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ロックマンゼロ~救世主達~

作者:setuna
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ifとか短編
  if:Diary_Alouette's Good Day

 
前書き
ドラマCDのアルエットの話の内容にルインをぶちこみます。

ウロボックルはルインが倒したのでゼロの台詞は変化 

 
私達の新しい基地には、不思議な色に光るベビーエルフさんがいました。

ある日、ルインお姉ちゃんが作戦のお土産にもう一人、ベビーエルフさんをプレゼントしてくれました。

あ、ルインお姉ちゃんはゼロの昔の後輩さんらしくて、ゼロにそっくりな優しい私のもう一人のお姉ちゃんなの。

初めて見た時、ゼロとルインお姉ちゃんがそっくりだからびっくりしちゃった。

二人のベビーエルフさんは、何だかほんとの双子みたいで、いつも楽しそうにキラキラしてて、それを見てると私まで嬉しくなっちゃって。

シエルお姉ちゃんのお仕事の邪魔になっちゃうのは分かってるんだけど、また今日も…。

「でしょー、ふふっ。それでね、でね、メナートって子がいっつも私に悪戯してくるの。この間もね、この子の腕を引っ張られて少し解れてきちゃってるの。もー。ふふっふっ。でもー、その後は決まってロシニョルおばさんやルインお姉ちゃんに叱られるんだけどねー。この間なんかルインお姉ちゃんにお説教されてお尻ペンペンされてたんだよー。ベビーエルフさん達は悪戯なんかしない、優しい子になってねー。あ…そっか。いつまでもベビーエルフさん…って呼ぶのはおかしいよね。ね!シエルお姉ちゃん!何かいい名前…ないかな?」

シエルの研究室でシエルが端末のキーを叩く音が響く中、ベビーエルフ達と話していたアルエット…と言っても彼女が一方的に話し掛けているだけだが、呼び方がベビーエルフのままでは可哀想だと思ってシエルに尋ねるものの…。

「このベビーエルフ…調べれば調べるほど新しいことが見つかるわ。一体この小さな体のどこに、こんなエネルギーを生み出す力があるのかしら。」

科学者であるシエルは研究に没頭すると周りが見えなくなる欠点があり、今回も没頭してしまい、アルエットの声が聞こえていない。

「あっ…私の名前はね、シエルお姉ちゃんがつけてくれたんだよ。すっごく気に入ってるんだー。ルインお姉ちゃんも褒めてくれたし!ね!シエルお姉ちゃん!ベビーエルフさんの名前、どんなのがいいと思う?」

再びベビーエルフに話し掛け、シエルにベビーエルフの名前を尋ねるが、研究に没頭しているためかアルエットの声に気付かない。

「シエルお姉ちゃん…最近ずっと研究で忙しいんだよ。昨日も夜遅くまで起きてたって、セルヴォさんが言ってたよ。でも…人間はちゃんとお休みしないと、お熱が出ちゃうから…心配なの。そうだ!オペレーターのお姉さん達なら良い名前考えてくれるかも!シエルお姉ちゃん、研究頑張ってね。」

アルエットがこっそりと部屋から出ると、ようやく気付いたシエルが椅子を動かして振り返った。

「あら…?ひょっとしてアルエットが遊びにきてたのかしら。はあ…駄目ね。また研究に夢中になりすぎて、あの子の相手になれなかった。これじゃあネオ・アルカディアの人達と同じ。周りの人を気遣う余裕がないなんて。あの子はこれまでも辛い思いをしてきたっていうのに…。」

せっかく遊びに来てくれたアルエットの相手が出来なかったことにシエルは自己嫌悪した。

そして一方、シエルの部屋から出たアルエットはこのレジスタンスベースのオペレーターであるルージュとジョーヌがいる司令室に入っていた。

「あのー」

アルエットが声をかけるとジョーヌとルージュが振り返った。

二人はエルピスの部下でジョーヌは明るく気さくな性格であり、ルージュは生真面目で厳しい性格だが、どちらもアルエットに優しく接してくれるため、アルエットは二人と会話する機会はそれなりに多い。

