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鬼熊

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第三章

「すぐにそうする」
「ではです」
「まことにお願いします」
「化けものが出てくれば」
「退治して下され」
「その様にな」
 小次郎は村人達に応えつつ彼等の案内を受けて山の中を進んでいった、やがて一行の前にやたら大きな熊が見えた。 
 その熊を見てだった、村人達は小次郎に話した。
「あれです」
「あの熊です」
「あの熊が化けものです」
「ふむ、確かに大きい」
 小次郎もその熊を見た、普通の熊よりも二回りは大きい。
「あれなら牛や馬も攫っていくわ」
「左様です」
「とにかく大きく」
「そして力も強いので」
「まことにご用心を」
「そのことはわかった、ではな」
 小次郎は村人達の言葉を聞きつつすっと前に出た、そして足元にあった石を拾い。
 化けものである熊に向かってひょいと投げた、石は熊の頭に当たり熊もそれに反応して小次郎の方を見た。
 すると熊はゆっくりと立ち上がり小次郎に迫ってきた、後ろの二本の足で立つと余計に大きく見えた。
 しかし小次郎は臆しない、平然とした顔で前に出て。
 刀の柄に手をやって刀を瞬時に抜いた、抜いたその勢いを居合の要領でそのまま刀に乗せて鬼熊の足元を払った。
 熊の毛皮と骨は確かに強い、それも化けものなら尚更だ。だがその毛皮と骨をだ。
 小次郎はまるで空を切る様に断ち切った、すると化けものは身体をがくりと前にやった。その喉元を。
 小次郎は返す刀で切った、すると化けものの首は半分程切られそこから鮮血を出した。そのうえで崩れ落ちた。
 一瞬だった、小次郎は一瞬で化けものを倒してしまった。これには村人達も仰天して彼に対して驚きの声をかけた。
「あの、もう終わりですか」
「瞬く間でしたが」
「化けものを倒したのですか」
「左様、一瞬でだ」
 まさにというのだ。
「勝負は終わるものだ」
「そんなものですか」
「激しい勝負になると思いましたが」
「それも長い」
「そうはならぬのですか」
「お互いに武器を持って殺し合うのだ」
 それならとだ、小次郎は布で刀の血糊を拭きつつ話した。
「それならだ」
「勝負は一瞬ですか」
「それで済みますか」
「武器を持って殺し合うなら」
「そうなりますか」
「それが化けもの相手でもな」
 そうなるというのだ。
「一撃をかわされるか防がれるとな」
「相手の一撃で倒される」
「それが勝負であって」
「今も一瞬で終わった」
「そうなのですか」
「そうじゃ、しかしこの化けものは熊が化けものになったもの」
 小次郎は村人達にこうも話した。 
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