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血塊

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第二章

「僧や神主達で祓う」
「そうされますか」
「人と人の交わりから化けものが生まれるなぞな」
 そうしたことはとだ、新九郎は庄屋に真剣な顔で話した。
「まずない」
「化けものとの交わりならともかく」
「左様、それはもうじゃ」
 それこそというのだ。
「祟りじゃ」
「それによるものですか」
「そうとしか思えぬからな」
「この地と川をですか」
「川、即ち水もな」
「祓いますか」
「そうする、そしてな」
 新九郎は庄屋にさらに話した。
「その血塊にさらに備えるとよかろう」
「と、いいますと」
「確かにしゃもじのことはわかった」
 どうして囲炉裏上から吊るしているかだ。
「そのことはな」
「それは何より」
「このことはよい」
「これから続けてもですか」
「構わぬ、そこにさらにな」
「加えてですか」
「子を産む女の周りを屏風で囲み」
 そうしてというのだ。
「血塊を囲炉裏に簡単には入れぬ様にせよ」
「そうした備えもすべきですか」
「備えは二重にするとな」
「尚よい」
「だからな」
 それでというのだ。
「女が子を産む時にはな」
「万が一血塊が出て来ても」
「その様にせよ、よいな」
「わかり申した、では」
「この辺り一帯にそうさせる」
 足柄の地全てにというのだ。
「そうしてな」
「それでは」
「うむ、その様にせよ」
 こう庄屋に話した、こうしてだった。
 新九郎は足柄の地と川でその辺りの徳のある僧侶や神主達を集めて徹底的に祓わせその後であった。
 女が子を産む時はしゃもじだけでなくその周りを屏風で囲む様にした、そうして血塊に対して二重の備えをさせる様にした。
 そうしてから新九郎は新たな居城である小田原城において家臣でもある友達に対してこんなことを言った。
「とかくな」
「民達の不安はじゃな」
「念に念を入れて打ち消す」
「そうしていくか」
「それが政じゃ、しかし」
 ここで新九郎は着物の袖の中を腕を組みこんなことを言った。
「人と人の交わりから化けものが生まれるか」
「それがのう」
「おかしな話であるな」
「この辺りにはそうした話があろうとも」
「どうもな」
「あれであろうか」
 ここで新九郎はこんなことを言った。
「子を早く生むと亀の様なな」
「そうしたものが出て来るか」
「早く生むと」
「あまりにも早く産んでしまうとな」
 その時はというのだ。
「そうしたものが出て来る時があるが」
「それか」
「それが血塊か」
「それだというのか」
「そうしたもののうちか」
「そうであろうか、地によっては」
 新九郎はさらに話した。 
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