「あら、アルエットちゃん。いらっしゃい。」

「アルエットさん。ここは非戦闘員の立ち入りが禁止されているのは知ってますね。」

ジョーヌはバイザーを外して笑顔を浮かべたが、ルージュは生真面目な性格からか、非戦闘員のアルエットが司令室に入ったことを注意する。

「ごめんなさい!でも、ここ通らないとシエルお姉ちゃんの部屋に行けないんだもん。」

「ホントこのレジスタンスベースってこういうところが不便なんだよねー。」

司令室の奥の部屋には武器開発に携わっているセルヴォとドワ、そして研究室の主であるシエルしかいないものの、非戦闘員が彼らの元に向かうには確かに不便だろう。

アルエットの言葉に同意するようにジョーヌがぼやく。

「それなら仕方ありませんね。ところで何か御用ですか?」

厳しくしていた表情を穏やかなものに戻してルージュはアルエットの視線に合わせるように屈みながら用件を尋ねる。

「あっ、そうだ。シエルお姉ちゃんのとこにいるベビーエルフさん達に名前を付けてあげようと思って。」

「名前ですか。」

「ベビーエルフの?」

ルージュとジョーヌがそれぞれの反応を返す中、アルエットは未だに良い名前が浮かばないことに表情を顰めた。

「一生懸命考えたんだけど、全然いい名前浮かばなくて…」

「で、私達のところに来たんだ。」

「分かりました。では、二体のベビーエルフの名前ということで対になる言葉をいくつかピックアップしてみます。」

早速調べてくれるらしく、ルージュが端末のキーを叩く音が響く。

「あ…お願いします。大丈夫かなー。」

しばらくして調べ終えたのかルージュがアルエットに振り返る。

「お待たせしました。アノードとカソードはどうでしょうか?」

「それは、どういう言葉なの?」

「電子管や電解層の陽極と陰極を意味する言葉です。エルフのような電子的な生き物の呼称としては最適なのではないかと思います。」

確かにサイバーエルフの名前としては相応しいのだろうが、幼いアルエットには少し難しく、堅苦しいイメージがあった。

「…ちょっと難しいかも。」

「あ、それだったら…プラスとマイナスでもいいんじゃない?」

冗談で言うジョーヌだが、アルエットはそう受け取らなかったらしく、ショックを受ける。

「ええー!?」

「あっ、冗談冗談!」

「あ、あの!そういう難しいのよりも昔の本にあるような…」

ベビーエルフはあんなに可愛らしいのだから難しいものではなく可愛らしい名前にしたい。

「本!ああ…人間の使う旧世代記録媒体ですね。それでは…クライムとパニッシュはどうでしょうか?十九世紀ロシアの文豪ドストエフスキーの代表作、罪と罰からです。推理、心理、恋愛的要素を内包した宗教的な影響が色濃く窺える文学としてではなく、当時のロシア社会主義、そして、未来社会に向けての刑訴の作品、啓蒙的思想書ともいえる本作のタイトルは、無神論革命思想に基づく殺人行為による魂の救済はあらゆる角度でテーマをコントラストに鮮やかに表現して…」

