが少し暴れただけ。隔壁を下ろして食事を与えているから、じきに収まるはず」

病院全体が大きく揺れる。
ネフィリムがまだ暴れているのだ。

「マム──」
「対応措置は済んでいるので大丈夫です」
「それよりも、そろそろ視察の時間では?」
「フロンティアは、計画遂行のもう一つの要。軌道に先立って、その視察を怠るわけにはいきませんが……」

ウェルの言葉に、ナスターシャ教授は彼を訝しげに見つめる。

「こちらの心配は無用。留守番がてらにネフィリムの食料調達の算段でもしておきますよ」

対するウェル博士は、人の良さそうな笑みでそう返した。

「では、ツェルトを護衛に付けましょう」
「こちらに荒事の予定は無いから平気です。ソロモンの杖だってありますし。寧ろ、そちらに戦力を集中させるべきでは?」

ウェル博士の言う事は尤もだ。
ソロモンの杖がある以上、護衛を付ける利点は薄い。

一方、ナスターシャ教授はこの組織を率いる存在だ。
護衛の数は多いに越したことはない。

「わかりました。予定時刻には帰還します。後はお願いします。行きましょう」

そう言って車椅子を動かし、マリア、切歌、調と共に立ち去っていくナスターシャ教授。

最後に続いたツェルトは、ホッとしたように胸を撫で下ろしていた。



そして、五人が立ち去りドアが閉じるのを確認すると、ウェル博士は先程までの人の良さそうな笑みを崩して独りごちる。

「……さて、撒いたエサに、獲物はかかってくれるでしょうか?」 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?

緒川さんツエーイ……。
あと狂犬時代の調ちゃん目付き悪ッ!

それにしても切ちゃん、それは何の話だったの?

そして何話かぶりのツェルト視点。
大儀の為に、一人の少年の心を踏み躙った。そんな自分たちは、果たして正しいのか?
そういう風に悩めるツェルトの姿は、ウェル博士との対比でもあります。

それと、RN式Model-GEEDのイラストです。

モチーフはジードライザー+アームドメフィストです。
ツェルトはライダーマンよろしく、義手をこれに取替えることで転調します。
普段はアタッシュケースに入れて持ち歩いてる設定ですね。

次回は響達に視点が戻ります。
Twitter見てる人達はもう知ってますが、次回はなんと先日XDで大活躍したあのキャラが登場します!

どんな立ち位置なのか、次回をお楽しみに! 
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