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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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深慮遠謀

<ダーマ神殿前>

「さてアルルちゃん!さっきイシスへ行くって言ってたけど…イシスって砂漠の国よね?魔法の鍵を手に入れたのに、また砂漠になんか行くの?」
カンダタ・ハツキ・ウルフが無事転職を終え、アルル達と合流した為、ダーマ神殿から出て行く一行。
そして外へ出た所でビアンカがアルルに、次の行き先の事で質問をする。

「あぁそっか…ビアンカさん達には説明がまだでしたね………」
アルルはビアンカ達に事の経緯を説明し、今後の予定を報告する。



「………なるほど…この悪党の所為で、面倒事が増えた訳ね…」
「あ…姐さん、ひでぇッス!」

「でもアルル…マリーちゃんに砂漠はきつくないか!?」
「せやね!ウチ等の足でも2週間はかかるしね…」
ウルフとエコナが幼いマリーを気遣い、今後の予定に疑問を持ち始めた。

「それなら大丈夫よ!ルーラで行けば良いのだから!」
しかしビアンカがアルル達の心配を気にせず、勝手な事を言い出した。
「ビアンカさん、何言ってるんですか!?私達の中にルーラを使える人は居ませんし、それにルーラは術者しか移転できないんですよ!キメラの翼も同じです…イシスに言った事のないビアンカさん達には効果がありません!」
背中まで届いてたストレートヘアーを、三つ編みで纏め動きやすくしたハツキが、ビアンカにルーラやキメラの翼の事を説明する。

「あー…みんなごめんね。僕から謝るよ!実は父さんはルーラを使えるんだ!」
申し訳なさそうにティミーがみんなに謝る。
「何や…やっぱりリュカはんはルーラを使えたんか!まぁそうじゃないかとは思っとったけどな!ちょくちょく何処かへ行ってた様やし…」

しかし誰も驚きはしない…
「いや…真の謝罪は別にある………父さんのルーラは、大人数を同時に移転できるんだ………しかも船ごと!」
アルル達は怪訝な表情でティミーとリュカを交互に見る。

「は、ははははは…ティミーさん…大丈夫ですか?疲れている上に寝不足かもしれませんけど…大丈夫ですか?」
誰も信じていない…
リュカは凄い人物だと分かってはいるが…誰も信じていない!

「あはははは!やだなぁティミー!変な事言っちゃってぇ~!やっぱりもう一晩、ダーマに泊まって行こうよ!み~んな疲れてるんだよ!」
リュカがビアンカの肩を抱き、ダーマへと踵を返す。

「父さん!どの様な意図で出し惜しみをしてたのかは分かりませんが、今後は止めて下さい!マリーも居るのですから、負担が少なくなる様、協力して下さい!」
しかしティミーがリュカのマントを掴み、真面目な表情でリュカに詰め寄る!

「リュ、リュカさん…本当に…そんな事が出来るんですか!?私達全員をルーラで移転させる事が出来るんですか!?」
「ん~…まぁ…一応?」
リュカの答えに皆が驚愕の表情をする!

「な、何でそれを黙ってたんですか!!?リュカさんのルーラがあれば、私達の旅はもっと楽になってたんですよ!酷いじゃないですか!」
体を震わせ怒るアルル…
ウルフ達も言葉にしないが、同じ様な感じだ。

「アルルはこの旅での最終目的って何?」
「何ですか今更!?魔王バラモス討伐です!」
「うん。そうだね…アルル達の旅の目的が、ただ世界中を巡る事だったら僕はルーラを使ってたさ!でも違うだろ…アルル達はバラモスを倒す為に旅をしてるんだ…楽をしたらダメだよ!」
「楽をしていたのは父さんだろ!」
ジト目のティミーが言い放つ。

「相変わらずだなお前は…いいか良く聞け!僕にもお前にも、この世界を平和にする義務は無いんだ!世界を平和にする為、旅立ったのはアルル達なんだ!僕はバラモスと対峙する時までこの世界に居るとは限らない…アルル達には旅の…冒険の苦労を、身を以て体験して貰わなければならない!僕が手を貸すのは簡単だ。だが想像してみろ…アリアハンからずっと僕が全てを行っていたらどうなるか…戦闘はもちろん、移動は全てルーラで…きっとアルル達は成長しないだろう…アリアハンを出た頃と変わらないままバラモスと戦うんだ!もちろんバラモス戦も僕が戦えば良いのかもしれないが、果たしてその時点で僕はこの世界に居るのだろうか?」
先程まで憤慨していたアルル達だが、今は神妙な面持ちでリュカの言葉を聞き続ける。
「もしバラモスに、僕を元の世界へ…いやぁ、元の世界じゃ無くてもいい…別の世界へ飛ばす能力があったらどうする!?アリアハンを出た頃と、何ら変わらないアルル達だけで魔王と戦わねばならなくなる!勝てると思うか?」

…誰も答えない…答えは決まっているから…
「…リュカ…貴方の言い分は分かったわ!でもこれからはルーラを使ってもらうわよ!マリーの為に…」
沈黙が一行を包む中、ビアンカがリュカの頬を両手で押さえ、瞳を見つめて説得する。

「………分かった…ルーラは使うよ…でもビアンカもティミーも、アルル達の成長の妨げになる事はしないでほしい!この世界に平和をもたらすのは僕等じゃ無い、アルル達なんだから!」
「うん、分かった。みんなが危なくなるまで、手は出さないわ…」
リュカの瞳を見つめ誓うビアンカ。
神妙な面持ちで頷くティミー…
互いを見つめ頷き合うアルル達…

ビアンカはリュカの首に腕を回し、耳元に口を近付け囁く様に問う…
「本音は?」
「…めんどくさいから」
夫婦が他に聞こえない声で会話する。
ティミーやアルル達からは、深慮深いリュカと、それに感銘するビアンカが抱き合っている様にしか見えない…
イヤな夫婦である!


「さて…じゃぁルーラを使いますか!」
「でも…本当なんですか…?複数人を同時に移転させるなんて…」
「あぁウルフはしっかり見ておく事だ!偉大なる賢者に転職したんだから、ルーラを憶えた方が見栄えが良い!」
ある種、師弟関係のリュカがウルフにルーラを手解く。

「うん!是非とも憶えたいからね…ゆっくりお願いします!」
「ゆっくりって………エッチする訳じゃないんだから…カリーもそんな事言ってたなぁ………」
「は!?今、何って言いました!?『カリー』って言いました!?」
囁く様なリュカの台詞を、聞き逃さなかったのはアルル。

「ゲフンゲフン!………何にも言って無いよ。空耳だよ。ぼ、僕はルーラへのイメージで忙しいから…」
《やっぱりこの人エルフにも手を出してた!後々、問題にならなければ良いけど…奥さんが合流して、こう言った事が無くなれば良いけど…本当にティミーは血の繋がった息子なのかしら…》
「じゃぁいくよぉー!……ルーラ」
アルルが色々と考えている間にリュカはルーラを唱える。

こうしてダーマ周辺には静けさが戻った。
神官や転職希望者の心に恐怖心を植え付けた美女が立ち去ったから…
勇者アルルは、ダーマの人々の心を救ったのだ!



 
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