ルージュの説明が延々と続くが、それはアルエットの理想とは程遠いものであった。

「あ…あの…あ、あんまり可愛くないです…。」

「あっ、可愛いのだったら…ラブ&ピースなんてどう?」

「あ…ふふっ…ちょっと可愛いかも。」

ジョーヌが出した名前を聞いて笑いあうアルエットとジョーヌ。

「アルエットさん!」

「はい!」

突然の大きな声にアルエットは肩を震わせて振り返った。

「可愛いものが良いのでしたら、アスールルナとロッホソルはどうですか?青い月と赤い太陽という意味で…二十一世紀初頭のソフトウェアにつけられていた名称のようです。」

「あー」

まだ堅苦しい感じがするのかアルエットの表情はあまり良くない。

「あっ、嫌だったら、ブランとノワールなんてどう?白と黒。はっきりしてて覚えやすいでしょー?」

「あー…。」

ジョーヌの提案に悩むアルエット。

確かにはっきりして分かりやすいが、少し単純な気もする。

「他には、テクノスとタナトスとか…」

「あ…」

ルージュの名前の案にアルエットはどう反応すべきかと頭を悩ませた時、ジョーヌが割り込む。

「ちょっとちょっとお。ルージュのはねえ、堅苦しいのが多いのよ。アルエットちゃん困ってるじゃなーい。」

「そんな…」

アルエットはそんなことはないと言おうとしたが、ジョーヌがベビーエルフ達の名前を提案する。

「それよりー。セレッソとかビルゴみたいに単純なのがいいと思うんだけど。ね!アルエットちゃん!」

「え…」

「ジョーヌ!あなたさっきから私に文句ばかりつけてきて、白だの黒だの桜だの乙女だのってふざけてるの?大体あなたはいつもいい加減なのよ。この間も転送座標の入力を間違えそうになってたじゃない!!」

「あのー、ル、ルージュさーん。」

「あのまま転送してたらルインさん今頃デュシス遺跡の壁の中よ!」

「ねえー」

「ああーー!」

「ジョ、ジョーヌさーん。」

「そのこと内緒にしておいてくれるって約束したじゃないー!そんなこと言ったら、ルージュの立てる正義の一撃作戦のシミュレーションだって、一見緻密に計算されて完璧なプランに見えるけど、入力パラメーターをちょっと弄っただけで全然役に立たないじゃない!」

アルエットを置いてどんどんとヒートアップしていく二人の口論。

「わ…私の…せいなのかな…あー…。ご、ごめんなさあーーーい!!」

アルエットは急いで司令室を飛び出したが、ルージュとジョーヌはそれに気づかずに口論し続けている。

「表面上だけじゃなくって、もっとしっかり検証して欲しいわー。」

「そんなこと今は関係ないでしょ!ところであなた、エルピスさんに頼まれた仕事は終わったのかしら?」

「うっ。」

「後で間に合わないって泣きついてきても知りませんからね。」

「ル、ルージュこそ話をすり替えないでよ!いつも都合が悪くなったら話をすり替えてはぐらかすんだから!あなたの悪い癖よー!」

「何ですってっ!?」

「何よーっ!?」

更にヒートアップする口論。

司令室を飛び出したアルエットは息を切らしながら通路を歩く。

「はあ、はあ、はあー、困ったなー。ロシニョルおばさんはデュシスの森から戻ってきた人たちの手当てで忙しいし、ダンドさんは正義の何とか作戦に行くって言ってたから駄目だし、イブーさんはいっつもエネルゲン水晶のことばっかり…。メナートは…あ、駄目駄目!どうせまた悪戯されるに決まってるもん。新しいレジスタンスの人達はみんな忙しそうだし、それに…ちょっと怖いし。あー何で私、あの子達の名前じゃなくて相談する人で悩んでるんだろ。誰か凄ーく物知りで、で、凄ーく忙しくない人…いないかな。ルインお姉ちゃんも見つからないし…」

