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一貫小僧

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第三章

「それでな」
「こうした話もな」
「聞いてたんだろうな」
「そうだろうな、それでな」 
 澄夫は従弟に西瓜を食べつつ話した。
「一つ思うけれどな」
「どうしたんだ?」
「丁度鳥取に帰ってきてるんだしな」
 それでとだ、澄夫は昭夫にさらに話した。
「これから大山の裏に行ってな」
「それでか」
「一貫小僧がまだいるかどうかな」
「その目でか」
「確かめようと思ったんだがな」
「面白いな、じゃあ軽トラあるからな」 
 昭夫は澄夫の言葉にまんざらではないという顔で返した。
「今から行くか」
「また急だな」
「今お互い暇だしな」
「僕は休暇取って帰郷していて」
「俺も今は仕事がない」
「それならか」
「丁度いいだろ」
 こう澄夫に言うのだった。
「だからな」
「これからか」
「ああ、行くか」
「そうだな、時間があるならな」
「あるうちに行った方がいいな」
「じゃあ話は決まりだな」
「今から行こうな」
 こうしてだった、話はあっという間に決まり。
 澄夫は昭夫と共に大山の裏に行くことになった、軽トラを飛ばせば実家から暫くの距離だった。それでだった。
 澄夫はその大山の裏に着いてすぐにこんなことを言った。
「祖父ちゃんの子供の頃だとな」
「ちょっとやそっとで行けなかったな」
「そんな場所だったな」
「そうだな、けれどな」
「軽トラを飛ばすとな」
 それならというのだ。
「もうな
「すぐだろ、ただな」
「ただ?」
「もう俺達が小さい頃には軽トラあったよな」
 昭夫は澄夫に運転席からこのことを話した。
「けれど祖父ちゃん俺達みたいにここに来なかったのか」
「そういえば一貫小僧見たとか言ってなかったな」
「ここに来たともな」
「一言も言ってないな」
「そうだよな」
「実際に行かなかったんだろうな」
 澄夫は助手席から言った。
「要するに」
「そうだろうな、あまり確かめる気なかったのか」
「気が向かなかったのかもな」
「今の俺達みたいにか」
「そうかもな、軽トラあってもな」
 そしてそれを運転出来てもだ。
「そこまで思わなかったか」
「そうかもな、けれどな」
「僕達は来たからな」
「実際に一貫小僧がいるかどうか」
「確かめるか」
「そうするか」
 こうしたことを話してだった。
 二人は車から降りて妖怪を探そうとした、だが車を降りようと車の鍵を出して扉を開けようとした時にだった。
「若し」
「?声?」
「声がしたな」 
 二人が反応するとだった、ここで。
 車の前に、その真ん前に小僧が立っていた。その大きさは。
 一メートルもない、まさに小人だ。だが着ている服は僧侶のもので。
 顔も落ち着いている、その僧侶が二人に声をかけてきたのだ。
「車の横を通っていいですか」
「ああ、いいさ」
「どうぞ」
 二人は坊主にすぐに答えた。するとだった。
 坊主は車の横をすっと通ってだった、後ろに出ると。
 二人はその姿が軽トラのサイドミラーの中ですっと消えたのを見た、澄夫はそれを見て昭夫に言った。 
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