シエルと同じくらい慕っているルインは未だに姿を見かけないので、どうしようかとアルエットが悩んでいると、アルエットはアンドリューの姿に気付く。

「あ!お爺ちゃーん!アンドリューお爺ちゃーん!」

「お嬢ちゃん、すまんが今日はクリームパンは売り切れじゃよ。ジャムパンなら、少しは残ってるんじゃがなあ。」

レジスタンスベースで唯一の老人型のアンドリューは安定の天然ボケを炸裂させた。

「あー私パンを買いにきたお客さんじゃないです。アルエットです。」

「おお!すまんかった。アルエット…じゃったな。」

「お爺ちゃんって、いつも色んなお話してくれるでしょ。」

「うん。時間があったら儂の話を聞いてくれんかのう。」

「うん。」

「こう見えても、昔は学校の先生をしておったから。あの頃も子供達に色々教えて欲しいとせがまれたもんじゃ。因みに先生の前はパン工場で働いておったのだ。」

「あのー。」

「その前は、船乗り…じゃったかの。」

「あの、お爺ちゃん?」

「このレジスタンスベースは、海が近いので船乗りじゃった頃を思い出すんじゃよ。」

「そうじゃなくて!」

自分が聞きたいのはそれではなくて、ベビーエルフの名前に役立ちそうな話だ。

「は?」

「お、教えて欲しいことがあるんだけど…」

「はあ。何を教えて欲しいんじゃ?」

「シエルお姉ちゃんのとこにいるベビーエルフさん達に、名前をつけてあげようと思って。」

「名前?お前さんはアルエットじゃろが。」

老人型なだけあって聴覚機能が衰えているのかアンドリューは疑問符を浮かべている。

「私の名前じゃないよ。ベビーエルフさんの名前。」

「お?ベビーエルフにつける名前とな?それならそうと早く言わんか。ベビーエルフの名前じゃったら…子供の名前がいいかの?」

「そうね。」

「あれは儂が学校の先生をしておった時のことじゃ。受け持ったクラスにとても仲の良い二人の人間の女の子がおっての。姉妹でもないのに双子のように似ていて、とても可愛らしい子供達じゃった」

「そう…それで二人の名前は何ていう…あ…」

アルエットがその二人の名前を尋ねようとしたが、アンドリューの話はまだまだ続く。

「あの頃はまだ人間の子供とレプリロイドの子供が一緒に授業を受けておった。レプリロイドの子供は勉強を覚えるのが早く…」

「はあ…。」

「運動もある程度のことは簡単にこなすんじゃが、人間の子供はそうはいかん。」

「あのー名前はー?」

「特にその二人は勉強も成績があまりいいとは言えんかったし、運動も出来る方ではなかったんじゃ。当然のように周りのレプリロイドの子供達から、いつもからかわれておってのー。儂が注意をしても、しばらくしたらまーたからかいおるんじゃ。」

「えーと…」

「だがその二人にも、一つだけ取り得があった。歌を歌うことが好きでの。」

「あ、お歌ね…」

「休み時間になると、教卓をステージ代わりにしてみんなに聞かせておった。」

「お歌の名前は何て言うの?」

「その時だけは誰もその二人をからかわずにみんなで楽しそうに聞いておったんじゃ。そりゃそうじゃ。レプリロイドは歌を歌うことができんからの。歌のように聞こえておるのも、結局は記録した音声をただ再生しておるだけ。歌を歌うことは人間だけができることじゃから。レプリロイドの子供達はその二人が、うらやましかったんじゃの。自分の気持ちを自分の言葉で歌にすることが出来る…」

「はあ…」

「そういえば!昔、儂が愛した人間の娘も歌を歌うのが好きじゃった。あれは…まだ儂が船乗りをしておったときのこと…」

「はあ…」

アルエットの反応が段々と悪くなっていくことに気付かずにアンドリューは話を進めていく。

「確か…」

「お爺ちゃん!」

アルエットは大声を出して脱線した話を止めた。

「あ?おお。話が逸れちまったの。二人が歌を聞かせておったところまでじゃったかの。しばらくして、レプリロイドの警備隊が組織されることになって、儂は学校の先生をやめなければならなくなったんじゃ。イレギュラーの犯罪が多くなったとかで警備を強化しないといけないというのが理由だ。」

「うう…もうー。だから、名前はー?」

「来る日も来る日も辛い警備の仕事に追われ、やがて儂はその二人のことを忘れてしまった」

アルエットが疲れたような表情を浮かべた瞬間、近くの扉の開閉音を聞いて振り返ると、ゼロを見つけるアルエット。

「あっ…ゼロー!」

ゼロに走り寄るアルエット。

後ろでアンドリューの会話が延々と続く。

「何年か経ってから、たまたま応援で駆けつけた警備の現場で、その二人にわしゃ再会したのじゃ…」

「えっと、シエルお姉ちゃんのとこにいるベビーエルフさん達に名前をつけてあげようと思って。ね、ゼロはどんな名前いいと思う?」

「さあな」

ベビーエルフに対して関心を持たないゼロからの返答は素っ気ない。

実際にゼロの…特に過去のゼロを知る者からすれば子供とまともなコミュニケーションを取っていることは驚きに値するものである。

「えー。ちゃんと考えてよー!」

「俺にそんなことを聞いてどうしようって言うんだ?何故そこまでベビーエルフに拘る?」

「だって、いつまでもベビーエルフさんじゃ可哀想だし…あの二人…双子みたいで可愛いんだよ?あんなに可愛いんだから名前をつけてあげないと可哀想だよ。」

「………」

「ねえ、ゼロ。あの二人にピッタリな名前はないかな?ゼロの昔のお友達に双子さんとかいなかったの?」

アルエットもゼロが記憶喪失なのは知っているが、もしかしたら思い出しているかもしれないと思って尋ねた。

「双子…」

その言葉を呟いた直後に微かに脳裏を過ぎる過去。

双子の兄妹…自分にとってとても大切な二人だった。

兄の方とは時にはミッションで共闘し、そして妹の方とは心を通わせた。

ほとんどノイズまみれだが、最後に映った映像は…彼女の人工血液によって真っ赤に染まった自分の手…。

「…ロ…ゼ……ロ……ゼロ?」

「っ…」

ハッとなって見下ろすと、心配そうに自分を見上げるアルエットの姿。

「どうしたの?どこか痛いの?ゼロ…辛そうだったよ?」

「何でもない…双子ならそれらしいのが少し思い出せた…だが、名前は思い出せん」

「そっかー」

「こういうのはルインに聞けばいい、あいつは港にいる」

「ホントに?じゃあ、ルインお姉ちゃんの所に行ってくる!!」

アルエットが走り去り、アンドリューは自分の話を聞いてくれてなかったことに気付く。

「何じゃ。最近の若いもんはろくに話も聞いてくれんのか。」

「…アンドリュー、お前は一度シエルに聴覚機能を診てもらえ」

ゼロが言っていたようにルインは港にいた。

「あっ!いたっ!でも…どうしたんだろう…ルインお姉ちゃん…顔真っ赤にしてる…お熱があるのかな…邪魔になっちゃうかな」 

アルエットは少し悩んだ末に別の場所に向かおうとしたが、ルインが振り返った。

「あれ?アルエットちゃんじゃない。どうしたの?」

少し顔が赤いが、ルインはアルエットに気付くと彼女に歩み寄る。

「あ、その…ルインお姉ちゃん…実はベビーエルフさん達に名前を付けてあげたくって」

「ベビーエルフに?」

微妙な表情を浮かべるルイン。

エックスからベビーエルフの危険性を聞いているので、名前を付けると情が出ないとも限らないのでアルエットにどう説得しようとルインは頭を悩ませるが。

「…うん、シエルお姉ちゃんは研究で忙しいし、ゼロがルインお姉ちゃんに聞けって………」

アルエットの期待に満ちた目にルインは思わず唸ってしまう。

「えっと…名前だよね…流石にペット感覚はいけないよね」

サイバーエルフは自分達と同じように成長すれば言語も操れるようになるため、ペットみたいな名前をつけるのは気が引ける。

「ねえ、ルインお姉ちゃん。あの子達、みんなの役に立ってくれるんだよね?良い子達なんだよね?」

「ベビーエルフは…その……あの…」

アルエットの問いに答えようにもエックスから聞いたベビーエルフのマイナスのイメージが強いのでルインは即答出来ない。

「ルインお姉ちゃん?」

「あ、ごめんね…まだ赤ちゃんらしいし、良い子に育つかまでは分からないよ。人間もレプリロイドの子供も環境次第で良い子にも悪い子にもなっちゃうからね…それはサイバーエルフも同じだと思う。」

「じゃあ私達があの子達を良い子にしてあげれば良いんだよね?私、いつもあの子たちが新しいエネルギー作ってくれますようにってお祈りしてるんだよ。あの子達にもお祈り届くといいなー。」

「………ねえ、アルエットちゃん。アルエットちゃんはあのベビーエルフ達に良い子になってもらいたいんだよね?そういう子になってもらえるように祈ってるんだよね?」

「うん」

「だったらアルエットちゃんが自分で考えて付けないと駄目だと思う。子供に与える名前ってのはね、名前を付ける人がこうなって欲しいとか、たくさんの願いを込めて付けられるものなの。実際、他の人に聞いて出してもらった名前、アルエットちゃんからすればピンと来なかったんじゃない?」

「う、うん…」

「あのベビーエルフ達がどんな子になって欲しいのか、どんな名前にしたいかはアルエットちゃんにしか分からない。だから参考にするくらいは良いけどやっぱりアルエットちゃんが考えないとね」

やはりベビーエルフの名前はアルエットに考えさせて付けさせるのが一番だ。

やはり自分はエックスから聞いたベビーエルフのマイナスイメージが付き纏ってしまい、どうしてもアルエットが望むような名前は考えられない。

「それじゃあどうしよう…」

「難しく考える必要はないよ。アルエットちゃんの想いを名前にすれば良いんだし」

「私の思ってること。新しいエネルギーを作ってくれますように。お祈りは届きますように。作ると…お祈り。ルインお姉ちゃん。この言葉、名前に出来ないかな?」

「作ると祈りね…あ、でも私が動いていた時代から二百年過ぎてるからなー、もしかしたら私の頃と意味が変わってるかもしれないから、シエルに聞こうか。」

「え?でもシエルお姉ちゃん、研究で…」

「良いの良いの、シエルも休ませないといけないし、それに…」

「それに?」

「身近な子すら笑顔に出来ないような人に世界は平和には出来ないよ。アルエットちゃんを無視したシエルには軽いお仕置きが必要だね」

すると向こうからシエルが走ってきた。

「アルエット!…あ、ルイン」

「あ…シエルお姉ちゃん」

「ごめんね。みんなから聞いたわ。あの子達にもちゃんと名前つけてあげないと可哀想だよね。」

「可哀想だよねじゃないでしょう。もう…科学者ってどうして周りが見えなくなる人が多いのか…子供を無視する悪い子にはお仕置きだよ」

シエルの頬を軽く引っ張るルイン。

「ご、ごへんなはい…」

「次からアルエットちゃんがシエルに用がある時は私も行くからね。たまには体を動かしなさい。そんなんじゃいつか倒れるよ。別に一時間休んだ程度でどうしようもなくなるわけじゃないんだから」

手を離して説教をするルイン。

シエルも返す言葉がないのか大人しく聞いている。

「まあ、お説教はこれくらいにして、アルエットちゃんが名前の案を出したんだよ。ね?」

「う、うん…シエルお姉ちゃん、ベビーエルフさん達の名前なんだけど、作るとお祈り…これ言葉に出来ないかな?」

「そうねえ。作るはクリエ。お祈りはプリエになるかしら。」

「あ、そんなに私の時代と言葉の意味は変わらないんだね」

「クリエとプリエ…。そっか!クリエとプリエ。私、あの子達にその名前をつけてあげようと思うんだけど…どうかな。」

「そうね!あの子達にぴったりのとってもいい名前だと思うわ。」

「うん!ね、今からシエルお姉ちゃんの部屋に行ってもいい?あの子達に早く教えてあげたいの!」

「ええ。それにその子もボロボロのままじゃ可哀想だしね。」

シエルがアルエットのぬいぐるみを見て微笑みながら言う。

「あ、本当だ。言ってくれれば私が直してあげたよ?」

「え?ルイン…裁縫出来るの?」

「出来るの?」

「…当たり前でしょ?二人共、私を何だと思ってるの…そんなに不器用に見えるのかな…まあ、アルエットちゃんも困ったことがあったら私にも相談してね。少なくてもシエルよりは確実に話が出来るから」

「うう…言い返せない」

「ふふっ。ありがとうルインお姉ちゃん!クリエ、プリエ、ふふっ、シエルお姉ちゃーんっ!ルインお姉ちゃーんっ!早く、早くう!」

走るアルエットを微笑ましげに見つめながら二人はアルエットを追いかけていくのであった。
 
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